【論文紹介】The effect of oral temperature on the temperature perception of liquids andsemisolids in the mouth

論文:The effect of oral temperature on the temperature perception of liquids andsemisolids in the mouth
著者:Lina Engelen,  Rene A de Wijk, Jon F Prinz, Andries van der Bilt, Anke M Janssen, Frits Bosman
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1034/j.1600-0722.2002.21364.x
(Thermal perception on lingual and labial skinの未来の論文(被引用文献))
European Journal Of Oral Sciences 

どんなもの?

 液体や半固体の食べ物の異なる温度(10℃、22℃、35℃)と、口内洗浄を行い口腔内で異なる温度(27℃、35℃、43℃)を提示して、口腔内の温度知覚に及ぼす影響を調べた。被験者には水、カスタードデザート、マヨネーズを評価してもらった。実験の結果、被験者は食べ物の温度を区別することができた。食べ物の種類が知覚温度に与える影響は大きく、水はカスタードやマヨネーズよりも有意に冷たいと感じられた。温度の感じ方の幅は、カスタード、水、マヨネーズの順で大きかった。口腔内の温度を変化させたが、知覚温度には大きな影響を及ぼさなかった。(しかし、10℃のマヨネーズは、口腔内温度が27℃と35℃のとき、口腔温度が43℃のときよりも冷たいと感じられたが、35℃のマヨネーズは口腔温度が27℃のとき、他の温度(35℃と43℃)のときよりも温かいと感じられた)

→脂肪含有量が高いほど、低い製品よりも高い温度評価が得られた。

先行研究と比較してどこがすごい?

 口腔の温度受容器に関する文献はほとんどなく、体の他の場所にある皮膚の温度受容器と似ていると予想されている。この論文では、口腔内温度が製品の温度知覚に及ぼす影響を調査することで、温度知覚の基礎となるメカニズムを調べた。(温度知覚が食品の物理的な温度や特性だけに依存しているのか、それとも消費された製品と口腔粘膜の差に依存しているのか)

技術や手法のキモはどこ?

 様々な温度の水で口をすすぐことで、口腔内の温度を操作した。
 刺激は水とカスタードデザート(低脂肪乳製品)とマヨネーズ(高脂肪水中油型乳化製品)を用いた。これらの製品は、脂肪率だけでなく、粘度やその他の物理的特性も大きく異なる。

 評価する前の水は10℃、35℃、55℃の3つの温度を提示した。水、カスタードデザート、マヨネーズは、10℃、22℃、35℃の3つの異なる温度で提示した。それぞれの組み合わせ(水をすすぐときの3つの温度、3種類の刺激、刺激の3つの温度)で実験した。被験者には冷たいから熱いまでの100点満点の視覚的アナログスケール(VAS)で温度を推定した。
 口をすすいだ後の口腔内温度の変化を赤外線温度計を用いて分析した。

どうやって有効だと検証した?

 fizzソフトウェアを用いて被験者の評価を収集し、補正係数としてGreenhouse-Geisserを用いた反復測定ANOVAを実施した。食べ物の温度、口腔内温度、食べ物の種類を被験者内因子とした。

→10℃、35℃、55℃の水で口をすすいだ後、赤外線温度計で測定した口腔内温度の平均値は、27℃、35℃、43℃だった。
 食べ物の温度は知覚温度に影響を与え、食べ物の温度が高いほど温度評価も高くなった。口腔内温度は全体として有意な効果を示さなかった。しかし、10℃のマヨネーズは、口腔内温度が27℃と35℃のとき、口腔温度が43℃のときよりも冷たいと感じられたが、35℃のマヨネーズは口腔温度が27℃のとき、他の温度(35℃と43℃)のときよりも温かいと感じられた。
 知覚された温度に対する食べ物全体の効果は有意で、水、カスタードデザート、マヨネーズの順に冷たく感じられた。
 温度が高いほどカスタードデザートとマヨネーズの粘度は低くなる。食べ物の温度を10℃から35℃に変化させると、カスタードデザートは53%、マヨネーズは30%の粘度低下が見られた。



→被験者が冷たい製品を温かい製品よりも低く評価したという事実は、口腔内の温度感覚が存在し、機能していることの証拠。異なる温度で口をすすぐことは、口腔内粘膜の温度を変化できることが示された。

口腔内の温度が大きく変化したが、知覚温度には大きな影響がなかった理由
 呼吸サイクルの影響。呼吸時には口や鼻から常温の空気を大量に吸い込み、吐き出された空気は灰の中で温められて体温になる。寒い日は温度変化が大きくなる、このように、口の粘膜は温度変化が大きく、受容器や高次の統合レベルでこの情報を無視する可能性がある。しかし、被験者は製品の温度を絶対的なものとして判断していない。(27℃で口をすすいだ冷たい口の中に35℃の温かいマヨネーズを食べると温度の評価が最も高くなった。また、35℃よりも口の中が温かいときはマヨネーズの温度差は感じにくくなった。)

 食べ物の温度の違いが被験者によって正確に分けられたことから、食べ物の温度の違いを見てそのメカニズムとして熱伝導に注目できる。
 食べ物の温度が10℃の場合、27℃の冷たい口腔内に入れても、43℃の温かい口腔内に入れてもマヨネーズは冷たいと感じられた。(冷たい食べ物がすでに冷たくなっている口の中や中性の口の中から熱を奪い、冷たく感じるという熱伝導によるもの。) 10℃の冷たいマヨネーズを43℃の熱い口の中に入れると、食べ物は急に加熱され、口の中が中性になるまで冷却されただけで、マヨネーズはより温かいと感じられた。
 35℃の温かいマヨネーズを27℃の冷たい口に入れると、温かいマヨネーズから冷たい口の中に熱が伝わりマヨネーズが最も温かいと感じた。この実験では食べ物の温度が口の中の温度よりも高いと感じた組み合わせはこれだけ。
→口の中が熱い場合など、口から食べ物に熱が伝わった場合にはより冷たい感覚が得られる。
 口腔内の温度感覚は、摂取した製品の種類や特性に影響され、口腔粘膜の温度はあまり重要ではないことが示された。

議論はある?

 視覚的アナログスケールを使うときに、0点や100点の基準を設けなくていいのか。(人によって点数の基準が異なってもいいのか。)

次に読むべき論文は?(気になった論文)

食事中の歯の生体内温度を調査した先行研究↓
 An in vivo recording of variations in oral temperature during meals: a pilot study (過去の論文)
 Verification of theoretical modeling of heat transmission in teeth by in vivo measurements (過去の論文)

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