【論文紹介】Effect of Temperature on the Intensity of Basic Tastes: Sweet, Salty and Sour

論文:Effect of Temperature on the Intensity of Basic Tastes: Sweet, Salty and Sour
著者:Keri Lipscomb, James Rieck, Paul Dawson
http://www.ccsenet.org/journal/index.php/jfr/article/view/56854
Journal of Food Research

どんなもの?

 ショ糖、塩化ナトリウム、クエン酸の各濃度をそれぞれ甘味、塩味、酸味の強度レベルを識別できる被験者に、3℃、23℃、60℃の3つの温度と各味を濃度で2つ(/3つ)の組み合わせで調査した。その結果、甘味は60℃で一番強く感じたが、塩味と酸味と組み合わせた場合には23℃と60℃で甘味を強く感じた。また、塩味の強さは提供温度に影響されず、酸味は23℃が他の温度に比べて強く感じた。甘さの知覚は塩味や酸味以外の味と組み合わせたほうが抑制された。

先行研究と比較してどこがすごい?

 先行研究では閾値や知覚される強度を決定するために、様々な濃度の基本味液に対する温度の影響の評価は行っているが、単一の濃度を使用して温度を変化させた実験はない。また、2つ以上の温度で甘味、塩味、酸味を組み合わせた場合の相互作用についての研究はなかった。

(この研究では、甘味、塩味、酸味の単品と組み合わせの味覚の強さに与える提供温度の影響を、すべての味が同じ強度のレベルに保って調査した。)

技術や手法のキモはどこ?

 試験溶液は、スクロース、塩化ナトリウム、クエン酸、水を使った。先行研究(Wheeler)似合った濃度で調製した。
 被験者は実験に参加するための最低限の条件(糖尿病や高血圧でないかなど)を満たした後、基本的な味の認識のテスト等を行った。

どうやって有効だと検証した?

 3℃、23℃、60℃の3つの温度で、強度6の試験溶液を提供する。
 結果はSIMS 2000 Sensory Evaluation Testing Software (Sensory Computer Systems, Morristown, NJ, U.S.A.)を用いて記録した。
 分散分析(ANOVA)を用いて、提供温度が強度知覚に及ぼす影響を調べた。提供温度と強度知覚に有意な影響を持つ場合は、最小二乗平均(LSM)のp値を用いて、強度知覚に差のある提供温度を決定した。また、強度の平均値の標準誤差を用いた。

→甘味は60℃で一番強く感じた。温度は塩味に影響しなかった。酸味は23℃(室温)が他の温度に比べて強く感じた。
 甘味と塩味、甘味と酸味の組み合わせでは甘味は温度による影響(塩味・酸味との組み合わせのとは、23℃と60℃のときに甘味を強く感じた)はあったが、塩味と酸味には影響がなかった。甘味と塩味を一緒に提供した場合は、単体で提供されるよりも全体的な味の強さの認識が低くなった。
 甘味と酸味の組み合わせでは、3℃のときに他の温度に比べて甘味が弱くなった。また、溶液中のクエン酸の抑制効果は、クエン酸とスクロースの両方の濃度に依存し、スクロースの甘味抑制効果はクエン酸の濃度にのみ依存することがわかった。
 酸味と塩味の組み合わせでは、塩味の強さは提供温度に影響されたが酸味は影響されなかった。23℃で提供されたときに一番塩味の強さが感じられた。酸味の強さは温度による影響を受けなかったが、塩味よりも強いと感じられた。
 酸味と甘味と塩味の3つの組み合わせでは、甘味は酸味と塩味の知覚強度を弱めた。60℃のときに酸味を感じ、他の温度では酸味を検出されなかった。甘味は、酸味と塩味の知覚強度を弱めた。酸味と甘味の強さの違いは、塩味と組み合わせたときに顕著に現れて、塩味なしで評価したときよりも大きくなった。(3℃と60℃では酸味が塩味よりも強く感じられたが、23℃では感じられなかった。2つの組み合わせのときは、すべての温度で酸味が塩味よりも高かった。)

議論はある?

 「温度が上がると塩味の感じ方が下がる」(HahnとGunther)という効果がなかったのはなぜか。
→塩味の官能評価に参加した20人のうち、50%の人がスクリーニング質問票で塩味食品の摂取量が少ないと感じていた。ナトリウムの摂取量が少ない人は、ナトリウムの摂取量が多い人に比べて、食品中の塩分をより強く感じる。
 塩味と甘味を組み合わせたときに、塩味よりも甘味のほうが強いと評価していたが、甘味の味覚強度の平均値が甘味単体のときよりも低いのはなぜか。


次に読むべき論文は?(気になった論文)

 The paradox of warmth: Ambient warm temperature decreases preference for savory foods


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