「ICTエリアマネジメントが都市を創る」読書感想文

この本の基本情報

タイトル:『ICTエリアマネジメントが都市を創る—街をバリューアップするビッグデータの利活用』
著者:川除 隆広 氏
発売日:2019/1/16
単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 168ページ
概要:ICTによる都市マネジメントの黎明期にある現在、集積されるビッグデータを人々の暮らしに活かそうと、次世代のまちづくり「ICTエリアマネジメント」が動き始めている。にぎわう街、被災時にも強く、安全・安心、経済バランスが良く、エネルギーシステムもスマートに…データを利活用した持続成長可能な都市・街の実現を目指す、官民協働による多角的な取組みを紹介。

Why(なぜ読むのか)

最近よく耳にするサスティナブルな街づくり、スマートシティについて、IT, ICTの分野でどのようなアプローチがあるのか勉強しようと思いました。

What(自分が知りたいこと)

システム開発の場面では「推測するな、計測せよ」ということがよく言われます。主にシステムの最適化を行う場合に出てくる言葉ですが、さまざまな場面でも有効な言葉だと思います。
このエリアマネジメントにおいても、データの計測なくしては適切なマネジメントはできません。
街をマネジメントするために、どのようなデータがどのように活用されるのか?また、そのデータはどのようにして収集するのか?

How(どのように生かすか)

今後、ITでまちづくりについての問題解決を行うシステムにも携わりたい。

感想など

 データの計測は、GPS搭載機器、Wi-Fi、カメラ画像、レーザーカウンターなどで人流を計測しています。それぞれPros、Consがあって(たとえば、GPSが届きにくい屋内はWi-Fiの方が良い、など)、組み合わせてデータを収集する場合が方法があることがわかりました。
 また、人流データと建物のデータをマッシュアップすることで、建物の利用状況を可視化することができます。このように複数のデータを合わせることで新しいデータを得ることができるというところは面白いなと思いました。

 さらに、詳細なデータを取り扱うためには人の属性データを組み合わせることが必要になってきます。本書では、自主的にパーソナルデータを登録・提供する仕組み作りに触れられています。個人の特定が完全にできなくなるまで加工された「匿名加工情報」を使って災害情報などの分析に役立る仕組みです。
 今年、2022年4月施工の改訂個人情報保護法では、データの利活用促進のために新たに、「仮名加工情報」という方法での利用についての内容が追加されています。今後はこの「仮名加工情報」使った新たな分析データの作成と利用が進むかもしれません。

 さらに私が今後期待したい分野は、データのオープン化やAPI化です。本書でもこれからやっていくことに、行政のデータのオープン化、API化があげられています。既に二次利用可能な日本の行政データはここにカタログがあり、近年急速に増えているそうです。
 台湾では、行政がマスクの流通・在庫データを一般公開し、シビックハッカーがマスクの在庫状況を可視化するアプリをいち早く作ったという事例がありますが、人々のためになるデータは適切な方法でオープン化できる仕組みづくりは本当に素晴らしいと思います。
 日本でもシビックテックが新型コロナウイルス関連情報の可視化に貢献するなど、注目されています。

 データ収集と分析だけではなく、本書ではKPIの設定やマネタイズについても述べられています。実際に街を活性化させたり、市民のQOLを上げるためには必要なことです。これには、継続的なデータのモニタリングを行い、可視化させてPDCAを回していくことが重要になってきます。

 こうしてみると、街づくりも一つのソフトウェアサービスの開発・運用と似ているところが多いな感じました。
 私はソフトウェア開発者なので、適切なデータ収集方法や今後のデータ活用を見据えた設計など、参考になる点が多く、興味深い内容だったなと思いました。
 
 


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