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【レポート】2024年SL琵琶湖シリーズ MZシニア -GW BATTLE-

ハイレベルなバトルが炸裂した -FIRST SURVIVAL- から1ヶ月。
2024年5月5日、SL琵琶湖シリーズ MZシニア -GW BATTLE- が開催された。

今回は過去最多の19台がエントリー。名だたるトップランカーに加え、新たに各所の猛者が参戦した。
豪華メンバーが揃った今大会はまさに「GORGEOUS WAR」
レースを更に盛り上げてくれた。

公式練習、タイムトライアル

午前9時。公式練習、タイムトライアルが始まった。
ほとんどのマシンが一斉にコースイン。公式練習の5分間で入念にタイヤの熱入れを行いながら、位置取りを探っていた。

毎周順位が入れ替わる大接戦に

走行開始から5分経過、日章旗が振られタイムトライアルが開始される。
ここからが"本当の戦い"の始まり。毎周タイムが更新され、電光掲示板では順位の入れ替えが忙しなく行われた。

そんな中、最終ラップにコースレコードを塗り替える50.625を叩き出した#1 上島太陽(VehCOOL)がトップに。前年度王者の意地を見せた。
2位には石野サーキットのSLシリーズや耐久でチャンピオン経験のある#25 河野幹(EXPRESS with Let Wing)がつけた。初参戦ながら50.667を叩き出し、トップにあと一歩まで迫った。
3位はこちらも初参戦の#16 林零仁(RS Yamamoto)が50.748で奮闘。
4位には#35 坂田英之(Vifonte with Ash)となった。

#1 上島太陽(VehCOOL) TT1位 50.625
#25 河野幹(EXPRESS with Let Wing)  TT2位 50.667
#16 林零仁(RS Yamamoto) TT3位 50.748
#35 坂田英之(Vifonte with Ash) TT4位 50.758

と、ここまでが新品タイヤ勢であり、ハンディタイヤ勢は
5位#44 加藤翔馬(Vifonte)
6位#2 八田宗之(Vifonte)
7位#99 瀧口純輝(Vifonte with HMRACING)
8位#3 布川雄介(Let Wing)
5〜8位に固まった。
また上位7名が50秒台、トップから13位までが1秒以内に収まる大接戦となった。


予選ヒート

8周で行われた予選ヒート。この順位結果で第1ヒート(第1戦)のスターティンググリッドが決められる。

序盤は荒れた展開に、明暗が分かれた2コーナー

1周目の2コーナー、バランスを崩した坂田にスペースを失った瀧口がやむを得ずヒット。2台は渋滞の先頭となり後方では大混雑となった。
この混乱でトップ4が抜け出し、早くも先頭集団が形成された。

1周目こそはトップを守った上島だったが、2周目の2コーナーで加藤が飛び込みトップを奪う。加藤はその後ミスのない走りで上島に付け入る隙を与えなかった。
トップ集団が膠着状態の中、レース後半には5位の八田がファステストラップ50.572を叩き出すペースで猛追。後に、このタイムがコースレコードとして記録された。
トップは5台パックとなり最終ラップへ。3位の林が3コーナーで河野を警戒し守りに入るも4コーナーでインを刺される、そして失速した隙を突かれS字で八田にも抜かれ5位に後退した。
八田はその勢いのまま6コーナーで河野にも襲い掛かる。接触ギリギリの飛び込みで3位に浮上した

トップ争いは最終コーナーで動く。上島がインに飛び込み勝負に出る。
しかし加藤も外側で応戦。ここは僅かに車速があった加藤に軍配が上がり、トップでチェッカーを受けた。
2位上島、3位八田、4位河野、5位林という結果となった。


第1ヒート(第3戦)

予選ヒートの着順でスターティンググリッドを決め、13周で行われた。

上島が好スタートを決めホールショットを決めるも、すぐさま直後の2コーナーで加藤がトップを奪い返した。
トップ集団は5台以上のパックとなり、各所で様々な戦略、バトルが繰り広げられる。

戦略と戦争、2種類に分かれたトップと3位争い

4周目、勢いのあった河野は8コーナーで加藤を捕える。しかし加藤も最終コーナーで抜き返しトップを取り返す。河野はここで作戦を変えたのか、ペースのある加藤の背後にピッタリ張り付いた。

一方、その背後では3位争いが激化。抜かれたら抜き返すの繰り返し。2コーナー進入までのスリップストリームを利用して飛び込む戦いを続けていた。

その戦いを尻目に、トップ2は後続を引き離していく。後方も落ち着き、トップ争いは加藤、河野、3位争いは上島、林に絞られた。
最終ラップ、3コーナーで河野が狙っていたかのように加藤を捕らえた。その後は守りのラインで抵抗する。最終コーナー、河野はインを閉めて進入し、加藤は外側からクロスラインで勝負に出た。横並びでメインストレートへ、最後の勝負は0.03差で河野に軍配が上がり、初参戦ながら初優勝をもぎ取った。
3位争いは2コーナーで林が上島を捕えるも、上島は6コーナーですぐさま応戦。2年目の意地を見せた上島がポディウムを守り抜いた。


第2ヒート(第4戦)

第1ヒート上位6位がリバースグリッドとなり、第2ヒートが行われた。

これにより瀧口がポールポジションとなり、ようやく本領発揮なるかと思いわれたが、後方からロケットスタートを決め3コーナーのでトップに躍り出たドライバーがいた。5位スタートの加藤だ。もはやリバースグリッドの意味なし。

最大10台がもつれ合う大バトルに

加藤の勢いに周りも黙ってはいない。最終コーナーで林が加藤のインに飛び込みトップに浮上。失速した隙を狙い瀧口、上島も後に続く。
一度後方に沈んだ加藤だったが、着実に前を捕えすぐにトップを奪還、した途端に後方が再び応戦。これを繰り返しているうちに気がつけば10台近くのパックになっていた。
順位が目まぐるしく変わる中、7周目の2コーナーで八田が加藤を捕えトップに浮上。失速した加藤に瀧口、林がここぞとばかりに襲い掛かる。これにより、八田は集団から抜け出した。

八田はこのまま引き離しに掛かるかと思われたが、後方の林、加藤、瀧口、河野がバトルをやめ1列隊列を組み、全員が八田をターゲットに絞ってきた。
完全に単独走行である状態と、集団で押し合いながら走行する状態では、ペース差は言うまでもない。9周目には一時的にあったマージンも0に、最後のトップ争いが始まる。
先ずは3コーナー、集団に身を潜めていた加藤が林を捕え2位に浮上。その勢いのまま10周目の2コーナーで八田を捕えトップに浮上する。しかし八田も11周目、同じ2コーナーでやり返す。

12周目、もう一度2コーナーで加藤がトップを取り返した後、その隙を狙い林も八田を捕える。
八田は6コーナーで林に勝負を仕掛けたが、抜ききれず並走したまま7コーナーへ、アウト側へ追いやられた八田は集団に飲み込まれ5位まで順位を落としてしまった。
ここでトップ争いは勝負あり。集団は少し広がってしまい、トップ5は最終ラップは順位変動なく全く危なげない走りで加藤が悲願の初優勝を獲得した。
2位に林、3位に河野となった。


新たな「勝者たち」

過去最多台数を集め、前回を超えるハイレベルな戦いとなった今大会。この激戦を勝ち抜いた2名のドライバーは、どちらも当シリーズでは「初優勝」だった。

#25 河野幹(EXPRESS with Let Wing)

今大会から彗星の如く現れ、いきなり優勝を飾った#25 河野幹(EXPRESS with Let Wing)は、前日のレースウィークから「他とは違う着眼点」を持っていたように見えたという。

#25 河野幹(EXPRESS with Let Wing)

継続参戦しているドライバーたちと違い、琵琶湖スポーツランドを走るのは久しぶり。その中で「固定観念に捉われない」走り方や煮詰め方をしていた。この貪欲で視野の広い取り組み方がこの結果に結びついたのではないかと、筆者は考えている。
この成功例は、今後参戦するドライバーにとっては好成績を残すための大きなヒントになるだろう。

#44 加藤翔馬(Vifonte)

前大会からハイレベルなトップ争いを繰り広げるも、あと一歩及ばない事が続いていた#44 加藤翔馬(Vifonte)。
昨年、石野サーキットで開催された日本一決定戦でMZシニアに参戦し始めてから3大会目、ようやく優勝に漕ぎ着けた。

#44 加藤翔馬(Vifonte)

そんな彼は如何なる状況でも速く、強く、そして何より楽しんでいた。
前日練習では初参戦の#5 小林良(Vifonte with ぴぃたぁぱん)と常に一緒に走り、先導や後追いを行っていた。

#5 小林良(Vifonte with ぴぃたぁぱん)

この2人は幼少期にキッズやジュニアカート時代の同期。加藤はレースウィークで初めてMZシニアに乗る小林を少しでも上位で走らせようとサポートしていた。
これは決して「余裕で勝てるから」していた訳ではないはず。皆と純粋に、真剣に戦いを楽しむ事が目的だからこその行動ではないだろうか。
極論、優勝は「思いっきり楽しんだ」ための副産物といってもいいかもしれない。
努力、駆引、真剣、全て大事だが、それは「楽しむ」事が前提にあってこそではないかと、筆者は彼の行動でわからされた。

この2名のドライバーは、前日から一際目立つモノがあったことは間違いない。
そして、「最終的にトップで帰ってくる」レースの組み立て方も抜きん出ていた。
かといって2人ともトップタイムを出した訳ではない。「速い」より「強い」者が勝つ。そんな大会だったのではないだろうか。

次回は8月18日開催。真夏の「SUMMER GAME」を誰が制するのか、この3ヶ月のインターバルが待ち遠しい。

写真:nozaフォト

リザルト、ポイントランキング

瀧口、加藤が1ポイント差に

第1大会で2連勝を飾った瀧口が今大会は6位、4位で苦戦するも首位をキープ。しかし、2位、1位で大量ポイントを獲得した加藤が1ポイント差まで迫った。
また1位、3位で大量ポイントを獲得した河野がランキング3位にいきなり割って入る。
折り返し地点となる次回、チャンピオンの権利を持つ者、失う者の明暗が別れる。その行方はいかに。

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