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ベトナムに見る「バカの壁」
養老孟司先生の「バカの壁」は初版が2003年の平成で一番売れた新書で読んだことがある方も多いのではないでしょうか。
バカの壁にはざっくり3つ、
バカの壁「自分には関係ない」
バカの壁「個性をのばせ」
バカの壁「正解はひとつ」
として書かれており最悪の現れ方をした形が「テロリスト」であるとわかりやすく知の問題を解説しています。本自体は数時間で読めてしまう軽いもので読んだ当時は「まあ当たり前のことしか書いてないし。。。」という感想でした。
※ご注意
ベトナムでは言論に制限がありますので、日本国内でお楽しみください。
外国人がネガティブであったり事実を書いたりシェアすることはベトナムではリスクがございます。
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ベトナムで思い出す
私は幸運なことにITという変な言葉ができる前からソフトウェア・ファームウェアの開発に携わることが出来、しかも周りはAとかS級と言われる天才プログラマーがいて師事することが出来たため社内で馬鹿といえば自分。
バカどころか原生動物!ミジンコ!と呼ばれたり、猿!と呼ばれたときには「かなり出世した」と喜ぶくらいの立ち位置でした。
どのくらい天才さんが多かったかと言うと
エクセル(日本版)
当時はLotus1-2-3が全盛の日本でエクセルは後発ソフト、まだ日本で走る人が居ない時代でした。Microsoftが開発したmac版 excelを日本版に移植したパイセン。なんかすごく叱られ続けて普通の会話をした記憶がないですがw
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ノートンユーティリティーズ
O山センパイはピーターノートンに師事してIBM-PCから日本版を移植していた天才プログラマー。当時はもちろんアセンブラです。2輪の全日本でレースをされていたことがあり、練馬のボンバーに連れて行ってくれたのもこの方。ボンバーはモトクロスしていたときにも随分お世話になりました。(が、程なくピーターに引き抜かれ渡米。。。。失意の私も転職)
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R360,G-LocなどSEGAの体感ゲーム機
転職した先はゲーム会社でSEGA2研の人たちが作った会社だったので当然天才というか、もうなんだかわからないレベルのプログラマーしかいない”境地”でした。そんな中でついたあだ名は「ウッキー」。天才だらけの中にいると人ではないので仕方ないんです。。。
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実は楽だったバカ人間
バカキャラが定着すると、実は非常に楽で皆がバカ認定してくれるのでリラックスして仕事ができました。しかしどうして彼らは賢いのか?というのは時々考え自分に足りないものは何なのか?と思うようになりました。
ご指導もあり仕事はなんとかできるようになりましたがその後も「知」の世界に興味を持つことになり養老先生の「バカの壁」も飛びついて読んだのを覚えています。
ベトナムで見るバカの壁
養老先生が説明するバカの壁、人類の知的問題をベトナムでは第三者目線かつ極端な形で目にすることがあります。
知の分野で2つのハンデがあるベトナム
ベトナムはつい最近まで世界最貧国の1つでそもそもが植民地だったため、様々なこと(法律、インフラ、人づくり、文学や科学・技術の蓄積)が欠落している上にソビエトの支援で独立したため共産主一党独裁になってしまいそこから代理戦争で国土も人も破壊され今も不発弾や枯葉剤の後遺症に苦しんでいる「大きなマイナススタート」で建国された国です。
建国の1945年から独立戦争、ベトナム戦争、ポルポト成敗、中越戦争と悲惨な歴史が続き、それらが落ち着く1980年代まで、様々な問題を抱え経済も発展しませんでした。むしろマイナスを重ねた部分もあるでしょう。
ソビエト崩壊や中国の路線変更を追従し市場経済へ移行、外資と知恵を呼び込んだ効果が出て発展をしています。そして昨年から無理をしたハリボテの成長が崩れ始めました。
2つのハンデとは共産主義に由来するイデオロギーからくる考え方の問題、文明的な積み重ねが少ないことからくる国民の知識集積の少なさ、です。
言い換えると、偏った権威主義と無知、と言えるかもしれません。
現在起きている経済問題は単純に会計と監査のずさんさ、知識や哲学がないために容易にルールを破れてしまう「法治」と「モラル」が極端に低さが根本的な要因です。中国でもあった共産国の「拝金」問題ですね。
また市中の経済問題では「専門家不在」の質と効率の悪さと慢性的な混乱があります。包丁で叩いてタイルを割るとか道具と用法が一致していない、ということは割と普通。「OOとななんぞや?」という考え方があまり一般的では有りません。
国内だけでは即席教育で専門家がおらず、日本では批判を浴びている外国研修制度などでどうにかして手に職をつけた人を増やそうというのがベトナムの現実。ITの現場でも割り算が怪しかったり普通で養老先生のバカの壁に出てくる要素を素の状態で見ることが出来ます。
1. バカの壁「自分には関係ない」
これはベトナムで仕事をする誰しもが強烈に感じることでしょう。
ベトナムでよくあるトラブルの形として
問題が起きる
↓
担当者が別の人Aのせいにする
↓
Aは他の人Bのせいにする
↓
Bは元の担当者の問題だ、という
これが取引先ー>支店Aー>支店Bにまたがったりするようなことも普通に起きます。客観的な意識・思考が薄いのか「嘘をつく」「でまかせを言う」というのがごく普通ですし、小さい子供のように「怒られたくない」「めんどくさいから逃げたい」という意識が強すぎて実際にその場から消えてしまうようなこともしばしばです。(笑
しつけや国体が違う
飲食店に行けば地べたに座ってスマホ動画を見ている店員、オフィスなどでも自分の仕事ではない、知らないから関係ない、など「他人事しぐさ」みたいなのを見ない日はありません。
銀行口座が作れなかった話
ダナン支店で銀行口座が作れず大変苦労したことがあります。窓口の女行員たちはおしゃべりやスマホに夢中。口座開設をどうにかして「できない」事にして遊びに戻ろうとします。「外国人は無理」「書類が揃ってない」など適当なことを言ってましたが、こちらも側のベトナム人が指摘をすると渋々作業を開始、しかし普段から怠けているせいか結局どうすればいいのかわからず、上司に聞きに行くと上司(若い男性)も嘘を並べ始めたあと雲隠れ。
仕方ないので知人にその銀行の本社の人を繋いでもらい本社従業員のサポートで1つ1つ指示をもらって手続きして口座開設となりました。
ホーチミン市でも作った口座の設定?が間違っていて給与が振り込めなかったり様々な問題があり口座が使えるまで2ヶ月近くかかったことがあります。その時には会社の庶務従業員も知識が少なすぎて問題を大きくしていました。
殆どの場合、出来ない・知らないことが出た時にとっさに嘘をついて問題を大きくする、というのがベトナムでは非常に多いです。
そして会話の端ばしで感じるのは「だって知らないし、関係ないし」
こうした態度は日本でも学生アルバイトなどで顕著で防衛本能のなせる技なのでしょう。ただしベトナムではレベルがずーっと下ですが。。。
またベトナムでは幼少の頃から多くの情報やツールに触れていないため、脳が鍛えられていないのかな?というのもよく感じることです。 そもそも頭脳を使うのは最大の重労働だそうで、人間は知ろうとしたり考えたりは本来面倒らしいです。
ある程度の知識でわかったものとし、その先の情報は知ろうとしない
⇩
情報を遮断され、脳は活発に働かなくなる
⇩
どれだけわかりやすく説明しても全く理解できなくなる
こんな雰囲気の人が圧倒的に多く、また「わかったふり」をしたり関係ない話を持ち出して煙に巻く習慣が大人たちにあるため、若い人や子供も同じことをします。 先進国の人間が来て支配したり商売をすれば、ベトナム人側とすれば見たこともない物や概念だらけでも商売や仕事をすることが多いはずで、とくに植民地や属国支配の中で定着したのかな?という気もします。
役所はもっと酷い
実はこれは役所でも同じで、ある意味もっと酷いです。理由は法律が整備されてなかったり、文書で明確に定義・周知がされていない事がベースにあります。ロシアも同じですがソビエト時代に法律を細かく制定せず司法の独立を行わなかったため、共産党の人が勝手に解釈できる「ざっくり法律」統治になっています。
さらにベトナムの場合、語彙や言葉の定義がそもそも曖昧で共通認識も低く、一般の人は文書を読み解き記憶する能力が低いということがありそうです。
下のニュースはベトナムのニュースの翻訳版ですが、
「役人、公務員、政府機関、法執行機関の中には、不正行為に対する恐怖、責任に対する恐怖、反発、回避、解決の遅れにつながる法的リスクに対する恐怖を抱いており、あえて提案したり決断したりしない人もいます。」
実際に役所に行くと業務はあやふやで、細かいところに難癖をつけて申請を退ける、ということを繰り返せば仕事をしたことになるような体質があり、あわよくば賄賂を。。(むしろそれが本質かもですが)という状況です。
そうしたことがビジネスの障害になり仕事が進まないため、ベトナム経済は現在機器的な状況にあります。 たとえば、10億円借りて土地を開発する予定が、役所の認可が降りずに数年も工事を開始できず、高い金利だけを支払い続け…という企業はたくさんあり大問題となっています。
国家的な問題なんです
こうしたことは国家の制度が原因だ、という説明をしているのが名著「国家はなぜ衰退するのか」。 やる気がおきるインセンティブを補償する社会体制が大切だと説いていますが…共産主義全否定😅とくにスターリンの時代から酷くなった馬鹿な経済政策とそれを真似した中国は失敗例の代表選手として登場します。ベトナムもソビエト共産主義の門下生で最貧国となりました。
得意分野もある
田植えのような繰り返し処理や命令されてお使いをぎりぎりこなす、くらいの作業粒度がベトナムの大多数だったのではと思われますがこの適性?に目をつけているのが韓国や日本政府で、部品精算や組み立てなど自国の人がやりたがらない手工業・工場労働でベトナム人を使っているのは研修制度でもご存知のとおりです。
ベトナムで生活や仕事をする中で感じるのは圧倒的な知識・経験の少なさ。
教育システムが長らくなかったり、これからという時に戦争で荒廃して最近まで19世紀以前の生活をしていた人が大半で、国内のインフラもこれから。
あまりに知らないことが多く驚きますが学校で学べる哲学はホーチミン思想やマルクスレーニン主義ですし、そういう意味で知や思考の自由は制限されています。(お金持ちは留学するのでまた違いますが。。。格差要因ですね)
政府のお仕着せの情報以外は手を出せば怖い環境(報道の自由とか諸々制限されております)ですので無理からぬ所もあります。
2. バカの壁「個性をのばせ」
ベトナムの学校は最低限を学ばせところてんのように卒業させる速成栽培で、ある意味日本がやってきたことと同じです。日本の算数や数学の教科書と同じく権威的で単にテストでギリギリの点数を取ったことにすればOKと言うやつです。
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元は欧米から学んだ手法ですが第二次世界大戦後、民主主義がドイツやイタリア、スペインで独裁者を産んでしまった反省や産業構造が1次2次産業からサービスや知的分野のほうが多くなったことから「個人がそれぞれ考える」「洗脳されにくい」「1つの正義より複数の選択」など知的労働・民主政にふさわしい教育に改良されたと言います。
覚え教育の日本やベトナムは少々時代遅れの手法と言えます。独裁っぽいロシアもフランスだけでなくドイツ北欧の手法も取り入れて何度も改良をして「考える」教育になっているそうで国やプーチンへの盲信があるのはお年寄りだけ、戦争が始まったことでIT系を始め多くの人がベトナムへも移住してきています。彼らは明確に国を信じておらず自分の頭で考えて行動しています。
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中華圏ですが知識は浅くアメリカナイズされても欧州の知の伝統は継承していない
しかし実際の所、ベトナムを見ると多様性や個人主義は豊かさが必要であることを痛感します。スポーツ1つをとっても貧乏なのでサッカーとバドミントンがほとんど。そのほうが道具や場所などコストが安いですし、審判やコーチなど経験や知識をたくさん蓄えている人を揃えることもまだまだ難しいのです。
自分らしさ=社会投資や資本力 という側面は少なからずあるのです。
ちなみに教育の弱さはITはでも現れるのか日本もベトナムもITサービスは発展が遅く他国のマネをして作ってもバグだらけというのはよく聞く話です。
3.バカの壁「正解はひとつ」
これは前述の2つが掛け合わされた結果ではないかと思います。
実際に本でも
「バカの壁」を仕上げるには、一元論によって「正解はひとつしかないと思い込む」こと。
ということで
自分たちだけが正しい答えを知っている=自分たちとちがう考えの人はまちがっていると思い込む。
⇒テロリストになれる。
とまで書かれています。
開発をしている(まあ実際には製造にちかいのですが)と
「何をすればよいか具体的に指示をしてください」
と質問?されることが多いですが、自分で考えたり「解釈」することが苦手なようです。開発という言葉とおりやってみてA1かA2がどちらがより良いか?というのが技術となりますが、まだそこまでの理解がないため
「できなかったらどうしよう、どうしよう」
「間違えたら嫌だ」
「無駄なことをしたくない」
という「反応」が主流を占めているのがベトナムの現実です。
考えたくない・責任は嫌だ→答えは1つが良い
というのが強いのがベトナム人一般の性質かと思います。
(ただし答えを押し付けられたらあの手この手で言い訳しますが。論理より感情第一。)
金融などでも様々な問題を引き起こし現在のバブル崩壊や不正取締後の業界パニックに繋がっているようです。
言語能力の壁
記事を書いたあとで見つけたホリエモンの動画。長文が読めない人が多いというお話が入っています。ベトナムはこれが極端に強く、また文章を書ける人は更に少ないです。権威主義では自由に考え発想を形にすることは喜ばれませんし、常に話をボカして責任問題にならないようにするのが多い事も能力が伸びない理由かと考えています。
この動画に出てくる、短い文章しか読めない、わかったフリをしたい、というのはベトナムでは毎日のように遭遇する事で何度もうなずいてしまいました。誤魔化しすぎて自分でパニック気味になる人もいてしつけが悪い子供を見ているようです。
権威主義の怖さ
ベトナムをこき下ろしても生産性有りませんが「何故」の仮説・検証で、ベトナムは知識普及や教育環境が悪いという大きな格差があり現在進行中です。それは言論などが制限される「民主政に基づく法治国家ではない」からです。大昔世界中にあった「権威主義」の世界に生きている人々と言って良いでしょう。
「社会の開放性、創造的破壊を受け入れる意思、法の支配といったものが、経済的発展にとって決定的な意味を持つように思える」 ――ケネス・J・アロー 一九七二年度ノーベル経済学賞受賞者
これは「国家とはなぜ衰退するのか」冒頭の賛辞です。
ベトナムは経済成長期ですが上記の条件が増えても人々が変わるには時間がかかるということも見ていて痛感しています。
さらにスマホやAIに頼れる現代に成長期を迎えているもう1つの罠もあるのです。グローバルな労働環境や「バカの壁」の認知について考える時に現代はより広い視野で警戒して考える必要があるのかもしれません。
結論:相手をよく見る
とはいえ1%の天才、5%の秀才は人類どこでもいるそうで実際にベトナムでも考えることが(他の人より)出来る人はいて、そうした人たちはベトナムのレベルを嫌い鍛錬されたがっていたりします。
ベトナム人と仕事をするときには下記の要素が強い人か、それを修正したいと思っているかをよく観察すると良いでしょう。
バカの壁をつくる考え方:「自分には関係ない」「個性をのばせ」「正解はひとつ」
…そして、事件が本当に起きてしまいました
このNOTEを書いた直後にベトナムで50人以上の集団(後に100人規模であることが判明)が警察や自治体事務所を同時攻撃するという事件が発生。9人が死亡2名重体、70人あまりが逮捕・自首という大事件で、攻撃に参加した人は最近まで普通に農業などをしていた人たちだったと言います。子供のうちに勉強し、日頃から考える習慣を持つことは大切だなと改めて見せつけられました。
後記:バカだから出来たことも
私事ですがバカチン扱いされ続けたその後も、某有名3D格闘ゲームやレースゲームを開発した方たちと仕事をすることが出来き(やっぱり呆れられたり)ました。
そうして学んだり開発で得たすべてを投入して制作したのがピングーやRPGツクールでした。日本のオタク文化に興味があまりなくマーケットの大きな海外向けに絞りすぎたので国内では酷評されたりして、思い出してもバカさかげんを痛感します。
凝りすぎてロード時間が長くなったり今考えると反省も多いですが、今考えれば少資本なのに蛮勇のなせる技でした。
バカだから突き進めた!そんな事も時々あるので勇気を持って進みたいですね。
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