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ラウンドテーブル・シンポジウムの実施

2023年3月7日(木)マイウェルボディ協議会発足にあたり、メディア向けラウンドテーブル・シンポジウムを実施致しました。

登壇
SIP「包摂的コミュティプラットフォームの構築」プログラムディレクター国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学学術院 教授 久野 譜也
 
マイウェルボディ協議会代表 順天堂大学 学長 新井一
 
マイウェルボディ協議会代表幹事 順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 田村 好史
 
マイウェルボディ協議会 副代表幹事の順天堂大学 スポーツ健康科学部 准教授 室伏由佳
 
順天堂大学 健康総合科学先端研究機構 吉澤 裕世
 
本協議会の参画企業
株式会社ルネサンス 執行役員 健康経営企画部長 兼
健康長寿産業連合会 事務局長 樋口毅

MC 海賀美代子

マイウェルボディ協議会発足への期待

SIP「包摂的コミュティプラットフォームの構築」プログラムディレクター
国立大学法人筑波大学大学院人間総合科学学術院 教授 久野 譜也

久野:SIP全体の活動を通して大切なことは、社会実装をしていくことです。ただ論文を書くのではなく、課題を解決できるビジネスを作ることや、推進するための法律や制度を作っていくことが特徴です。
 
課題全体として包摂性を高めていくために、社会全体の寛容性を考えた上で、当事者の人も一歩踏み出していくことも必要だと考えています。今回取り上げるやせの問題も多様な課題を含んでいますが、若い女性自身の変化も必要です。
 
これまで多くの課題は科学技術を中心に解決していましたが、SIPの活動では社会技術によって価値観を変えていくことに取り組んでまいります。当事者、非当事者、民間企業など社会全体を巻き込んだ「社会技術の開発」が大きなテーマになっています。

マイウェルボディ協議会代表 順天堂大学 学長 新井一

新井:女性のボディイメージと健康は私たちにとって重要な課題であると認識しています。現在の日本では男性・女性ともに平均寿命と健康寿命との間に約10年の差があります。この差の原因には認知症や脳血管障害などの疾病がありますが、同時にフレイルやサルコペニアがクローズアップされています。これらは若いころの「過度なやせ」と大きな関連があることも明らかになってきています。
 
女性の身体に対する社会的な圧力や過度な期待は、しばしば健康的ではない習慣や自己認識につながっていきます。この問題を解決するために科学や医学だけでなく、社会学・心理学・教育学のように多面的な視点を持ったリベラルアーツとしての健康と医学が必要だと思います。

マイウェルボディ協議会発足の背景

マイウェルボディ協議会代表幹事 順天堂大学 国際教養学部 国際教養学科 教授 田村 好史

田村:日本は先進国でやせた女性の割合が最も高い国として知られています。それが顕著なのが20代の女性であり、80年代は女性がやせている女性の割合は、全体の10%を超える程度でしたが、90年代以降20〜25%もの女性がBMI 18.5を切っている現状があります。

この問題に着目した理由として、私の専門である糖尿病と関連があります。「太っていると糖尿病になりやすい」というのは知られていますが、やせている方も太っている方と同じように糖尿病になりやすいのです。ただ、この原因についてはこれまでほとんど解明されていなかったため研究をはじめました。

ラウンドテーブル・シンポジウムの様子

田村:これに関連すると考えられる背景として、若年女性の運動について、スポーツ庁による調査によると女性は「運動を良くする人」と「ほとんどしていない人」の2極化が進んでいることがあります。

「やせている女性の増加」と「運動の2極化」から、現在の若年のやせている女性はもしかすると「運動していない・食べていない・その結果やせている」という傾向にある人が多いのではないか、その結果、糖尿病になりやすいのではないか、と考えました。実際に、若年のやせている女性を100名程度集めて調べてみると、確かに少食であまり身体を動かしていなくて、筋肉が少ないことが分かりました。そして、糖負荷試験を実施した結果、標準体重の方の1.6%が2時間後の血糖値が一定以上高くなる耐糖能異常であったのに対して、やせの方はその7倍の13.3%も耐糖能異常がいることがわかりました。

やせた女性の中で「食べない」「運動しない」状態のことを私たちは「エネルギー低回転型」と呼んでいます。そしてこの様な状態が月経の異常、不妊・低出生体重児にもつながり、骨減少症などの問題にも繋がっていくと考えています。

そもそもなぜやせた女性が増加してきたのでしょうか?それは時代と共に「やせたい気持ち」を過剰に作り出してしまう社会構造があるのではないでしょうか。過剰なやせ願望は、体型に関する周りからの指摘による価値観の形成や、周りの人が痩せ思考にあることも原因として考えられています。社会が変わらないと、痩せたい気持ちは作られ続けるように思います。

ウェルボディにむけて

ウェルボディとは

体や心がwellな状態「ウェルボディ」を社会全体で目指していくことが大切です。身体的にも精神的にも社会的にも全て満たされている状態をウェルボディと定義し、私たちはウェルボディ実現にむけて3つの柱を用意しています。
 
①  社会的ムーブメント
協議会を中心とした企業参加型PRモデルを構築し、議題の認知率向上を目指します。
②  ボディイメージ教育
現実に基づく実現・持続可能な教育もモデルを構築します。
③  健康支援・ヘルスケア
例として、「痩せ症」といった疾患概念を作り、健康診断でスクリーニングするなど学会連携で構築を検討しています。

これらに加え、社会に広げる活動としてマイウェルボディ協議会を設立しました。
民間企業から50~100社にコミットいただき、一緒に推進していきたいと考えています
 

マイウェルボディ協議会への参画を希望する企業・団体の方はこちらから
https://mywellbody.jp/participate/

ヘルスリテラシーを向上し、やせによる障害の健康リスクを理解する「知識の変化」と社会全体のやせへの当たり前を崩し「社会概念の変化」を生み出すことで、医学的に適正な体型を自分の意志で選択できる世界を推進していきたいと思っています。

日本女性の健康課題

マイウェルボディ協議会 副代表幹事の順天堂大学 スポーツ健康科学部 准教授 室伏由佳

室伏:やせの女性は糖尿病、無月経等のリスクのみならず、心の自尊感情の低下、抑うつ、接触障害にもつながります。これらの日本の女性の課題解決のために社会全体が考える必要があります。

高校生・大学生(16~23歳)の女性1,000名を対象とした調査では、やせ女性は25%ほどで、ダイエット経験の有無を聞いたところ、やせ女性の62%が「ダイエット経験がある」と回答しました。
 
また、どんなダイエットを行っているかを調査したところ、全体では「運動実施」「体重を測定」「食べ物購入時のカロリー確認」などが上がる一方で、やせ女性の方は「毎日鏡をチェックする」、「SNSでダイエットアカウントを見る」、「食事を抜く」などダイエットへの勤勉性がみられました。

ラウンドテーブル・シンポジウムの様子

さらに、18〜29歳約6000名を対象に「なぜやせに至ったのか」の背景検証を行いました。その検証では「やせたい気持ち」はダイエット経験の有無によってその背景が大きく違うことがわかりました。
 
ダイエット経験のないやせ女性の特徴
・自身がやせているという認識がある。
・食事量を増やすことに比較的に抵抗がない。
・運動習慣が少ない。
・運動習慣の重要性は認識しているが、行動に変えられない。
 
ダイエット経験のあるやせ女性の特徴
・肥満だと感じる体重が軽い。
 ダイエット未経験者比較すると約3kg軽く回答。
・美容や肥満解消のために運動を行う人の割合が高い。
・「体重を増やしたくない」と思う割合が多い。
・ダイエット未経験者に比べてストイックな性格で、美に対するメディアからの影響を受けやすい。
 
これらの調査をふまえ、個人に適した健康教育や情報提供の重要性、そしてきちんと情報が届くように発信し続けることが重要であると考えています。まずそのためには「自分の体っていいな」と思うことから始めることが大切です。
 
健やかなからだで、動くことができる、体重のバロメーター意外の部分を重視していける。そんな状態に正しくアップデートしていく。自らの意志でウェルボディを選択できる未来をみなさまとともに達成したと思います。

参画企業・団体と叶えるウェルボディの未来

トークセッションの様子

田村
「若い人にとって、学校の役割は大きいと思いますが、教育現場ではどのようにやせの問題を捉えていますか?」
 
吉澤
「学校教育の中では肥満が中心となっています。先生からお話を伺うと、やせの問題を蔑ろにしているわけではなく、どう伝えたら良いかわからない、という現状があるようです。」
 
「小学生の集団ダイエットなど、気づいたらやせの問題が発覚するという現状もある中で、一緒にやせの問題を考えてほしいという要望も多くあります。」
 
「教育現場が保健体育・総合・家庭科など縦割りで考える状況がある中、ボディイメージ教育や心の問題など多岐に課題を横串しにしながら考える方法を検討しています。」
 
田村
「先生も問題意識を持っていても模索中ということですね。欧米では学校での教育も進んでいるところもありますが、室伏先生の海外での経験はどうでしたか?」
 
室伏
「小学生の頃アメリカに住んだことがありますが、同じクラスに体型も肌の色も様々な子がいました。そして体型や髪型、肌の色など、ふざけていても「絶対に言ってはいけないことがある」ということを厳しく教えられていました。日本に帰ってきたあとも認識の違いを感じました。」
 
田村
「学校だけでなく、働きだした女性の健康に関しても多くの課題があります。樋口さんは健康経営を推進する活動に取り組んでいらっしゃいますが感じていることはありますか?」

株式会社ルネサンス 執行役員 健康経営企画部長 兼健康長寿産業連合会 事務局長 樋口毅

樋口
「健康経営の取り組みを10年ほどやっていますが、社会に出て女性が女性の健康を学ぶ場が無いと感じています。」
 
「そして今、健康経営の中では女性の健康についてフォーカスをされています。経済環境省が出した女性の健康課題の経済損失は3.4兆円にのぼると言われています。その中でも1.7兆円は女性の健康課題による離職、休職が問題です。」
 
「やせ症によっておきている健康課題を企業の中で実装することが大切だと感じます。働く人は自分がどんな性別であったとしても、子供や配偶者、家族など女性と関わりを持っていると考えると、女性の健康を女性が学ぶのではなく、働く人全体が理解をすることで課題が浸透すると考えています。」
 
田村
「ありがとうございました。日本全体の課題として「何をやればいいかわからない」という声があげられているのですね。まずは0から1を生み出すことをマイウェルボディ協議会から始められればと考えています。」