問題振り返り⑫.コース別R「国内文学」(4)

国内編の振り返りは今回でやっと終わりそうです。

 No.158「2人の主人公と草壁信二郎(くさかべ・しんじろう)とをめぐる/三角関係や、部員を増やしながら成長していく吹奏楽部の面々の活躍が描かれる、初野晴(はつの・せい)によるシリーズ作品は何でしょう?」
 A.「ハルチカ」シリーズ

 「ハルチカ」シリーズは、アニメ化も実写映画化もされた初野晴の人気シリーズです。問題文では言及していませんが、草壁信二郎はハルタとチカが所属する吹奏楽部の顧問の先生です。各短編がミステリとして高い完成度を持ちながら吹奏楽部の成長(そもそも人数集めから!)や、草壁先生の過去の秘密など、語るべきことがとても多く読みどころ満載ですし、個性的なキャラクターの造形はライトノベルのような読みやすさがあります。シリーズ第1作の「退出ゲーム」の表題作は、演劇部員相手に即興劇を演じてその場から先に退出すれば勝ちというゲームでもって部員の獲得を目指します。着想も解決も素晴らしいのでぜひともご覧ください。

 No.161 「ティンカー・ベル、ドロシイ、クララ、/アリスのあとについて小林泰三の作品のタイトルになる言葉は何でしょう?」
 A.殺し
 
 小林泰三は1995年に『玩具修理者』で日本ホラー小説大賞短編賞を受賞してデビューしました。すぐに創作の幅をSFやミステリに広げジャンルをまたぎ傑作を多く発表しましたが、2020年に58歳の若さでがんのためお亡くなりになりました。「新藤礼都」シリーズや、問題でも取り上げた「アリス殺し」にはじまるシリーズなどのミステリは、小林泰三らしいブラックユーモアと奇想にあふれた怪作ぞろいです。

 No.163「ホームズやダルタニアン、エドモン・ダンテスらが登場する、『華麗なる探偵たち』に始まる赤川次郎が生みだしたシリーズものを、作品の舞台となる精神病棟の名前をとって「第何号棟シリーズ」というでしょう?」
 A.第九号棟シリーズ
 赤川次郎は言わずと知れた大ベストセラー作家であり、西村京太郎とともに私のミステリへの入り口となってくれました。あまりにも作品が多すぎて何をどう紹介したものやらという感じですが、シリーズものが多いのでまずはシリーズものの最初を読んでみて、面白かったらシリーズを読み進めていくのもどうでしょうか。
 「幽霊列車」にはじまる永井夕子シリーズや「三毛猫ホームズ」シリーズは物理トリックを使った推理小説らしい推理小説ですし、「若草色のポシェット」にはじまる杉原爽香シリーズや「三姉妹探偵団」シリーズは主人公や家族の成長を描いたミステリです。杉原爽香シリーズは1988年の第1作で15歳だった主人公が毎年1年ずつ年を取っていき、2023年刊行の『向日葵色のフリーウェイ』ではついに50歳になっています。そのほか、「東西南北殺人事件」にはじまる大貫警部シリーズや「盗みは人のためならず」にはじまる泥棒と刑事の夫婦シリーズなどは気軽に読めるユーモアミステリです。

次回からはコース別「映像・コミック関連」の問題を紹介していきたいと思います。

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