問題振り返り⑳.準決勝「早押しボード」

 いよいよ準決勝の振り返りです。準決勝は早押しボードという形式で行われました。
 やや長めの問題文を出題して途中で分かった人が早押しボタンを押します。
 問題文の読み上げはボタンが押された時点で止まり、その先は読まれません。
 ボタンが押されたら制限時間内に皆が手元のボードに解答を記入し、一斉にオープンします。
 ボタンを押した人が正解すると3ポイントが入りますが、不正解だと-3ポイントとなります。
 それ以外の人は正解すると1ポイント、不正解でもマイナスはありません。
 いかに他の人が分からないタイミングでいち早くボタンを押して正解を出すかがカギとなる形式です。

 このラウンドの振り返りでは、作品の紹介と一緒に問題文の構成や早押しポイントなどについても解説していけたらと思います。

 No.227「江戸川乱歩賞応募時は『そして死が訪れる』、1973年の刊行時には『新人賞殺人事件』、87年の文庫化の際には『新人文学賞殺人事件』と、幾度も改題され2004年に創元推理文庫から現在のタイトルで復刊された、2012年に書店で取り上げられベストセラーとなった、中町信(なかまち・/しん)の作品は何でしょう?」
 A.『模倣の殺意』
 早押しボード特有の長ったらしい問題文ですね。短文クイズだと「幾度かの改題を経て、2012年に「隠れた名作」として書店で取り上げられヒットした中町信の作品は何でしょう?」みたいな感じになるのですが、早押しボードだとこんな問題文になったりします。

 No.229「1969年に29歳で当時最年少のイギリス・保守党下院議員となったが、/のちに投資詐欺にあって全財産を失い、その経験を生かして1976年にデビュー作である『100万ドルを取り返せ!』を書きヒットさせた作家は誰でしょう?」
 A.ジェフリー・アーチャー
 『100万ドルを取り返せ!』まで聞けば難易度の高くない問題ですが、「1969年に保守党下院議員」の段階でボタンを押せるのは素晴らしいですね。こういった早押しができるかどうかが早押しボード形式でポイントを稼ぐコツとなります。
 『100万ドルを取り返せ!』はコンゲーム小説の傑作として紹介されることが多い作品です。コンゲームとはコンフィデンスゲームの略で、簡単にいうと詐欺をテーマにした作品のことです。
 主人公の側が敵役相手に詐欺を仕掛けて相手をやり込める筋の作品が多く、逆転やどんでん返しが随所に登場するドキドキ感や成功した時の爽快感があり、長く書き継がれているジャンルです。
 
  No.232「2003年に創業し、文庫レーベルからはローラ・チャイルズの「お茶と探偵シリーズ」やアリス・キンバリーの「ミステリ書店シリーズ」を刊行したが2012年に倒産した、その他の主な出版物に岡田克也の『岡田語り。』やアル・ゴアの『不都合な真実』がある日本の出版社はどこでしょう?」
 A.ランダムハウス講談社(〇:武田ランダムハウスジャパン)
 問題文に出てくる作品たちはいわゆるコージーミステリと呼ばれるジャンルです。厳密な定義は難しいのですが、探偵役を務めるのが警察官やプロの探偵ではなく一般人であることや、舞台が広い地域に広がらず主人公の居住している町や職場の近くに限定されること、日常の描写や登場人物たちの恋愛模様などが描かれることが多いことなどが特徴の作品群です。
 アガサ・クリスティの「ミス・マープル」シリーズが代表的で、日本では原書房が2012年に専門の文庫レーベル「コージーブックス」を立ち上げられ、問題文にもあるローラ・チャイルズの「お茶と探偵」シリーズはランダムハウス講談社から原書房へと引き継がれて刊行されました。
 
 早押しボード形式は問題作成側も自由度が上がるので、問題文も長くなったり難しくなったり、好き勝手に作らせてもらいました。9人がそろって解答するのだから多少は難しくても1人くらいは正解が出るかもしれないし、正解が出ないならそれもまた良しみたいな気分ですね。
 
 また次回も早押しボードの問題を振り返っていきたいと思います。

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