問題振り返り⑨.コース別R「国内文学」(1)

 いよいよ国内文学コースに入ってきました。参加者の皆さんが一番たくさん読んでいるところだったと思いますので、多くの正解が出ましたし、熾烈な早押し争いも多かったです。
問題番号No.136~160までの振り返りです。

 No.137「西村京太郎の『名探偵なんか怖くない』にはじまる名探偵シリーズで主に解決役を務める4人とは、メグレ、エラリー・クイーン、エルキュール・/ポワロと、日本の有名な探偵である誰でしょう?」
 A.明智小五郎
 西村京太郎は『殺しの双曲線』に続いて2回目の登場です。後で赤川次郎も出てきますが、中学生だった私がミステリーにはまるきっかけになったのが家にあった西村京太郎と赤川次郎だったので、思い入れが深いです。以前の記事でも紹介しましたが、西村京太郎はトラベルミステリー以外でも傑作が多い作家です。

 No142.「水玉螢之丞(みずたま・けいのじょう)によるイラストをもとに海洋堂がフィギュアも製作している、西澤保彦(にしざわ・やすひこ)の作品に登場する超能力問題秘密対策委員/会の見習い相談員は誰でしょう?」
 A.神麻嗣子(かんおみ・つぎこ)
 西澤保彦も多彩な作家ですが、やはり出題するのであれば著者の代名詞でもあるSFミステリからということで「チョーモンイン」シリーズからの問題となりました。神麻嗣子が登場する「チョーモンイン」シリーズ以外にもSF的設定の作品を多く書いていて、そのなかでも『七回死んだ男』は素晴らしい出来なので必読の一冊だと思います。西澤保彦のSFミステリ物は、特殊設定下に置かれた登場人物たちが戸惑いながら状況を把握していく様子などにあまり悲壮感をもたせずにできるだけユーモラスに描いているので読みやすく、特殊設定に読者も入り込みやすいです。そして何より、抜群の本格推理小説であることが人気の一因でしょう。設定は特殊なのですが、そのなかであくまでロジカルに解決していくところが西澤作品の特徴です。
 西澤保彦の作品でもう一つ語るならば、匠千暁(たくみ・ちあき)を主人公とした「タック&タカチ」シリーズでしょう。国立大学生4人組が出会う様々な事件を描くシリーズなのですが、ビールの置いてある家に迷い込みただただ飲み続けながら推理を続ける『麦酒の家の冒険』から、タックの生い立ちや現在の人格形成に深く関わる過去が重く語られる『依存』など、ユーモアからシリアスまですごく幅広く、4人の大学生活から卒業、その後の人生までを深く味わえる青春ものです。

 ここでは水玉螢之丞についても触れておきましょう。まずは著者名で画像検索をしてみてください。本が好きな方なら、どこかでこのタッチの表紙絵などに出会ったことがあるのではないでしょうか。
 神麻嗣子以外の小説だと、ロバート・アスプリンの「マジカル・ランド」シリーズや、赤川次郎の「悪魔」シリーズなど、あとはおそらくですがXで池澤春菜さんがアイコンに使用されているのは水玉螢之丞の描いたコリイ・ドクトロウ『マジック・キングダムで落ちぶれて』の表紙イラストかと思います(違ってたらすいません)。
 小説以外でも、1997年から亡くなる2014年までワンダーフェスティバルのカタログ表紙をてがけ、SFマガジンに連載していたコラムをまとめた『SFまで10000光年』『SFまで10万光年以上』はSF、ゲーム、ミステリに深くはまった著者の愛が詰まった名エッセイ集で星雲賞を受賞しています。
 トマス・M・ディッシュの『いさましいちびのトースター』になぞらえて自身を「いさましいちびのイラストレーター」と称し、私が初めて作ったクイズ問題集『いさましいちびのクイズプレイヤー』も、ここからタイトルを拝借しました。

 このコースはお話ししたいことがたくさん増えていきそうな気がするので、また次回にまわしましょう。引き続き次回も国内作品編を振り返っていきます。

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