問題振り返り㉔.決勝「10○4×」(完)

 引き続き決勝戦の振り返りです。

 No.308「「メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット」という囃し歌も印象的なシャーリイ・ジャクスンの小説は何でしょう?」
 A.『ずっとお城で暮らしてる』
 シャーリィ・ジャクスンは、出題した『ずっとお城で暮らしてる』や『丘の屋敷』などのゴシックホラーに分類されるような長編小説や、『くじ』に代表される人間心理の怖さを描いた短編小説を多く残した作家です。短編集『くじ』は日本では1964年に発刊されて以来、幾度も新版になったり文庫化されて刊行を繰り返すロングセラーの作品集です。シャーリィ・ジャクスンに初めて触れるなら『くじ』から入るのはおススメです。タイミングよく、彼女の生涯をモデルにした映画『Sheirly シャーリイ』が現在公開中です。小説とともに映画でも雰囲気を味わってもらえればと思います。

 No.319「江戸川乱歩の「カー問答」を受けて 「新カー問答」を書いた人物で、瀬戸川猛資(せとがわ・たけし)とは対談として「新々カー問答」を行った、トリック研究家は誰でしょう?
 A.松田道弘
 松田道弘は石田天海賞も受賞している奇術の研究家で、大きな書店では必ずマジックに関する棚に著作が並んでいます。並行してミステリに関するエッセイ・評論も手がけ、1980年代には日本推理作家協会賞・評論その他の部門で2度候補に挙げられています。一般向けに書かれたマジック・ミステリ・ジョークなどの解説書はどれも読みやすく、興味を持つ入り口に最適な本ばかりです。

 No.325「単行本の表紙には「前人未到の言語トリック」の文字が踊った、/ある画家の作品が飾られた別荘で起こる事件を描いた、筒井康隆による推理小説はなんでしょう?」
 A.『ロートレック荘事件』
 筒井康隆は言わずと知れた日本SF御三家の一人ですが、ミステリ的な作品も多く書いています。その中から紹介するとしたら、ドラマ化・アニメ化もされた『富豪刑事』と、今回出題した『ロートレック荘事件』でしょうか。『富豪刑事』はタイトルの通り、大富豪の父を持つ刑事・神戸大輔の活躍を描く短編集なのですが、大富豪であるという設定を活かしたエンタメ的な捜査手法を用いながらも、実に本格推理の形式を踏襲している優れた作品です。発表が1975年から77年にかけての作品で、2005年のドラマ化に際しては主人公を女性にし深田恭子が演じ、2020年のアニメ化に際しては舞台を現代に変更し最新鋭のAIやハイテク機器を出すなど、映像作品では時代に合わせたアレンジも見どころです。
 本大会では『ロートレック荘事件』をしんほむらさんが正解し8〇目を獲得し、これが優勝を決めるウイニングアンサーとなりました。

 ちょうどウイニングアンサーにたどり着いたところで、問題の振り返りの幕も閉じようと思います。
本当は、大会の雰囲気であったり問題文の構成、スラッシュの位置の解説などをもっとしたかったのですが、ついつい作品や作家の紹介ばかりになってしまいました、すいません。

 今回の大会やこのブログを通して、少しでもミステリやクイズに興味を持っていただいたり、一冊でも面白そうだと思ってもらえる本に出会ってもらえたら良いなと思います。

 今回の大は早押しクイズが中心になりましたが、もし次回開催することができたらもう少しビジュアル問題を増やしたりバラエティに寄ったつくりにしたい気持ちがあったりします。あるいは、どなたか開催してくれる方がいらっしゃったら解答者として参加もしてみたいですね。

 またいつかどこかでお会いできることを楽しみにしています。

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