問題振り返り⑲.コース別R「ミステリ詳しくないけど」コース(3)

 今回も引き続き「ミステリ詳しくないけど」コースの続きです。

 No.215「【○○の部分には答えが入ります】小沼丹(おぬま・たん)が終生の師と仰ぎ、2018年にはその名前を入れたエッセイ『○○さんの将棋』を発表した、代表作に『山椒魚』/や『黒い雨』がある作家は誰でしょう?」
A.井伏鱒二(いぶせ・ますじ)
 小沼丹は戦後に早稲田大学文学部で教鞭をとり英文学者としても知られた人物で、活動した時期から遠藤周作や吉行淳之介らとともに「第三の新人」と数えられることが多いです。『古い画の家』や『黒いハンカチ』といったミステリは近年中公文庫と創元推理文庫から短編集としてまとめられています。

 No.218「近未来の東京で刑事の都(みやこ)とアメリカ軍人のエマが事件の捜査に当たる、副題を「或いはナイン・ステップス・ステーション」という、日本の地下鉄駅がタイトルになっている作品は『何駅』でしょう?/」
 A.『九段下駅 或いはナイン・ステップス・ステーション』
 『九段下駅(以下略)』はクイズではまだ聞いたことがないので認知度は低いのかもしれませんが、抜群に面白い作品です。『攻殻機動隊』が好きな人に向いていると思うので、ぜひ手に取ってもらいたいです。
 西日本を中国に、東日本をアメリカの管理下に置かれた日本が舞台になっており、捜査のたびに政治的な障壁が多く立ちはだかってきます。そうした政治小説の側面を見せつつ、近未来ものならではのハイテク機器やガジェットが飛び交う様子はすぐれたSFでもあります。バディを組む都とエマはコンビ物の王道のように、警察と軍人という立場の違いから時に対立し、時に協力し、しだいに不可欠なパートナーになっていきます。
 また、本作は連作短編集なのですが、各作品を別の作家が書き継いでいることも特徴の一つです。設定やストーリーの流れを汲みながらバラエティ豊かな事件が描かれています。

 No.222「後半の植物園の場面において、手術台の上の婦人が麻酔を拒んだ理由が/明かされる、泉鏡花の有名な短編小説は何でしょう?」
 A.『外科室』
 泉鏡花はよく観念小説の書き手として紹介される作家です。私はあまり読んでいなかったのですが、大会の問題を作成している最中に『外科室』はミステリだという評判を聞いたので読んでみたところ、じゅうぶんにミステリ的な作品だったので出題しました。ミステリには推理や論理的な解決は必ずしも必要ではなく、読者や作中の人物が謎に出くわし、その謎への興味で物語を進めていく力があれば成り立つものだと思います。『外科室』は青空文庫で読めますので、ぜひとも読んでみてください。

 「ミステリ詳しくないけど」コースの振り返りは今回で終了です。次回からは準決勝「早押しボード」の振り返りになるのですが、各問題文が長くて情報量が多いので、さらにゆっくりとした振り返りになって行きそうな予感がしています。

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