問題振り返り⑱.コース別R「ミステリ詳しくないけど」コース(2)

 前回に引き続き「詳しくないけど」コースの問題振り返りです。

 No.207「『モルグ街の殺人』のなかでは、犯行を説明する際にデュパンがこの人物の著作を提示している、ナマコが外/敵から身を守るために用いる器官にその名を残すフランスの博物学者は誰でしょう?」
 A.ジョルジュ・キュヴィエ
 競技クイズ界隈では「ナマコが外~」でおなじみのジョルジュ・キュヴィエですが、『モルグ街の殺人』のなかで著作が取り上げられたりしています。大会当日も完璧なタイミングでボタンが押されました。こうした、競技クイズでは頻出の単語がミステリの中には意外な形で潜んでいたりして、読書の最中にめぐりあえると嬉しい気持ちになりますね。

 No.209「決勝戦が決着すると同時に殺人が行われるという予告を受けたソ連のテニスチャンピオン・ラスタスの奮闘が見どころの、テニスの4大大会の1つがタイトルになっている、ラッセル・ブラッドンの小説は/何でしょう?」
 A.『ウィンブルドン』
 クイズとしてはいわゆるガッツ問とよばれるタイプの問題です。小説を知らなくてもテニスの4大大会の1つでタイトルになりそうなものを答えれば正解にたどり着けちゃいます。
 問題文ではミステリとしての見どころを紹介しましたが、『ウィンブルドン』はソ連のテニス選手・ラスタスとオーストラリアのゲイリーとの熱いライバル関係と友情を描いた青春小説でもあります。スポ根ものが好きな方には強くお勧めです。

 No.214「林泰広(はやし・やすひろ)の『分かったで済むなら名探偵はいらない』で題材として取り上げられる、若い男女の悲恋を描いたシェイクスピアの有名/な戯曲は何でしょう?」
 A.『ロミオとジュリエット』
 林泰広は、2002年に光文社の新人発掘企画「KAPPA-ONE」の第1期に選抜され『The unseen 見えない精霊』でデビューします。「KAPPA-ONE」の第1期の4作品はバラエティ豊かな傑作ぞろいでした。石持浅海の『アイルランドの薔薇』は南北アイルランドの対立を舞台にしたミステリ。東川篤哉の『密室の鍵貸します』はその後の著者の活躍を裏付けるかのような堂々たるユーモアミステリ。加賀美雅之の『双月城の惨劇』は古風なゴシック・ミステリ。そして『見えない精霊』はインドのシャーマンを扱い、アッと驚くトリックでひっくり返す奇想もの。
 加賀美雅之は惜しまれつつも2013年に亡くなってしまいましたが、石持浅海、東川篤哉両氏の活躍は言うまでもないでしょう。そんななか、林泰広は2002年の『見えない精霊』以来作品を発表していませんでしたが、2017年になってようやく新作を発表します。それがこの『分かったで済むなら、名探偵はいらない』です。連作短編集のかたちをとって、「ロミオとジュリエット」の各登場人物の思惑などを詳しく紐解いていく興味深いミステリです。ミステリとしての楽しさを味わいながら「ロミオとジュリエット」を深く鑑賞できます。

 今日はこのあたりにいたしましょう。また次回もよろしくお願いいたします。

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