問題振り返り㉑.準決勝「早押しボード」(2)

 前回に引き続き、準決勝の問題の振り返りをやっていきましょう。

 No.237「作中には「長い髪を三つ編みにして、赤いゴムでくくった女の子」や、「青い衣装の、おばちゃんみたいな喋り方をする子」、「黄色いカーディガンの女」なども登場する、今村夏子/の芥川賞受賞作は何でしょう?」
 A.『むらさきのスカートの女』
 『むらさきのスカートの女』は推理を必要とする事件が起きるような小説ではないのですが、表現k技法が実にミステリ的だと感じたので出題しました。「黄色いカーディガンの女」が物語の鍵を握る登場人物なので問題文に入れるべきだと思ったのですが、赤いゴムの女の子や青い衣装の子も登場するので、せっかくなら全部入れようとしてこういった問題文になりました。大会後の懇親会の席で参加者の方から「今回作った問題で一番好きなのは何ですか?」と尋ねられたので、この問題だとお伝えしました。赤→青→黄と入れることができた問題文もお気に入りですし、ミステリ精神のある作品すべてが出題範囲であるという大会の趣旨を表現できたと思っています。

 No.245「迷宮のような古い団地の構造を活かした物理トリックものの表題作のほか、人工生命体フェアリーをめぐる連続殺人などを描いた、石黒正数(いしぐろ・まさかず)の連作ミステリ漫画は何/でしょう?」
 A.『外天楼』
 『外天楼』は素晴らしい作品集なのでぜひともたくさんの方に読んでほしいです。アニメ化された代表作『それでも町は廻っている』のような登場人物たちのコメディタッチのやり取りを活かしながら、すごく高度なミステリを描いています。ギャグ漫画としてもミステリ漫画としても最高水準にあると思います。

 No.255【ある作家の作品名を使って文章を作りました。誰の作品でしょう】密輸によって得た黄金を失った私は、奪回を目指して障害重賞レースに/本命として出走し勝利した。
 A.ディック・フランシス
 この、【作品名を使って文章を作りました】というのは昔からよくあるクイズのパターンです。ただ、せっかく違和感の無いきれいな文章を作り上げても、たいていは1作か2作のタイトルが読み上げられたところでボタンを押されてしまいます。そこでこの形式でできるだけ最後の方まで問題が読まれてほしいと思ってこの問題ができました。
 ディック・フランシスは競馬の騎手だった経験を活かして競馬を題材にしたミステリを多く書いた作家です。シンプルな1~2単語のタイトルで、邦訳はすべて漢字2字に統一されています。
 問題中にある二字熟語「密輸」「黄金」「奪回」「障害」「重賞」「本命」「出走」「勝利」はすべて邦訳のタイトルです。大会当日は「障害重賞レース」まで読み上げられたところでぐっと競馬関連の文章になったので一斉にボタンが押されました。

 次回も準決勝の問題を振り返っていきます。

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