動機

推理小説の世界では、殺人事件と動機は切っても切り離せない関係にあります。
それはそうです。犯人を捕まえてみたら動機無き快楽犯でした!では読んでる誰も納得しませんし、犯人を推測する材料としてどうなんだ?ということになってしまいます。
ところ変わって、現実世界ではまれに動機無き殺人事件もあるにはありますが、これはまれもまれ。やはり現実の殺人事件でも殺害動機はあり、動機のある者から容疑者を絞るというのは基本中の基本事項です。

その動機の中身はどうなっているのでしょうか。
紐解くと大きく2つ。はっきり2つに分類できます。一つは「金銭問題」、もう一つは「痴情の縺れ」です。事件によって細かい内容の違いこそあれ、他には無いと言ってもいいでしょう。あったら教えて欲しいぐらいです。

では、推理小説世界の殺人事件において、動機は事件とどう関わっているか、動機によって何がわかるかを考えてみましょう。
結論から言うと、大体のケースにおいて何もわかりません。往々にしてほぼ全ての登場人物に殺害動機があるためそれが犯人を絞る材料にはなりません。動機を示す上で目的があるとすれば、シリーズの人物が容疑者から外れるぐらいではないでしょうか。
『シリーズもので好きじゃないところは、この部分でシリーズものの人物が部外者になってしまうところです。特にクローズドサークルで部外者が生まれると緊迫感が薄れて作品としての面白さが減衰してるとすら思います。』(二重鍵部分はあくまで個人の見解です)
おっと話を戻しましょう。殺害時点で示唆される動機。それと全く異なる、犯人がわかってから明かされる伏線不明の動機。実際よくあるんですよね……これでは動機から考える楽しみなんて皆無。動機なんて無い方がマシと思うことすらままあります。そう思いながらも動機無き殺人など無く、動機が語られる部分は古来より確実に存在します。ロジックとして推理小説を見る時には特に無くても問題ない部分ではありながら、無ければ無いで恐らく味気ない物になりそうでもあります。
考えられるとすれば、トリックのパーツでしかないものになり兼ねない登場人物に少しのバックボーンを与え、キャラに肉付けをすることで混同を防ぎ、作中人物に思い入れを与える効果……
なんだ、結構あるじゃないですか。こういう要素を軽視するから私が考えるものは薄いのか……