ノックスの十戒

まずは、推理小説の基本とも言われるこのノックスの十戒。これを一つずつ現代的な解釈なども合わせて考えていきましょう

1.犯人は物語の当初に登場していなければならない
まあこれは基本事項でいいと思います。犯人を指摘する段階であんた誰だでは話になりません
解釈を拡げるのであれば、「事件が起こる段階には登場していなければならない」、こんなところでしょうか
これだけですと、クローズドサークルもので外部犯の存在を示唆していれば本当に外部犯でもアリなのか、とも言えます。話には出てたじゃん、みたいな感じで。この辺が許されるかどうかは、作者の話の動かし方や読者の度量に左右されそうです。余程でなければ許されなさそうではありますし、避けた方が無難ではあるのでしょうが... そういうのこそ書ききれれば楽しそうでもあります。

2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない
これも言いたいことはよくわかります。探偵が心を読めて、すぐさま「あなたを犯人です」では話になりません
ただ超自然能力の解釈も難しいところで、ジョジョのスタープラチナのような「人間ができることなら極限のハイレベルで行える」なんてのを自然能力と認める人はそうはいないでしょう。
こんな物理的な能力でなくても、どこからその結論に至ったのかが今一つわからない、所謂超推理と揶揄されるのは、ここに触れてのことてはないかと思われます
登場人物は納得しても、読者が納得いかなければ推理小説としての解決とは言えないでしょう。論理的帰結は大事です。自然能力として許されるのは、バラバラのパーツがピンと来て一つになった、までだと思います

3. 犯行現場に秘密の抜け穴・通路が二つ以上あってはならない
これはなかなか解釈の難しい命題です
そもそも私は作中に存在を示唆出来ないのであれば隠し通路なんて一つもあってはならないと考えているのですが、それではミステリの醍醐味である不可能状況を作り出す可能性が狭まるというのは一応理解しているつもりです。
抜け穴と言っても、物理的な抜け道もあれば、心理的な抜け道(犯人の言い逃れ)もあります。恐らく物理的な抜け道の方を指してるとは思いますが... 逃げ道2つもあったら密室作るの簡単すぎとは思わなくもないですし。やはり解釈しづらい命題です

4. 未発見の毒薬、難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない
これは議論の余地はないでしょう。作者の頭の中だけにある都合のいい装置で殺しました、では話になりません
と、感覚的には非常に納得できるものではあるのですが、この場合、何故か急性の睡眠薬として使われるクロロホルムとかアーモンド臭のする青酸カリはどう考えればよいのでしょうか。ちょっと調べればすぐに出てくるはずですが、眠らせるレベルのクロロホルムを吸わせると眠るというより意識が混濁して、脳に障害が出てもおかしくないですし、アーモンド臭がわかるぐらいの青酸化合物なんて匂った探偵死ぬんじゃないですかね。まあこの辺は都合のいい毒物というよりは推理もののお約束としておく方が色んなところにケンカ売らずに済むのですが

5. 中国人を登場させてはならない
勿論中国人そのものを指しているわけではないです。時代背景的な問題で(ノックスの十戒なるものが世に現れたのは1930年ぐらい)、文化などが共通の認識に収まらない未知の人種として、たまたま中国人が選ばれただけでしょう。イギリス人のノックスの気分次第ではもしかしたらこれが日本人だっかもしれません
グローバル化した現代では大体どの人種はどんな感じ、とちょっとぐらいは説明でき、登場した人種の変わった習慣であればその都度説明を入れれば良いわけで、ここは今は然程問題にはならないのではないでしょうか。宇宙人を出されたらここに関わってくるかもしれませんが

いかん長くなりすぎたので別ページに続きを書くことにします