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看護師を辞めた。

1 大学生

大学受験で小さな頃から夢だった看護学部を志望した
看護学部自体は全国でもそこまでレベルが高いわけでもなく、高校は進学校であったため入学試験などで苦労することはさほどなかった

レベルの高い大学を受験するのも面倒で、今行けるある程度のところでいいや〜というぬるい考えで大学を決めた

大学生活も結構楽しんだ
アルバイトでは🍎マークの会社で働くことができお金も経験も手に入ったし、合コンから飲み会まで色んなことをこれでもかってくらい遊んだ


2 大学病院

就職は都内の大学病院にした
また、急性期医療をやりたくて三次救急の病院にした

配属は手術室だった
「ICU希望だったのに!」
と当時は思っていたけれど、手術室は私自身のイメージ以上に急性期であった

パッとイメージがつかない人もいると思う
手術室の看護師はテレビでよく見る「器械だし」と患者やその他医師器械だしを外からサポートする「外回り」の2パターンある

また手術内容も消化器・婦人科・泌尿器・小児科・呼吸器・整形・形成・心臓・耳鼻科…あげ出したらキリがないが、これ全ての科を担当することになる
今までの解剖学の知識+手術内容全て頭に叩き入れなくてはいけない

初めは何もかも大学で使った知識とは全く違う世界で戸惑った
また「テレビでしか見たことなーい」
っていうあのリアルな現場に自分自身が立たなくてはいけない、想像を絶する緊張感のある現場にと思うと少しワクワクもあった

大学病院で相手にする患者のメインは「悪性腫瘍」ガンである
死ぬかもしれない、という恐怖と不安の真っ只中の人間を相手にするのは毎日精神がすり減っていく感じがした

ある日担当した患者はまだ若かった、「これからもっと長生きして手術が終わったら子供とキャンプに行くんだ!」と手術前に私に話してくれた
いざ手術が始まって開腹してみると、医師の想像を超えていた

『腹膜播種』

もうガンが転移しており手術ではどうにもならないところまで来ていたのだ
直ぐに手術は終了、麻酔を覚ますことになった

麻酔時間が短かったこともあり、患者は直ぐに目を覚ました、そして私に言った

「今は何時ですか」

この質問に嘘をつくことはできない

「今は◯◯時です」

「何でそんなに早いんですか…どうしたんですか…失敗したんですか…」

患者はベットの上ですでに泣いていた
私はどうしたらいいかわからなかった、そして術前の患者を思い出した時に勝手に涙が流れてた
止められなかった、もう感情が溢れ出ていた

「◯◯さん、一回出て行きなさい」

医師から手術室から出ていくよう言われた
その通りだ、医療者として患者の前で不安を煽ってどうするんだ、そんなの分かってる、分かってたはずなのに…

看護師1年目にして、急性期の辛さで私の心がおかしくなりそうだった

肉体的にもかなりキツかった

ロングオペになると7時間〜11時間
ひどい時は休憩なし、座ることもできない、そのまま手術に付き続ける

もちろん食事や水分補給、お手洗いなんてできるわけない
だから朝は食べない飲まないを習慣化してた
お手洗いに行けないのでこれしか方法がないのだ

「1年目だからたくさん経験しろ、働け」

そんな精神のもと、ロングオペに週2〜3でついた
休憩を取らずにそのまま残業で何時間も働くことも多々あった


3 コロナ

1年目の冬、全世界でコロナが流行り始めた
今思い出しても地獄だった

地域病院でもあったため、担当区のコロナ患者は全てこの病院に来た
重症も軽傷も

コロナで急を要さないオペは延期になった
しかし『帝王切開』と『脳疾患』は全部やらなくては行けない
防護服の上から手術着を着る、暑くて苦しくてでも清潔を保たなくてはいけない

帝王切開は赤ちゃんの体温のために室温を27℃程にする、とてつもない暑さと汗で毎回脱水だった

脳外なんて10時間…呼吸もできないマスクをつけ続けなくては行けない、頭痛との勝負だった

また私たち1年目はまだ経験が浅いから、という理由だけでリリーフ(他部署に応援担当)に出された

知り合いもいない、場所も分からない環境でコロナの担当をするのはとても大変だった

リリーフ夜勤だけで何ヶ月も働き続けた
16時に出勤し帰れるのは次の日の朝9時

もう何が何だか分からなかった

そんな中、同期が3人精神疾患で辞めた
その分の空いたリリーフ枠も全て残った同期で埋める羽目になった

文句なんて言えなかった

それくらい日本中が混乱してたしみんな苦しいのは分かってたから

頑張ること以外、許されなかった
「医療者のみんなありがとう」と言われることもあったが、頭に入らなかった

「そう思うなら代わってくれ」

ずっとそう思ってた


4 喘息と腹痛

そこからだった
必ず朝、出勤の電車で嘔吐と腹痛になるようになった
毎朝薬を飲んで出勤しない限り、身体が言うことを聞かなくなった

咳も酷かった
時間関係なく発作のように出続ける
夜寝ようとしても咳が邪魔をして全く寝れない

とうどうにでもなれ、と思っていたから寝ることも途中から諦めた
時間がきたら病院に行って、帰っていいと指示が出たら家で初めてご飯を食べる

そんな生活が続いた

そんな時、私に1回目の転職のきっかけがきた

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