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みちくさ③‥明星学園創立90周年記念誌

学校法人明星学園発行の『明星学園報』に、資料整備委員会が連載している「資料整備委員会だより・みちくさ」を転載します。
2015年5月発行の『明星学園報No.104』では、前年刊行した明星学園創立90周年記念誌について書きました。

資料整備委員会だより第3回
‥‥2015年5月発行分、明星学園報No.104に掲載

90年史表紙

90周年記念誌の編集を終えて
 5年がかりで取り組んできた90周年記念誌『明星の年輪 ―明星学園90年のあゆみ』が完成しました。5月の創立記念日に完成させるべく作業を進めてまいりましたが、学園にかかわる皆様方のお手元には、半年遅れとなる昨年末にようやくお届けすることができました。編集人一同、ほっとしているところです。
 この記念誌の制作にあたり理事長、常務理事、小・中・高の代表者、卒業生からなる編集委員会を組織しましたが、直接編集に携わったのは、小・中・高の元校長を中心とするチームでした。一瀬清元小学校長を委員長とし、依田好照元小・中学校長、渡辺京元高等学校長、元小学校教諭の大野映子(33回生)、卒業生の串田妙子(36回生)、大草美紀(学園資料整備委員、51回生)の6名が本誌編集を担当し、別冊略年表は卒業生の松浦恭子(29回生)と大野、串田、大草の4名が担当しました。
 今回の“みちくさ”では5年にわたってかかわった中から感じたことや、編集の苦労話などを、一瀬・依田両先生にお聞きしました。

■資料整備の大切さ
 本誌の編集には足かけ5年を要しました。先にまとめられた『50年のあゆみ』『60年のあゆみ』『70年のあゆみ』の各誌や、80周年記念誌、明星学園報(1979年12月第1号発行)など、参考となる資料は多いと考えていたのですが、実際に作業にあたってみるとやらなければならない事が多く、時間は5年でも足りないほどでした。複数の資料で微妙に年代がずれて記述されていたり、違った説明がついていたりすることもあり、事実を検証しながら、出来上がった原稿を何度も修正しなければなりませんでした。また文章に合った良い写真を探すことも大変な作業でした。『90年のあゆみ』の編集が始動したころ、資料の整理もまた始まったばかりで、写真の多くはまだ未整理の状態だったからです。写真だけではなく、その他の膨大な資料も十分に整理されておらず、その中から事実を確認する材料を探し出すことにずいぶん苦労しました。学園の歴史をまとめるという作業には、思った以上に時間がかかるものだと痛感しました。今後このような作業に携わる方々には、十年単位でスケジュールを立て、早めに作業を開始されるよう願います。
 また資料整備の重要性を再認識したことも申し添えます。今回の編集作業より資料整備が先行していれば良かったのですが、現実にはまだ整理し始めたばかりでしたので、必要なものが出てくる度にあちこちからかき集めなければなりませんでした。100周年までには資料の整理を終わらせてあると、次の年史の編纂がかなりやりやすくなることでしょう。

■書ききれなかったこと
 『90年のあゆみ』の最初の部分、「はじめに」というページに、この本に記す内容のひとつとして「『教育実践史』『子どもたちの生活史』を併せ持つ性格の内容とする」と謳いながら、紙面の制限もあり、実際には子どもたちの生活史を詳しく書くことができなかったことはひじょうに残念でした。もっと具体的な事例をいくつも書き込むことができれば良かったと思います。また「研究者の資料としても耐え得る内容とする」という大きな目標も掲げましたが、この点についても残念ながら目標を達成できたとは言えませんでした。教科の教育、例えば体育、木工、工芸などの教科ごとの実践に関して詳しく書けなかったことも反省材料のひとつです。
 また、明星学園は創立以来保護者の皆さんに支えられて来た学校だということについて、十分に書ききれなかったことも大きな心残りです。明星の保護者たちは子どもを学園に預けながら、自分たちもまた「明星に子どもを通わせている自分の生き方」を楽しんできました。学園に対する保護者の支援と、保護者自身が活発に行ってきたサークル活動などについてもっと詳しく紹介したかったと思います。これらの保護者の活動については、学園報No.101に掲載の“資料整備委員会だより②”でも紹介されていたように、PTAが長年発行してきたPTA会報『道』に詳しく掲載されています。『道』の発行は現在停止しているそうですが、時間が許すなら、いずれ過去の『道』の内容を再編集して関係者の皆さんに紹介したいと考えています。

■年表にも力を入れました
 今回つくった略年表では、過去に発行された年表の齟齬を拾い出し、数々の資料を照らし合わせて事実を検証する作業にもっとも時間を費やしました。また旧制学校と新制の切り替えについての実際や、4・4・4制時代のことなど、今となってはわからない事の多い時代については、当時在学中だった卒業生に話を聞いて内容に盛り込みました。
 本誌では各年代の児童生徒の活動について細かく取り上げることができませんでしたが、卒業生の皆さんには本誌と合わせて略年表もお読みいただき、在学中の出来事を思い出していただきたいと思います。すでにお読みになった数名の卒業生から、年表を読んで在学当時の事を思い出したという感想もいただきました。担当の4名は出来上がるまでにずいぶん苦労させられていましたが、その甲斐があったのではないでしょうか。

■あらためて思うこと
 『90年のあゆみ』の編集にかかわることで、明星が創立以来一貫して、主体的な子どもを育てようとしてきたことが、あらためてわかりました。小・中・高校がそれぞれ違う考え方をしていると言われたこともありますが、逆に「小・中・高は同じものを目指しているのだ」ということを実感しました。
 明星学園は今の社会に無くてはならない学校です。このような時代だからこそ、主体的に物事を考え、行動できる人間を育てなければなりません。そのためのノウハウを蓄積してきた学校が、明星学園なのだと思います。
  談:一瀬 清、依田 好照
  まとめ:資料整備委員会・大草 美紀


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