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【デュエプレ6弾環境】4C二角サファイアというデッキを知っているか

共著 デュエプレチーム「MBE」より、
ミョガちゃん(twitter: @myondamin) / SO.S(twitter: @SOSduel1125)

表記法 【○○】: デッキ名 《○○》: カード名

6弾環境の知られざる最終兵器

 みなさんはデュエプレ6弾環境といえばどんなデッキを思い浮かべますか?《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》を新たなフィニッシャーとして迎えた【天門】デッキ?新能力G・ゼロの代表選手として長い間猛威を振るい続けている【青単ツヴァイランサー】?《聖騎士ヴォイジャー》によって展開力を手に入れたエンジェル・コマンドデッキ【デイガアウゼス】

 実は6弾環境中期から後期にかけて、これらの環境デッキ達に対抗しうる「幻のデッキ」を我々デュエプレチームMBEが密かに開発していました。それが【4C二角サファイア】です。MBEのみんなで試行錯誤して完成させた、想い出のスペシャルデッキです。

【4C二角サファイア】の最終的なデッキリスト

 このデッキを使い、6弾環境のランクマッチ最終シーズンにあたるアルファディオスカップでMBEのメンバー2人が最終レジェンドを達成しました。また3人が最高レート1660以上を記録し、最終レジェンドに肉薄しました(100位ボーダーは1673)。

 なぜこの輝かしい戦績を残したデッキは歴史の中に埋もれてしまったのでしょうか?その最大の理由はアルファディオスカップの終了直後に間をおかず7弾が実装されたことです。通常、結果を残した構築はシーズン終了後、すなわち月初めに情報が公開され、その後に集計結果や記事・動画の公開によって流布していきます。新弾が出るのは月の下旬であり、その時までカードプールの変化はないため、多くの人がその構築を試すことでしょう。
 デュエプレ2弾から現在まで、基本的にこうしたサイクルで新弾実装までの時間が過ぎていたのですが、6→7弾の時だけは事情が異なりました。6弾最終シーズンのアルファディオスカップの期間は11月1日〜12月9日であり、7弾「超新星爆誕」の実装は12月10日でした。つまりシーズン終了から新弾までのインターバル期間が全くなかったのです。そのため構築が世に知れ渡るタイミングがなく、すぐに新弾の話題にかき消されてしまったのです。これはこの時のデュエプレがND/ADの分岐というシステム変更、1周年記念の各種イベントなど、一つの転換点を迎えていたことが要因です。

 ではどうして、今になってこのデッキを紹介するに至ったのか。2022年の5月3日、チームMBEは結成2周年を迎えました。MBEの活動の歴史の中で、【4C二角サファイア】の制作はメンバー同士の絆を深めるきっかけとなった大切なイベントです。チーム結成2周年を記念して、我々の活動の「証」を記録しておきたいという想いで筆をとりました。
 
 余談ですが、最初に筆者(ミョガちゃん/SO.S)が記事の執筆を思い立ったのは2022年の1月、ちょうどデュエプレ12弾の発売&6弾のスタン落ちが決定されたタイミングでした。6弾環境は我々MBEにとって思い入れの深い時期であり、折角なので何かに取り組もうということで本記事の執筆の話が立ち上がりました。しかし年度末とは忙しいものであり、特にミョガちゃんは修論執筆・就職準備・卒業旅行など多くのことに忙殺されていて、執筆の機会を一度逃してしまいました。

6弾環境の振り返り

 本構築の解説に入る前に、デュエプレ6弾環境(2020年10月15日〜12月9日)のメタゲームを振り返っておきます。この章の記述は、必ずしも環境を完璧に捉えたものではなく、筆者の主観に基づくものであることをご理解ください。

 この環境で最終的なTier1といえるデッキは【白緑ブリザード】、【青単ツヴァイランサー】、【デアリカチュア】、【デイガアウゼス】、【4C天門】の5種です。
 Tier2以下のデッキとして、【クローシス除去サファイア】、【赤白速攻】、【ドルバロム】、【デスフェニ】、【ペガサス】、【ウェーブストライカー】、【クイーンメイデン】等が環境に存在しました。総合的には【4C天門】が強く、Tier2以下のデッキはそれを対策したものが多かったです。

 以下、環境の変遷について少し細かく述べていきます。

 この環境で真っ先に暴れたのは《進化の化身》を手に入れたことで「ブリザードが引けないと質の低い速攻デッキになってしまう」という欠点を克服した【白緑ブリザード】でした。
 それを抑える形で環境に現れたのは《ボルバル》の殿堂によって欠けていたフィニッシュ力を《サファイア》で補った【5C天門】でした。
 6弾環境初期は実質的に【白緑ブリザード】と【5C天門】のツートップに近い環境であり、ささぼーさん主催の大型個人大会「ささZONeCup」(10月24日)では両デッキタイプの使用率がツートップ、さらに決勝戦で激突したことが印象的です(参考動画: ささZONe Cup デッキ分布ささZONe Cup 決勝トーナメント)。

 他に強力なデッキとして、今でもADで結果を残している【青単ツヴァイランサー】は6弾が初出です。最初期は除去に弱いことから評価が低めでしたが、研究が進み盤面と手札を上手くキープすることで安定して《ツヴァイ》の着地を狙えることが判明しました。手札が増えると《ツヴァイ》が出しやすくなるため細かく刻んでくる【ブリザード】に強く、《ストリーミングビジョン》によって手札を大量補充しながら《ツヴァイ》の複数展開や《パラディン》によって【5C天門】の受けを崩すこともできるオールラウンダーなデッキでした。

 《カチュア》を《マイキーのペンチ》によってSAにして投げるデッキはこれまでファンデッキとして扱われていましたが、《サファイア》の登場によって一気に実戦レベルまで引き上げられました。他にも盤面処理に使える《ガルザーク》と《ヘリオスティガ》、後者と強力なシナジーを形成する《ダークサラマンダス》等を加えて早期に相手のリソースを根こそぎ奪い去る凶悪な押し付けデッキとして【デアリカチュア】が台頭しました。

 《アウゼス》を主軸としたエンジェル・コマンドデッキも重要です。このデッキタイプはエンコマのコストを軽減する《ヴォイジャー》、強力なフィニッシャー《アルファディオス》などの登場によって大幅に強化されました。白黒、ドロマー等の変遷を経て最終的に《ザーディア》を加えることで【白緑ブリザード】対面の安定感を増した【デイガアウゼス】として完成されました。防御力・盤面処理性能がトップクラスであり、コントロールにはデッキアウトを狙うことも可能なため、見た目以上に対応力が高いデッキでした。

 環境が進むにつれて初期は5Cであった天門が自然のカードを抜いて【4C天門】へと移行していきました。4Cになった理由は、コントロールミラーでは早期に《ロストソウル》を撃ってすぐに《サファイア》を投げるというプランが中心になることで、自然のカードの必要性が低くなったからです。《サファイア》の攻撃をしのぐ際は除去に弱い《エリクシア》より《アクア・リバイバー》の方が優秀であり、また抜けた自然のカードの枠に《コメットチャージャー》などの除去札を追加できるのが4Cの強みでした。

6弾環境のまとめ Tier1は5種類


なぜ【4C二角サファイア】は強かったのか?

本デッキの三強カード

 【4C二角サファイア】(以下【角サファ】)は、簡単に言えば「マナを伸ばし、手札リソースを整えつつ高コストのカードをどんどん投げつけていく」タイプのデッキです。とくに《アポカリプス・デイ》《ロスト・ソウル》《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》の三枚は強力なカードで、一気にアドバンテージを稼いで試合を決めに行ける力を持っています。これらの光・闇・火+マナ加速のための自然文明を加えた計四色でデッキが構築されています。
 本構築が強かった理由として、環境中での立ち位置が優れてたことが挙げられます。当時のランクマッチ環境のTier1デッキ群の大部分、【4C天門】【デイガアウゼス】【青単ツヴァイ】【白緑ブリザード】それぞれに対し強力な勝ち筋を持っており、対等以上に戦える力を持っていました。

デッキリスト(再掲)

【4C天門】対面

 【4C天門】に対しては、豊富なブースト札を活かして《ロスト・ソウル》を相手より先に撃つことで試合を優位に進められます。【天門】にも《ロスト》および《ブレイン・チャージャー》等のブースト札が搭載されており、上手く回れば6ターンで《ロスト》を撃つことができます。しかし【天門】のブースト札は通常6~7枚程度しか採用されておらず、それに対し本構築はより高い確率で5~6ターン目の《ロスト》発射が望めます。また《口寄の化身》による大量ドローで《ロスト》を引き込むことができ、さらに動きを安定させられます。《ウォルポニカ》も【4C天門】対面の先撃ちロスト成功率を上げるカードです。パワーの貧弱さ故に【ペガサス】の進化種でしか採用されることのないこのカードを見て《エターナルガード》をわざわざ当ててくるプレイヤーが多く、ブースト札のプレイ機会を奪えることがあります。

 《ロスト》を発射したあとは、《二角の超人》や《サファイア》などのファッティを連打することで一気に勝勢に持って行くことができます。とくに《二角》のパワー7000が強く、【天門】に入っていた主要クリーチャーの《バルホルス》や《ザーディア》に対して優位をとることができます。また《二角》の重要な特徴として、これが1枚あるだけでクリーチャーを芋づる式に展開できることが挙げられます。ありがちな試合展開として、《ロスト》を早撃ちするためにリソースをかなぐり捨ててマナを伸ばした結果、こちら側もやることがなくなってしまい互いにトップ勝負になるパターンがあります。《二角》はこれを見事に解消できるカードであり、ターボロスト系デッキと非常にマッチしていたと思います。

【デイガアウゼス】対面

 【デイガアウゼス】も動き出しが遅めのデッキであるため、ブースト+《ロスト・ソウル》の通りが良いです。相手から先に《聖霊王アルカディアス》を展開されるか、自分が先に《ロスト》を撃つかのスピード勝負になりますが、どちらかと言うと分のいい勝負のはずです。

 《ロスト》を食らってからも《ヴォイジャー》《ピカリエ》などのキャントリップから連鎖的にクリーチャーを展開し、強い盤面をキープできるのが【デイガアウゼス】の特長ですが、そこに対して《アポカリプス・デイ》が刺さります。これらの強力呪文でリソースを枯らしきったあとに《サファイア》を投げてフィニッシュを狙います。【デイガアウゼス】は盾が非常に厚くカウンター性能に優れていますが、ここで《サファイア》の焼却が有利に働きます。

【青単ツヴァイ】対面

 【青単ツヴァイ】に対しては、とにかく《アポカリプス・デイ》による全体除去が刺さります。《ツヴァイ》が相手の場に出ている状況では、最低でも4体のリキッド・ピープルが並んでいることになります。そのため、こちらが2体のクリーチャーを並べるだけで、《アポデイ》の条件が満たされ、《ツヴァイ》を何体出されようがまとめて処理できるようになります(※6弾当時は《超神星マーキュリー・ギガブリザード》が存在せず、ケア手段がない)。相手が先攻4ターン目にツヴァイを複数走らせてきた場合は若干厳しいですが、こちらが先攻をとるか相手が少しもたついてくれたら、例えば3ターン目に《青銅の鎧》→4ターン目に《スカイソード》を展開するだけで盾の《アポデイ》による迎撃態勢が整います。本構築はこの点を意識して、序盤に出せる軽量クリーチャーを多めに採用しています。盾に《アポデイ》がなくとも、マナさえ伸ばせていれば手打ちの《アポデイ》が間に合いますし、《スクラッパー》を踏ませて小粒を一掃したあと手打ちの《デーモン・ハンド》で《ツヴァイ》を処理してゲームセットというパターンも望めます。

 対【ツヴァイ】のキーパソンとして、《アポデイ》のトリガー確率を上げるための《スカイソード》が挙げられます。デュエマをプレイしている人達の間では有名な数値ですが、盾5枚の中に4積みのシールドトリガーが埋まっている確率は約43%です。《スカイソード》の効果で盾を6枚にしておけば、この確率が約49%に上昇します。【ツヴァイ】対面では盾から《アポデイ》を出すことが勝利に直結するため、盾追加がとくに有効に働きます。さらに【ツヴァイ】側の勝ちパターンの1つに、盾を0枚まで追い込んでからどこかで《クリスタル・パラディン》を引いてフィニッシュするというものがあります。この戦術に対し、《スカイソード》で盾を追加しておけば、突然死の恐怖から解放されます。

【白緑ブリザード】対面

 【白緑ブリザード】相手は、こちらのメタがどうこう以上に、相手に《ブリ》と《進化の化身》をどれだけ多く引かれるかに依存する面がどうしても大きくなります。これらをあまり引かれない試合では(5,6ターン目までに引かれるのが2枚ぐらいまでなら)、横並べされたスノーフェアリーをやはり《アポデイ》で粉砕してから《スカイソード》や《スクラッパー》で時間を稼ぎ、《サファイア》で逆リーサルを仕掛けていくことになります。それ以上ブリ化身を連打される展開になると流石に厳しくなります。

 特筆すべき点として、【白緑ブリ】には除去トリガーもブロッカーも入っておらず、10ターン目以降に《ボルバルザーク》→《サファイア》の順でプレイすれば確定勝ちであるため、手札に《ボルバル》がある場合は全力で耐久することに集中すればよくなります。このとき盤面に自分のクリーチャーは一切必要ない(むしろ相手の《アポデイ》意識で盤面を減らしておきたい)ため、ときには相手の場のクリーチャー1体を処理するために自分のクリーチャー5体を巻き込んで《アポデイ》を撃つプレイングさえありえました(マジで)。

【クローシス除去サファイア】【赤白速攻】対面

 【角サファ】はTier1デッキに強いだけでなく、Tier2~3(のわりにランクマでの使用者が多かった)【赤白速攻】【除去サファイア】相手にきちんと戦えることが心強かったです。

 本構築は【赤白速攻】に対して《スクラッパー》《スカイソード》による耐久ができ、《サファイア》でトリガーを潰しながら詰めることができます。序盤から動ける【角サファ】にとって【赤白速攻】は挽回力の乏しい【白緑ブリザード】のような扱いであり、比較的楽に相手することができました。また遅いデッキの【除去サファイア】には《ロスト・ソウル》がしっかり刺さります。《口寄の化身》や《二角の超人》といった《炎槍と水剣の裁》に耐性のあるクリーチャーを並べて適当に攻撃していけば相手は除去にターンを費やさざるをえなくなり、こちらの《ロスト》が先に到達する場合が多いです。

 これらのTier2~3デッキの使用者はレートが高くないことが多く、負けるとレートを大量に吸われることがランクマに潜り続ける上で大きなストレス源となり得ます。その点、取りこぼしの少ない本構築を使うことで比較的快適なデュエプレライフを送ることができました。

マイナーデッキ特有の強さ

 本構築はいわゆる地雷デッキで、環境で使っている人は自分たち以外にほとんど見られませんでした。そのため、とくに《アポデイ》による初見殺しが成功して勝利できるケースが少なからずありました。
 デッキの真の強さというのは、多くの人に対策され始めてからどれだけ勝率をキープできるかで測られると思います。その意味でも、本構築が環境の中で広く使われるようになった世界を見てみたかったです。具体的な本構築のメタり方ですが、例えば《ツヴァイ》着地前の小粒リキッドピープルによる一点刻みはこのデッキに対して非常に有効だったりします。

負けパターン

 本構築の負けパターンについても触れておきます。《ロスト・ソウル》の早撃ちに着目した記述がありましたが、勿論それがうまくいかないこともあります。相手が先攻でスムーズに動いてきたり、こちらが思うように動けず【4C天門】から先に《ロスト》を撃ち込まれるパターンでは不利な試合展開を強いられます。そのまま負けてしまうことも多いですが、挽回できる試合もあります。例えば相手の《ロスト》後にどこかで《口寄の化身》をトップしてリソースを取り戻し、その間に構築されてしまった盤面を《アポカリプス・デイ》で強制的にイーブンに戻し、《ボルバルザーク》と《サファイア》による強行突破で勝ちを拾える場合があります。

 【デイガアウゼス】への《ロスト》が間に合わず、早期に《聖霊王アルカディアス》で突っ込まれる展開も非常に厳しいです。このデッキの《アルカディアス》の除去手段は《アポカリプス・デイ》を使うか《サファイア》で上から叩くぐらいしかありません。上手なプレイヤーは《アポデイ》を食らわないようにクリーチャーの数を調整したり《サファイア》に対するブロッカーを1体だけキープしながら戦ってくるため、大抵押し切られてしまいます。幸いランクマで出会う【デイガアウゼス】使いは手なりで盤面横並べのプレイングを選択してくれることが多く、【角サファ】の認知度の低さ・地雷デッキ性能の高さが発揮されていたと思います。

 【青単ツヴァイ】対面はほぼ《アポデイ》が通るかどうかに依存し、【白緑ブリザード】対面はほぼ相手の引きの強さに依存するため、これらのデッキとの試合は勝ちも負けもわかりやすいゲームになります。正直な話、この2デッキとの相性は五分程度だと思います(結果ベースだとこれらにも勝ち越していたことになりますが)。

 もう一つのTier1デッキである【デアリカチュア】は、数少ない明確な不利対面でした。早期着地した《カチュア》に対する回答が何一つなく(あって先攻ライフ青銅ハンド)、相手に理想的な動きをされるとそのまま負けに直行していました。


採用・不採用カードの一部紹介

 ここまでで紹介しきれなかったカードや、筆者にとって思い入れの強いカード、不採用のカードなどをいくつか補足的に紹介します。

・採用カード① 《勇猛護聖ウォルポニカ》

 「相手の《ツヴァイ》が走ってくる前に、こちらのクリーチャーを2体以上並べたい」「《ロスト・ソウル》を6ターン目に撃つために2回はブーストしたい」というニーズを満たすため、本構築にとって軽量のマナブーストクリーチャーは非常に重要な要素です。そのため《青銅の鎧》を4枚採用するのは当然として、5,6枚目のカードとなる《ウォルポニカ》が注目されました。このカードは《口寄の化身》との相性もよく、2→4→6で2ブースト3ドローする動きも狙えます。また特筆すべきなのが「デッキ偽装能力」であり、相手に《聖獣王ペガサス》への進化を意識させることで除去を誘発できることがよくありました。なんてことのないカードに見えますが、《ウォルポニカ》の導入によってデッキの総合力が底上げされたと思います。

・採用カード② 《腐敗勇騎ガレック》

 このカードはチーム内で最も意見が割れたカードです。ミョガちゃんは当時《ガレック》のことが大好きで、後に紹介する初期構築にはなんと4積みしていました。しかし「得意な対面をさらに得意にするカード」として否定的な意見を述べるメンバーもいました。ディベートの末、最終的な構築では1積みで落ち着きました。

 ミョガちゃんの思う《ガレック》の良いところは、「デッキアウトから遠いカード」であるところです。このカードは(1)相手のブロッカーを砕き(2)相手の手札の除去札を落とし(3)自分の山札を消費しない(4)殴れるクリーチャーであるという点から、自分がアウトするか殴り切るかの瀬戸際の戦いで非常に強いカードです。【角サファ】は山札の消費ペースがとても速いデッキですので、《ガレック》を多く採用することでデッキアウトによる敗北を減らせるとミョガちゃんは考えていました。
 他には、《ロスト・ソウル》との相互補完の良さが挙げられます。【天門】系統のデッキを使う人のプレイングの定石として、先に《ロスト》を食らうことを察すると、《ヘブンズ・ゲート》によって手札の大型クリーチャーを吐き出しておくというものがあります。そこに対して最も強力なカウンターとなるのが《ガレック》のプレイであり、大型ブロッカーを破壊しつつ薄くなった手札に打撃を与えることができます。つまり《ロスト》と《ガレック》を両方採用しておくことで、相手に逃げ場のない挟み撃ちの状況を作り出せるわけです。

 ただ結局はもともと得意な【4C天門】【デイガアウゼス】への勝率を上げるカードなので、これを増やすより【青単ツヴァイ】【白緑ブリザード】に強いカードを優先すべきという声もよくわかります。

・採用カード③ 《血風聖霊ザーディア》

 このカードはほぼ対【白緑ブリザード】専用機ですが、デッキの1枠を割いて採用されています。本構築は多量のブースト+《二角の超人》によるマナ回収や、《口寄の化身》による大量ドローによって山札をどんどん掘り進めることができ、1積みのクリーチャーにアクセスしやすいという特徴があります(実際《ボルバル》でフィニッシュする試合はかなり多かった)。《ザーディア》を1回プレイできれば【白緑ブリザード】への勝率が跳ね上がることと、1積みのそれを引き込むことがそれなりに見込めることを総合的に見て採用されました。

・不採用カード① 《光輪の精霊ピカリエ》

 《ピカリエ》は従来の青抜き4色のコントロールデッキには当然のように採用されていたグッドスタッフカードで、どの相手に対して召喚しても一定の役割が持てる(腐らない)ことが評価されていました。しかし《白緑ブリザード》などに対する防御用の札としてはパワーが足りず、コントロール相手には場に4000ブロッカーを立てるよりさっさとブーストして《口寄の化身》《ロスト・ソウル》で一気にアドバンテージを貰いに行く方が強いことから、一転してどの対面にもあまり役立たないカードという評価に落ち着きました。結局このカードの枠は、防御用の《スカイソード》《クレス・ドーベル》とドロー用の《口寄の化身》に専門化される形となりました。

・不採用カード② 《大勇者「二角牙」》

 一見相性がよく、自然と採用されそうなカードですが、よく考えると噛み合わない部分がいくつかあり不採用となっています。まず本構築の軽量ビーストフォークは《アポデイ》の火種としての意味合いが強く、進化種を盤面に温存することが意外と難しいです。そして本構築は基本的に《ロスト》を撃ってから《サファイア》を出す戦術を取るため、7マナで《二角牙》を出して10マナにジャンプする意義が薄いです。試合後半にマナが十分に貯まった状況では、山札を強制的に4枚削るこのカードを出しにくいことも問題です。これに対し《二角の超人》は更地盤面からの回復力・連打性能・トップ性能などに秀でており、そちらが優先されることとなりました。

デッキが作られた経緯

2つのルーツ 牙ブラック/4Cカチュア

 【角サファ】はMBEの中で生み出されたデッキですが、その起源は二本あります。一つは、紙のデュエマにあった【牙ブラック】というデッキからインスピレーションを受けたウニさんによって作成された【白抜き4C牙サファイア】です。

デュエプレ版・牙ブラック

 デュエプレ6弾で登場した《二角牙》というオリジナルカードが《ふたつ牙》の上位種であること、《サファイア》に綺麗にマナカーブで繋がることからこの手のデッキは多くの人が考案していたと思われます。コントロールに強いこのデッキですが、【デイガアウゼス】に固められた盤面を崩せなかったり、【白緑ブリザード】が全く受からないという弱点も顕著でした。ウニさんが動画配信サイトでこのデッキを回している様子を見たミョガちゃんは、白を入れてブロッカーと《アポデイ》を追加すればデッキの強みを残しつつ弱点を補えるのでは?ということを思いつき、初期型の【青抜き4C牙サファイア】を作りました。

ガレック好きすぎる男

 【白抜き牙サファ】に青が入っていた最大の理由は、《炎槍と水剣の裁》という強力なカードを採用できることであり、それによって【青単ツヴァイ】に対する勝率が確保されていました。しかし前述の通り《アポデイ》も【青単ツヴァイ】に対するメタカードとして十分に機能しており、さらに《裁》では返せない盤面を返せることから【青抜き牙サファ】というのは思いのほか良いアイデアでした。青がないことによるリソースの懸念も《口寄の化身》のドロー力が優れているため問題になりませんでした。ちなみにこのデッキを最初にチームMBE内で共有したときの反応はイマイチでした。というよりこの時期は、MBEのメンバー同士の交流がそもそも希薄だったと思います。

 二つ目の起源は、シイナさんやクリックさんが考えていた【青抜き4Cカチュア】です。【デアリカチュア】の最大の弱点は受けが弱いことで、それを白の《スカイソード》と《アポデイ》で補おうとした構築になります。しかし色を追加したことでどう調整してもデッキスペースの妥協が付き纏うこと、必ずしも《カチュア》を出さなくてもデッキの基盤自体がある程度強いこと、また【カチュア】偽装によって相手のプレイを歪められること等が次第に発見され、《カチュア》が抜けていくという経緯がありました。

白い?カチュア 


バトルアリーナで奇妙な方向一致

 6弾環境の途中で開催された公式大会のバトルアリーナ2ndに持ち込むつもりのデッキをMBEのメンバーで見せ合ったところ、ミョガちゃん・ウニさん・シイナさん・クリックさんの4人が示し合わせたかのように青抜きのターボサファイア系のデッキを提示するという出来事が起こりました。事前に何の相談もしていなかったのに各々がこのタイプのデッキの強さに気付いて個人研究していた事実が面白く、MBEの中で交流が盛んになるきっかけとなりました。

4人が各個人で組んで、バトルアリーナに持ち込んだ構築


通話による連日の調整会議

 バトルアリーナの結果は奮いませんでしたが、デッキに大きな可能性を感じていた4人は、折角ならリストを完成させてランクマシーズン終盤を戦いたいという気持ちで一致団結しました。
 それから4人でDiscordの通話機能を使ってルームマッチを繰り返し、リストが洗練されていきました。その際にベースとなったのは、《ピカリエ》や《二角牙》の思い切った不採用や、《青銅の鎧》や《口寄の化身》の積極採用といった点が優れていたミョガちゃんのアリーナ使用構築でした。調整していくにあたって特にシイナさんの貢献は大きく、《ウォルポニカ》や《ザーディア》の導入を進言してくれたことでデッキが大きく強化されました。
 4人の中でひとまずの完成形に至ったリストはMBEの他のメンバーも使ってくれ、「チームで一丸となって環境で戦えるデッキを作り上げた」という達成感と喜びが共有されました。

 そして、ランクマッチ最終日……

 ミョガちゃん、シイナさん、クリックさんは惜しくも最終ボーダー(1673)間近で散りましたが、ネムさん、ウニさんの二人が最終レジェンドに残ってくれました。

 そして息つく間もなく始まる7弾環境。人々はメカオーやアポロの常識外れな強さに大騒ぎ。このデッキはチーム外の誰に使われることもなく、月日は流れていったのでした。


あとがき

by SO.S

 ミョガちゃんが8弾の時に【4Cアガピビート】を開発してからはや一年。オルゼキアカップ終了後にミョガちゃんのミラティブ(5月3日)にお邪魔した私は、彼が「自分の最高傑作は4Cアガピではなく6弾の時の青抜きなんだ」と熱く語っているのを聞き、その幻のデッキに興味を抱きました。それから約4ヶ月後、縁あってチームMBEに加入した私は、夜な夜なミョガちゃん&シイナさんと通話しながらdiscordのサーバーの過去投稿を掘り起こしてデッキの実態に迫っていきました。それが今回記事として形になったことを嬉しく思います。デッキの全貌を知ることで私が得た感動を皆さんも同じように味わっていただけたらこれ以上ない幸せです。
 いつか8弾【4Cアガピビート】の記事も書かせますので、8弾マニアやミョガファンの皆さんは楽しみにしてください!読んでくれてありがとうございました! 

by ミョガちゃん

 僕らだけが知っている・理解しているデッキだという、諦めにも似て、それでいて優越感のようでもある想いを抱き続けていました。デュエプレというゲームは現在、「世代交代」とも言えるような大きな転換点を迎えており、過去や数年後の未来に思いを巡らせることも増えてきたような気がします。そんな中で、SO.Sさんが構築記事の歴史資料としての価値を懸命に説いて背中を押してくれたことで、本記事の執筆に踏み出すことができました。
 ここまで読んでいただいてありがとうございました。


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