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こころを何に例えよう

金曜ロードショーでジブリ映画祭りでゲド戦記がやっていたらしい。家にテレビがないので私は見ていないし、見たこともない。

同じお店で働く女の子が自殺したらしい。その子は新人ドライバーさんにもドリンクの差し入れをするような、とても聡明で可愛らしい才能ある女の子だった。お店で常にランキングは1位、予約も常に満枠埋まり、掲示板でもあることないことを常に書かれていた。

その子の写メ日記は今年の始めで終わっていた。「頑張る範囲で頑張ります」。いつもは長文で丁寧に書いていた日記がその日はすごく短かった。その何日後の最後の出勤を機に彼女は今までの日記を全て消し、いつの間にか在籍も消えていた。大人気だった彼女はお店から在籍が消された今でさえ掲示板で「あの子はどこに移籍したんだ」とか「性病を移された」とかあることないこと書かれている。

こころを何に例えよう。
ゲド戦記を見たことないが、昨日ちょうどやっていたらしい。携帯でテルーの唄を聴きながら彼女のことを想った。

新人ドライバーに差し入れなんて、デリヘルじゃあり得ない話だ。気遣いもできて、それでいて考え過ぎてしまう性格で、いつも彼女の思想に溢れている日記は私も同じお店で働くキャストとして毎回楽しみだった。

「本業飲み屋さんなんですか?お酒弱いですけど、今度飲みに行ってみたいなあ」
「〇〇(源氏名)ちゃんとしてじゃなくて、〇〇(飲み屋の名前)さんに会ってみたい」
そう言ってくれた彼女は、もうきっと一生会えない。

風俗嬢が自殺するなんて、歌舞伎町ではよくある話だ。自殺したというのもお店のオーナーから聞いた話。嘘か本当かわからない。もしかしたら、どこかで、息をしているかもしれない。でも連絡が取れず、住んでいる家に行ったらもぬけのからだったと。掲示板で悪質なストーカーに悩まされていた彼女は、去年の終わりくらいから段々元気がなくなっていたし、出勤数も減り言動もおかしくなっていた。

こころを何に例えよう。空を舞うような悲しさを。

あなたもきっと寂しかろう。

私は彼女のことを忘れない、覚えていないといけない。どこかで生きていておくれよ、そして、いつかお酒を飲みに来ておくれよ。あなたがすごく頑張っていたのを知っているよ。

一羽で飛んでいる鷹は悲しくて、寂しかったんだろう。休めることも出来ずに。

ゆっくり休んでね、だいすきだった、私にも勇気や元気を分け与えてくれて、本当にありがとう。



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