TENNIS NOTES

スイングスピードは、プロも一般人もほぼ変わらない

ストロークのスイングスピードは、「プロ」と「趣味でテニスをやっている一般人(中級以上)」でほとんど変わりません。

では「なぜボールスピードが速いの?」と思いますよね。
プロは筋力があるからです。

スイングスピードが同じになる理由

ボールスピードを上げるには、「脱力して打つ」とか「プロはスイングスピードが速い」とか「技術が高いから」とか、そういった意見が多いですが、実際の要因は違います。

もちろんスイングスピードを速くすればボールスピードは速くなります。 しかし、そうしないのはデメリットも大きく出てくるためです。

では「デメリット」とは何なのか?
それは、“空気抵抗”です。この地球上には大気が存在します。

たとえば、プロが一般プレーヤーより+20%のスイング力(筋力)を持っているとします。また、一般プレーヤーが300gのラケットを振ると100km/hの スイングスピードになると仮定します。このラケットをプロが振ると120%の力があるわけですから120km/hのスイングスピードになるかといえば、そうはなりません。実際はスイングスピード2乗の空気抵抗(スイングが1.2倍なら抵抗が1.44倍)があるためです。よって、スイングスピードは110km/h位しか出ないということになります。

「スイングスピードを上げることでボールスピードは出せるが、空気抵抗の影響で100%の効率にはならないため、ラケットに荷重することでスイングスピードを上げずに飛ぶようにしている。」のです。

一例として、ウィルソンプロスタッフ97(315g)で考えてみます。     振り抜きはとても良く、スイングスピードを上げられますが、いまひとつ ボールスピードが出ません。そこで、ラケットヘッドに少し荷重しスイングウェイトを上げてあげることで、スイングスピードが落ちても、結果的にはボールスピードがしっかり出るようになります。

また、テニスラケットは、同じスイングスピードで打った場合、大体の飛び同じです。あるデータでは、ピュアドライブが41.6%・プレステージMPが41%・ブレード18×20が42%・スピードmpが41%・EZONE98が40.5%と約2%(40~42%なので)しか反発力は変わりません。2%とは100km/hならば、2km/hの差異です。ほぼ同じスイング速度で同じボールスピードが出せるように 設計されている証拠です。ただし、プロはこの数値が高くなります。
※反発力が同じなのに飛ばない理由は、ラケットが重いため、同じスイング力で振ったらスイングスピードが遅くなっているからです。         しかし、重いラケットはコントロール性が高いため(例外はあります)、より少ない余力で振れるため、同じくらいのボールスピードになります。   もちろん正しく振れるという前提ありきです。
操作性に難を抱え、かげんをして振っていたらボールスピードは出ません。

ボールスピードを上げたい時はどうすればいいか

まず第1の選択肢はストリングです。ラケットを高反発系ラケットに変えても、コントロール性の良くなければ余力が多く必要なのでボールスピードが上がりません。
飛ぶの良いストリングを選び、フラットドライブが安定しやすく回転力が少なめのポリエステルやナイロンストリングを選ぶのもひとつです(回転力が少なめのポリエステルの方が比較的フラットドライブが安定する)。
ただし、特にポリエステル素材は時間とともに伸びやすく、コントロール性が下がるため、1カ月以内で張り替えた方が良いでしょう。

第2の選択肢はラケットへの荷重です。
しっかりと振れることが前提ですが、スイングウェイトが上がればボール スピードは上がります。
また、荷重する場所によってバランスが変わって操作性やコントロール性を上げることができ、より余力が少なくても問題がないのでボールスピードを上げることが出来ます。筋力アップすればする、ボールスピードを上げる ことができます。

日本の方は購入した新しいラケットを自分の身体力にあわせて”カスタマイズすること”を避ける傾向が高いですが、実は軽いラケットを買ってカスタムをした方がパフォーマンスは上がります。たとえばジョコビッチは、完全特注の95inchのラケット(18x19)ですが、あえて軽量に作成し、わざわざ鉛テープをたくさん貼っていますね。

最後はラケットそのものです。
正直に言うと、「飛ばなくてコントロール性も悪いラケット」もあります。また、コントロール面は余力を多く残すことで補えますが、安定感(ムラの少なさ)はビームの薄いラケットやスピンアシストの少ないラケットの方が良いと言えます。

以上のように、プロは「スイングスピードを上げることでボールスピードを出せるが、大気の影響で100%の効率とはならないため、ラケットを荷重することでスイングスピードを上げずに飛ぶようにしている。」ので、結果的に一般プレイヤーとスイングスピードは大差ありません。

もちろん、脱力したショットや、しっかり振れる技術力が基盤にあります。シナーやアルカラスのように、ここぞというときに一発の攻撃力を発揮することもできるのです。


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