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NTLive 『This House』 ざっくり要約

予習してるひまなんてない! でも字幕出しても何となくしかわからない!

という人にも『This House』を観てほしいので、再生しながら読めば「どこで」「誰が出てきて」「何がどうなったのか」がざっくりわかる要約を書きました。再生しながら読んでも、ちょっとネタバレになっちゃうかもしれません。

◇再生ページはここ(6/5午前3時まで)

◇先に読んでおきたい基礎知識とおすすめマンガ
This Houseについていろいろ (@picolin1 さん)

@haru_halll さん)

◇議員名の後ろにつく丸かっこは原則として選挙区を示します。
◇途中に挟まれる「◇」は史実や時代背景などの補足です。
◇史実に関する情報はHeadlongのサイトに掲載されている年表を参考にしていますが、ところどころ間違いが見られたため、加筆・修正しています。
◇政治・議会用語はなるべく定訳を使おうとしましたが、力尽きました。間違っているところもあるかもしれません。
◇もしよかったら、観た後に劇場に寄付をお願いします。https://www.nationaltheatre.org.uk/ Show Your Support のところから寄付できます。

−−−−−−−−−−−−−−−−第1幕−−−−−−−−−−−−−−−−

◇背景
イギリスの経済は1960年代から停滞し、1973年のオイルショックでスタグフレーションに陥った。物価が高騰する一方で労働者の給与は上がらず、失業率も増大。炭鉱労働者のストライキによりエネルギー危機も起き、国民の間には不安が広がっていた。

<ロビー>
労働党のテリー・デイヴィス議員(メガネのほう)(ブロムズグローヴ)が慌てた様子で別の議員と話している。首相のエドワード・ヒースがエリザベス女王に謁見し、解散総選挙になるという情報が、労働党のwhipであるウォルター・ハリソン経由で流れてきたのだ。

◇1974年2月、保守党政権時代。エドワード・ヒース首相は議会を解散し、総選挙を実施すると決定する。任期は75年までだったが、早期に選挙をやり直すことで保守党の勢力を拡大し、炭鉱ストライキの問題を解決したいという目論見があった。

保守党の議員(女性)もニュースを聞いて動揺し、その情報が同じく保守党のニコラス・スコット議員(パディントン・サウス)に伝わる。

そこに保守党の院内副幹事(deputy whip)であるジャック・ウェザリルが通りかかる。解散総選挙は本当かと問われるが、明確には答えず、はぐらかす。

<与党whipのオフィス>
保守党のwhipであるハンフリー・アトキンス(椅子に座っているほう)とジャックが話していると、先ほどのニコラス・スコット議員が訪ねてくる。彼は、次の選挙では労働党に議席を奪われてしまうと訴える。

◇ニコラス・スコットの選挙区であったパディントン・サウスは選挙区の区割り変更によって消え、新設のパディントン選挙区から立候補するも労働党候補に敗北した。

議会職員(かつらをかぶってる)が現れ、ブリーフケースの返却を求める。ハンフリーは不満が止まらないスコットに、小選挙区制はイギリスの伝統であり、我々はその制度の上で一時的に信任されている儚い存在でしかないのだと語る。

◇議員が返却している赤い鞄は、「レッド・ボックス」あるいは「ミニステリアル・ボックス」と呼ばれる与党のMinister(首相、大臣など)専用のブリーフケース。「ディスパッチ・ボックス」と呼ばれることもあるが、こちらは正しくは下院議場の机の上に置かれた書類箱を指す。レッド・ボックスは職務に必要な書類、特に機密性の高い情報を扱う場合に使われ、通常のブリーフケースと異なり、閉め忘れがないようにロック機構が持ち手側ではなく底のほうについているのが特徴。また、耐爆性のある鉛ライニングが施されており、かつては船上で捕らわれた場合に、海に投げて沈ませることで機密を守ることができた。色は基本的に赤だが、鉄道で移動する議員とwhipは黒いデザインを使うことになっている。
https://en.wikipedia.org/wiki/Red_box_(government)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/magazine/8579587.stm

<野党whipのオフィス>
労働党whipのボブ・メリッシュが座っている。そこにテリー・デイヴィス議員がやって来て、スコットと同様に選挙区の区割り変更への不満を訴える。ちなみにSaveloyはソーセージの名前。

◇室内の照明が切れそうになるのはエネルギー危機だから。
◇テリー・デイヴィスも自身の選挙区であったブロムズグローヴをレディッチという工場町との統合で失い、次の選挙ではスコットと同様に落選することになった。

自分は党に忠実でいたのに、方針に従って投票をしたのに、そのせいで票を失うことになる……と愚痴を漏らすデイヴィス。ウォルター・ハリソンは、鳥の群れが本能的に飛ぶ向きを変えるように、党が生き残れるように指示を出して向きを変えさせるのが我々の仕事なのだと語る。

<ロビー>
保守党のジャックと労働党のウォルターが鉢合わせる。互いのノートについて軽口を交わし合う2人。ジャックは次の総選挙でも勝つ自信を見せる。

<ビッグ・ベン>
時計を管理する技師と労働党whipのマイケル・コックスが話している。ビッグ・ベンの上部には議会の会期中のみ点灯するエイルトン・ライトという照明があり、これから議会の解散に合わせて消灯されようとしている。ビッグ・ベンは建設されてから一度も止まったことがなく、戦争中も動き続けてきたとマイケルは語る。

◇1974年2月28日、総選挙が実施される。勝利したのは労働党であった。しかし、結果は労働党301席、保守党297席。どちらの党も単独で過半数を獲得できない「宙吊り議会(ハング・パーラメント)」となった。ハロルド・ウィルソンが首相に就任する。

<与党whipのオフィス>
政権交代に伴うオフィスの引越し。ハンフリーが荷物を片付けていると、与党となった労働党のボブ・メリッシュが、早速荷物を置こうと入ってくる。オフィスの交換くらいもう少し礼儀をもってできないのか?とハンフリー。ボブは絵画を置いていけとか、金庫の暗証番号を教えろなどと言いたい放題だが、ハンフリーは少数党政府に未来はないと言って去っていく。

◇ボブは「(この引っ越しは)ロビーから数歩の距離だが、人類にとっては大きな一歩だ」というジョークを言うが、元ネタは1969年に月面着陸を果たしたニール・アームストロングの「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」。

ウォルター、マイケル、ジョー・ハーパー(黄色のたすき)、新しくwhipとなったアン・テイラーが加わり、会議が始まる。課題は、保守党と4席しか差がない状態で、いかに残りの少数政党(合計37)を味方につけるかということ。

<野党whipのオフィス>
ハンフリーが荷物を整理していると、「大佐」というあだ名のキャロル・メイザー議員(イーシャー)が来て、新しいオフィスの環境に文句を言う。そこに新人whipのフレッド・シルヴェスターが入ってくるが、姿勢が悪いと大佐に叱られる。

ジャックが加わり、自己紹介を交わす。いつも上質のスーツを着ているのは、家族がサヴィル・ロウに店を持っているかららしい。ハンフリーは、こんな状況もクリスマスまでには終わるはずだと楽観視している。

◇第一次大戦時にも「クリスマスまでには終わる」と言われていたが、現実はそうはならなかった。

与党側が内閣不信任案を警戒している頃、野党側でも同じ話をしている。だが、内閣不信任案を出すためには、保守党はこれまで避けてきた他野党との交渉に乗り出して彼らを味方につけ、「法案を通せない政府」という不信任に値する状況を作らなければならない。新人のフレッドはアイデアを出す。「今度の法案採決の日をスコットランドの休日に重ねれば、スコットランドの労働党議員も、この法案に賛成しているスコットランド国民党の議員も出席できなくなるのでは?」

<与党whipのオフィス>
与野党の調整会議。今後審議される法案は、「レート援助交付金法案」(国内の地方自治体に交付される補助金を平等にする)、[社会保障年金制度法案」(基礎年金制度と合わせて所得に比例する年金を払う制度を導入し、より水準の高い年金の供給を目指す)、「労働安全衛生法案」(雇用者に対し、「合理的に実行可能な範囲において、被雇用者の衛生、安全、福祉を保証する」義務を課す)の3つ。保守党は社会保障年金制度法案の採決をスコットランドの休日に重ねようとするが、その魂胆はすぐにバレてしまう。

日程が決まった後、ボブは全員に保守党を除く少数政党(odds and sods)と交渉するように指示を出す。手分けして彼らの票を集め、なんとしても法案を通すのだ。ボブはアンに対し、whipには担当の議員を指示通りに出席させ、投票させる責任があることを説明する。「ペアリング(反対派の議員と申し合わせて投票を棄権する)を使えるのは、本人が死にそうな時か、仕事で出席できない時だけだ」。

ボブはアンにスクリュードライバーを渡す。投票のために議場に集まるタイミングになったら、議員がトイレに入っている間に下から覗いて靴を確認し、保守党だったら閉じ込めておけ、ということ。

◇上流階級の多い保守党議員は労働党議員とは履く靴が違うため、足元を見ればどちらかわかるという意味。

マッチョな職場だけど、特別扱いされる「トークンガール」にはなりたくないと言うアン。だがボブは、俺もウォルターもそれぞれの属性を代表する一種の「お飾り」であり、有権者を代表する政治家とはそういうものだと返す。

<ウエストミンスター内のバー>
ウォルターは担当である北アイルランドの議員たちと話している。与党に従うならギブアンドテイクだ、と議員たち。彼らの条件は、選挙区の区割り変更と天然ガスパイプラインの建設だ。ウォルターは、家族を置いてロンドンに来ているのだから、年に3回は奥様用の航空券とホテルも用意しますよ、と懐柔する(いやいや、勘弁してくれと返されるが……)。

◇北アイルランドの各政党が求めていたのは、議席数を拡大するための地元選挙区の区割り変更と、北アイルランド-スコットランド間の天然ガスパイプラインの建設。北アイルランドには天然ガスの供給がなく、当時多くの家庭では暖房の燃料に灯油を使用していた。その後、1990年にパイプラインの建設が始まり、1996年に開通した。

<どこか>
ボブは法案採決の厳しいシステムについて語る。離れた場所から電話や手紙で投票することはできず、必ず本人が出席しなければならない古くさい制度が続いているのだという。

<ティールーム>
ジョーはスコットランドの議員たちと交渉中。スコットランドへの権限委譲は労働党のマニフェストに入っているが、保守党は反対するだろう。だがこれを夏までに通せれば、労働党は力を増して、次の選挙で過半数を獲得できるかもしれない。

◇スコットランド国民党は権限委譲(スコットランド議会の設立)を求めていた。これが認められればスコットランドは立法権限の一部を手に入れ、ネーション(カントリー)の方向性を自ら決められるようになる。ウェールズのプライド・カムリも権限委譲に関心があったが、この時点ではまだスコットランドほど強く望んではいなかった。

<リバーテラス>
マイケルはウェールズの議員と話している。ボブでもウォルターでもなくマイケルが交渉相手だなんて、なめられているのではと考えるウェールズの議員。ケースバイケースだということで話は終わり、マイケルは結果を出せない。

<ティールーム>
今度は保守党のジャックが先ほどのスコットランドの議員を口説こうとしている。だが、既に労働党と話はまとまったと断られる。

<地下墓所>
アンが自由党の議員と話している。内閣不信任案が出たら保守党側につくのかと尋ねるが、答えははっきりしない。保守党が敗北するのは自分たちは権力を持つ側だと信じているから、一方、労働党が敗北するの自分たちを権力とは遠い存在だと思っているから。二大政党はいつもこうだ……と議員は語る。

<リバーテラス>
ジャックは先ほどのウェールズの議員と会うが、やはり断られる。

<与党whipのオフィス>
メンバーはテープレコーダーの音声を聴いている。ジョン・ストーンハウス議員(ウォルソール・ノース)の声を録音したもので、その内容はテムズ川がどうとか、国会議事堂が燃えているのが見えるとか、明確な内容がなく謎めいている。彼はかつて、議会で溺水事故の件数について質問したことがあるらしい。頭がおかしいやつのせいで議席を失うのはまっぴらだ、とボブはストーンハウスを呼びつけるように言う。アンは妻や秘書のシーラから話を聞くように指示される。

◇ジョン・ストーンハウスは1974年5月、議会でウエスト・ミッドランズの運河について溺水事故の危険性を主張していた。

今夜は社会保障年金制度法案の採決が予定されている。ペアリングに必要な議員は2人。相手を見つけられなければ、2票失うことになってしまう。

<ロビー>
与野党のwhipはペアリングの交渉をする。実は保守党も元々2名欠席の予定だったが、それは伏せておいて交渉に乗ってやったふりをする。

<与党whipのオフィス>
マイケルは呼び出したストーンハウスと話をする。ちゃんと投票するように念押しするだけだというマイケルに対し、彼は要領を得ない独り言のような言葉を返すだけ。2人の話はかみ合わないまま終了。

<色々な場所>
票を取りまとめるために奔走するwhipたち。議員たちの機嫌を取るためにジョーは椅子を用意し、アンはカーペットを変え、一方、ウォルターは議員を脅して言うことを聞かせる。

<議場>
社会保障年金制度の第二読会。採決のディヴィジョン・ベルが鳴る。結果は可決。

2回目の総選挙実施を知らせるニュースの音声が重なる。再び労働党が勝利するが、労働党319 対 保守党316で、過半数をわずかに超えただけだった。

◇1974年9月、ハロルド・ウィルソン首相は10月に2回目の総選挙を行うと決断。今度こそ安定過半数を占めることを期待しての判断であったが、結果的には基盤は不安定なままだった。

<ロビー>
勝利を祝っていたウォルターは、オフィスの外でジャックと遭遇する。ジャックは軽口を叩くウォルターに、勝利したといっても今の数字では、事故や健康や家庭の都合で誰かが抜けるだけで、すぐに「宙吊り」に戻ってしまうと警告する。だが、ウォルターは「(任期いっぱいまで)5年やってみせる」と豪語し、賭けを提案。ジャックもそれに乗る。

<野党whipのオフィス>
フレッドがハル・ミラー議員(ブロムズグローヴ&レディッチ)と一緒に初めての議会演説(Maiden speech)の練習をしている。彼は望みがないと思っていたのに立候補したら当選してしまったのだと語る。ウスターシャー州の豊かな牧草地を想像していたのに、実際はバーミンガムのような工業町で、クソみたいな針ばっかり作っていると訴えて出ていく。

◇ハル・ミラーは、ブロムズグローヴとレディッチが合併した新しい選挙区で、労働党のテリー・デイヴィス(元ブロムズグローヴ)を破って当選した。
◇whipは普通の議員と違い、議会での演説は禁じられている。

フレッドはMaiden speechのようなしきたりは廃止してしまえばいいのにと言うが、ハンフリーは、規則ではなく伝統と紳士協定を重んじる英国議会のユニークさを語り、やり過ごせとアドバイスする。

影の内閣メンバーとなる2人の議員が入ってくる。ノーマン・セント・ジョン-スティーヴァス議員(赤いチーフ)(チェルムスフォード)は影の教育科学大臣に任命される。もうひとりのアラン・クラーク(茶色いジャケット)(プリマス・サットン)も任命を期待していると、守衛からの苦情を伝えられる。酒を飲んでは新しい車で来るのを繰り返し、地下駐車場に3台も停めていたのだという。

スティーヴァスは保守党党首選挙の噂について言及し、ハンフリーは噂の出所を気にする。

◇二度の総選挙で敗れて以来、党首の責任を問う声は何度も上がっていたのだが、党首選挙はポストが空いた時にのみ行うという規則があったため、ヒースは辞任を免れていた。だが、1922年委員会(保守党議員委員会)の下院議員が規則の見直しとヒースに対する再選挙を求める。ヒースはこれに同意し、1975年2月に党首選挙が実施されることになった。

<どこか>
ハンフリー、ジャックはアイリー・ニーヴ議員(アビンドン)を取り囲み、ヒースの対立候補を聞き出そうとする。ハンフリーはキース・ジョセフ(リーズ・ノースイースト)を予想していたが、ニーヴはマーガレット・サッチャー(フィンチリー)だと答える。ハンフリーはサッチャーの実力を信じていないため、当て馬として哀れな子羊を生贄にするのかと問うが、ニーヴは否定する。

聞き出した候補は4人。ジェームズ・プライアー(ロースタフト)、キース・ジョセフ(リーズ・ノースイースト)、ジェフリー・ハウ(イースト・サレー)、ジョン・ペイトン(ヨーヴィル)。

<与党whipのオフィス>
欧州共同体(EC)残留を問う国民投票とスコットランド&ウェールズの権限委譲についての採決が迫っている。労働党の議員たちは権限委譲についてあまり乗り気ではないが、この重要な法案を通して力を見せないと、少数政党の協力は得られないだろう。

◇1975年6月5日、欧州共同体(EC)への残留を問う国民投票が実施される(加入は1973年。労働党は1974年の選挙マニフェストで、EC加盟条件の再交渉と国民投票による判断を約束していた)。投票の結果、残留が決定。

アルフレッド・ブロートン(バトリー&モーリー)、通称「ドク」がやってくる。健康の問題で病院に行かなくてはならないため、英仏海峡トンネル法案の審議に出席できるかわからないと伝えに来たのだ。ウォルターはペアリングをするから大丈夫だと言う。それに、「国会議事堂内で死んではいけない」というルールもある。ドクは引退を考えているらしい。

◇1975年1月、下院議会は英仏海峡トンネル法案の審議に入る。だが判断は1年延期になり、建設に携わる企業が撤退を考え始めたため、建設は一旦白紙となった。法案は1986年2月に再び議会に提出され、1994年5月6日に念願の開通を果たした。

<マイアミビーチ>
ジョン・ストーンハウス議員は海岸で服を脱ぎ、海の中へ消える。

◇1974年11月、ジョン・ストーンハウスは米国フロリダ州マイアミビーチへの出張中、海水浴場で忽然と姿を消す。衣服はビーチに残されたままで、事故による溺死が疑われた。失踪にはマフィアが絡んでいるという見方や、彼はチェコのスパイだという噂もあった。1974年12月、ウィルソン首相は議会でストーンハウスの失踪に言及し、彼がチェコのスパイであるという噂を否定した。

<与党whipのオフィス>
ストーンハウスの失踪により、労働党は議席をひとつ失うことになった。失踪したまま、遺体も遺書も見つかっていないという。ボブは激昂し、残り2議席のアドバンテージを失うわけにはいかないと話す。

<野党whipのオフィス>
党首選挙の1回目の投票結果が出た。ハンフリーはアイリー・ニーヴにサッチャーの「偶然の」勝利を伝える。ニーヴは「君たちは彼女に驚かされるだろう」と予言。

<ロビー>
ジョーとフレッドが労働組合法修正案の採決を前に、4人分のペアリングの相談をしている。ドクは肺気腫でリーズの病院におり、欠席が続いているようだ。フレッドは会話の中で自由党党首ジェレミー・ソープの事件に触れる。

◇1975年10月、自由党党首のジェレミー・ソープは、かつて同性愛の関係にあったノーマン・スコットから関係を暴露すると繰り返し脅迫を受け、殺し屋を雇って銃による殺害を計画。だが、未遂に終わった。

<議場>
労働組合法修正案は否決で終わる。

<与党whipのオフィス>
労働党は補欠選挙での敗北により、さらに1議席を失ってしまった。与党が力を失い続ける中で、他の少数野党は協力しても見返りをもらえるのか疑い始めている。

◇1975年6月、ウールウィッチ・ウエストの議員が死亡したのに伴い、補欠選挙が行われる。労働党は敗れ、保守党のピーター・ボトムレーが選出された。

ボブはここだけの話だと前置きし、ハロルド・ウィルソンが辞任する予定だと打ち明ける。自由党のジェレミー・ソープは逮捕されるかもしれず、短期間に3党のリーダーが変われば各党との協力関係も危うくなるだろう。さらに労働党議員のジム・シラーズ(エアシャー)とジョン・ロバートソン(ペイズリー)が離党を考えているらしく、2人が抜ければまた「宙吊り」に戻ってしまうと危惧している。

そこに電話でニュースが伝えられる。なんと、ストーンハウスは生きていたのだ。

◇1976年3月、ハロルド・ウィルソンは60歳の誕生日から5日後、首相と労働党党首を辞任すると発表。肉体的にも精神的にも疲弊しており、60歳で引退することを以前より計画していたと述べた。実際には、1976年までには、若年性アルツハイマー病の初期段階にあることを自覚していたと言われている。
◇1974年12月、ストーンハウスはオーストラリアで生きて発見される。彼は不倫関係にあった秘書のシーラ・バックリーと共に新しい人生を送りたいと考え、偽造パスポートでオーストラリアに飛び、J・D・ノーマンという偽名を名乗って数カ国を転々としていたのだ。オーストラリア警察は偶然にも彼をまったく別人の容疑者と勘違いして監視していた。ストーンハウスはオーストラリアに帰国後、逮捕され、国外退去処分となった。帰国後はブリクストン刑務所に勾留されるが、この時点ではまだ労働党議員として残留していた。

<ビッグ・ベンのかつて監獄であった場所>
ボブとマイケルはストーンハウスと面会する。彼は21の罪状で起訴されているらしい。まだ彼を離党させることはできず、執行猶予中は党に残し、勢力が安定したら追い出すという算段だ。辞職すると言うストーンハウスに対し、ボブは1623年の決議を引用して議員は自ら辞めることはできないと話す。だが、ストーンハウスは1701年の王位継承法を引用して反論する。

<与党whipのオフィス>
ストーンハウスを引き止めることはできず、労働党はまたも議席をひとつ失った。ボブはウォルターに、ウィルソン辞任に伴う党首選挙の情勢を尋ねる。ここで名前が上がっている候補は、マイケル・フット(エブー・ヴェイル)、ジェームズ・キャラハン(カーディフ)、トニー・ベン(ブリストル・サウスイースト)の3人。ボブは複数の立候補で党が分裂するのではと危惧している。他のメンバーが出ていったあと、ボブはひそかに電話をかける(相手は候補のひとり、マイケル・フット)。

<ロビー>
ジャックはウォルターと出くわし、労働党内のゴタゴタを揶揄する。労働党はこのまま経済悪化の責任と共に消えるが、われわれ保守党が政権に返り咲く頃には北海油田の効果で経済は回復するだろう、とジャック。5年の任期を満了できるかどうかの賭け金は50ポンドになった。

◇1967年、スコットランド沖に油田が発見され、1975年11月に北海油田パイプラインが開通した。原油の生産と油田開発の投資は低迷していたイギリス経済にとって重要なカンフル剤となった。

<下院地下の射撃場>
ハンフリーはジャックから労働党の現状を聞き、あとは座して彼らの崩壊を待つだけだと楽観視する。

<与党whipのオフィス>
党首選挙は既に終わっている。ボブは辞任を決め、荷物を片付けている。彼が支持していたマイケル・フットが敗れ、キャラハンが党首となったからだ。ボブはwhipの仕事に疲れ、一議員として対等な立場として働きたかったのだと内心を打ち明ける。マイケルは幹事長を失えば致命的なダメージになるのではと心配するが、ボブは次の幹事長にマイケルを指名する。そして動揺してやって来たウォルターには、お前は優秀だが幹事長向きではないのだと話す。

◇1976年3月から4月にかけて、3回の労働党党首選挙の投票が行われる。3回目はマイケル・フットとジェームズ・キャラハンの一騎打ちとなり、キャラハンが勝利した。
◇1976年4月、労働党の院内幹事長であったボブ・メリッシュが辞任。ウィルソン派として首相の辞任にショックを受けていたところに、続く新党首選挙でも支持していたマイケル・フットが敗れるという出来事があり、これを受けて内閣から去ることを決断した。

そこに、労働党議員のジム・シラーズ(サウス・エアシャー)とジョン・ロバートソン(ペイズリー)が入ってきて、労働党を離れると告げる。彼らはスコットランドの権限委譲に関して党が結果を出せなかったことを批判し、これでは地元の有権者に顔が立たないと訴える。そして、ボブも去っていく。これで、労働党の議席数は過半数を割ることになった。

次に待ち受けるのは航空宇宙産業を国有化する法案の採決。これを通せなければ、保守党は内閣不信任案を出してくるだろう。

◇この法案は、ブリティッシュ・エアロスペース社、ブリティッシュ・シップビルダーズ社の2社を国有企業として誕生させることが目的。

<議場>
労働党議員たちが準党歌である「赤旗の歌」を歌っている。航空宇宙産業を国有化する法案の採決で勝利したのだ。そこに保守党の影の大臣であるマイケル・ヘイゼルタイン議員(ヘンリー)が現れ、儀典用の金の職杖(メイス)を振り回して抗議する。

◇職杖は君主の権威を表すもので、議会の開会や法案承認の際にも用いられる。
◇1976年5月27日、航空宇宙産業を国有化する法案の採決において、労働党政府は「ペアリング」の約束を破ったと非難され、議会は大混乱に陥った。1回目の投票は賛成と反対が同数で、議長が議長決済で反対に1票を投じた。2回目の投票でも同数だったが、1回目の投票にはいなかったトム・ペンドリー議員(ステイリーブリッジ・アンド・ハイド)が現れ、賛成に投票して可決。ヘイゼルタイン議員がこの結果に抗議して職杖を振り回し、議会は20分中断となった。この事件によりペアリングの慣習は一時取りやめとなり、政府はますます法案を通すことが困難になった。

20分間の中断中。与野党のwhipのオフィスでは、それぞれ騒動で負傷した議員の手当てをしている。

<野党whipのオフィス>
大佐ことキャロル・メイザー議員は、労働党がペアリングの約束を破ったことに激怒している。そこに議長と守衛官がヘイゼルタインと共に現れ、乱闘騒ぎに苦言を呈する。ハンフリーたちは労働党の不正行為を訴えるが、議長は職杖の神聖なる歴史や、向きを逆に置いたらダメだという説明しかしない。

<与党whipのオフィス>
ペアリングとして6人を欠席させたはずなのだが……と話し合うチーム。実はデンマークに出張中だったペンドリー議員のことを数に入れておらず、労働党側の欠席は7人だったことが判明する。ペアリングは6対6で公平だったのだし、たまたま彼が採決に間に合っただけなのだからいいじゃないかとウォルターは開き直る。

そこに保守党whipたちが説明を求めて飛び込んでくる。ウォルターらは事情を説明し、こちらに非はないと主張するが、ジャックらはペアリングを破られたも同然だと納得しない。だが、議長によれば、ペアリングは制定されたルールではなく紳士協定でしかないため、この採決を無効にすることはできないのだと説明する。

怒ったハンフリーは、金輪際ペアリングは中止だ、調整会議もなしだと言い放つ。

オフィスへ戻ってきたアンは、他の政党も今後は我々に協力しないつもりだと報告する。労働党にとっては致命的なダメージになるだろう。アンはウォルターに保守党側に釈明に行くように促す。

<ウエストミンスターホール>
ウォルターはジャックを捕まえ、釈明しようとする。ペアリングは何百年も続く伝統だ、簡単にやめることなどできないと言うが、ジャックはその言葉を受け入れない。ジャックはウエストミンスターの歴史に触れ、伝統は絶対ではないと言う。イギリス人は神と崇められていたチャールズ一世の専制を拒否し、自分たちの手で国を統治するのだと彼を処刑した。自分たちならもっと上手くやれるはずだからと……。

<ビッグ・ベン>
マイケルの目の前で突然、時計が止まってしまう。

◇1976年8月5日、ビッグ・ベンに史上初めて重大な故障が見つかる。金属疲労により部品が正常に動作しなくなったのだ。時計の鐘の音は9か月にわたり沈黙する。


−−−−−−−−−−−−−−−−第2幕−−−−−−−−−−−−−−−−
<議場>
伝統にのっとり、新議長が強制的に椅子に座らされる。

<ビッグ・ベン>
マイケルは技師から時計の故障について説明を受ける。修理のため、しばらくは時計を止めることになるだろう。

<与党whipのオフィス>
ドクが妻と一緒にやって来る。ペアリングがなくなったため、今夜の採決に向けて病気のドクも出席しなければならなくなったのだ。何度も行き来しないですむよう、議員のオフィスが彼の仮住まいとしてあてがわれた。

マイケルとアンは議員たちをどうにか出席させるため案を練っている。アイルランドで足止めされている議員のために王立空軍にヘリコプターを飛ばさせ、飛行場までの道はアルスターの警察に頼んで信号をすべて青にさせようという、とんでもない計画。

<ロビー>
ウォルターはジャックに、今夜の採決には何がなんでも議員を集めてみせると話し、牽制し合う。

<与党whipのオフィス>
議員が腹の出血を必死で押さえている。手術後でもう1日入院が必要だったが、投票のために呼び出されたのだ。そこに赤ん坊を抱いたヘレン・ヘイマン議員が入ってくる。女性議員の控室で授乳しようとしたとして苦情を受け、守衛官に連れられてきたのだ。アンはここでやればいいと言う。守衛官はなおも、赤ん坊は議員ではないのだから連れてくるべきではないと言いはるが、気にするほうが部屋を出て行けと言われ、追い返される。彼女は出産したばかりで本当は家にいたいのだが、ペアリングができない状況では、赤ん坊を連れて登院するしかないのだ。

◇ヘイマン議員は議事堂で初めて授乳した女性議員。

<ニューパレスヤード>
レスリー・スプリグズ議員が車椅子で運び込まれる。計画していたアイルランドからのヘリコプターも間に合った。

◇病人はロビーまで来る義務を免除され、規定の敷地内でうなずくことで投票することができる。
◇スプリグズ議員は重篤な心臓発作を起こし入院中だったが、採決のために救急車で登院した。

<トイレ>
ウォルターはドクが個室の中でぐったりしているのを見つける。病人の彼はスプリグズと同じ扱いでいいのだが、閉じ込められていたので「うなずき」投票はできていないらしい。投票のためにロビーに連れて行ってくれと言う。

<議場>
港湾労働規制法案の採決。ハンフリーは今回こそ否決だと自信を持っているが、先ほどの議員たちが出席し、労働党が勝利する。

◇1976年2月、港湾労働規制法案の第二読会において、労働党政府はかろうじて法案を可決させる。この法案は港湾労働者の雇用安定性を高めるためのもの。

<与党whipのオフィス>
アンはジョーが必要な手術を二度も延期していることを知り、健康を心配するが、彼は取り合わない。アンはマイケルに、自分の夢は女性初の与党の院内幹事長になることだと打ち明ける。アンはマッチョな環境で自分も男と同じように扱われたいと思っているが、マイケルは逆に、男たちはアンのようになるべきだと思っている。それが、この先も生き延びる道だと考えているのだ。

酒を飲みながら、ウォルターはドクの病状を心配する。自分たちがやっていることはフェアではないとわかっている。だが、一体どこで線を引けばいいのか。

<野党whipのオフィス>
サッチャーは現状を苦々しく思っているようだ。労働党は不利な条件に晒され、どんどん力を失っているはずなのに、決定的な敗北には至っていない。

大佐と影の教育科学大臣であったスティーヴァス(チェルムズフォード)が入ってくる。彼はハンフリーから、次の役職は影の芸術大臣だと告げられてがっかりする。

<ティールーム>
アンはオードリー・ワイズ議員(コヴェントリー・サウスウェスト)と面談し、彼女に忠告する。ワイズは投票を棄権したり、反対に投票したりするなど、党の方針に従わない姿勢を問題視されていた。だが、彼女が信じるのは自分の信念のみで、何を言われても従うつもりはない。彼女はストライキで培ったスピーチの才能を持ち、ポルトガルのカーネーション革命にも参加していた。

<委員会室>
労働党と保守党で言い争いをしているところに議長が割って入る。教育法修正案と財政法案の審議をそれぞれ同じ時間に別の部屋で行なっていたのだが、ウォルターが両方の採決にむりやり参加したことを、保守党が不正行為だと訴えたのだ。議会の規則では採決の際に部屋のドアをロックすることになっているが、ウォルターはドアが閉まる直前に駆け込み、賛成・反対同票だったところに1票入れて可決させたのだという。議長はウォルターの体の大半が室内に入っていたのなら、3/4票というカウントにして、可決だと判断する。

<野党whipのオフィス>
あとはもう、古典的な戦術で相手を長時間拘束し、精神的にも肉体的にも消耗させるしかない。フレッドがそれをソンムの戦いに例えるが、戦争経験を話し出した大佐に「どの戦争ですか?」と訊いて怒らせてしまい、後悔する。

<議場>
働く議員たち。アンソニー・クロスランド(グリムズビー)、ヒュー・デラーギー(サロック)、モーリス・エーデルマン(コヴェントリー・サウスウェスト)が倒れ、帰らぬ人となる。

<資料室>
ウォルターは内密の話があると言って、ジャックを人気のない資料室に連れてくる。ここには過去に成立した法案のすべてが保管されている。例の事件は、ペアリングの約束を破ったわけではないということで落ち着いたらしい。ウォルターは若くない議員たちの健康を考え、調整会議とペアリングを復活させてくれと頼み込む。だが、ジャックは応じない。

<与党whipのオフィス>
長時間労働で疲れた様子。議会では相変わらず保守党議員が消耗戦略を使っているらしい。保守党の妨害質問に対処するためにマイケルは奔走している。そこへウォルターが入ってきて、労働党内のスコットランド議員が反乱を考えていると告げる。スコットランドとの関係悪化にかけて「グレンコーの虐殺だ」。

労働党のスコットランド議員タム・ディーエルがやって来て、権限委譲の法案を進めるつもりなのかとマイケルに確認する。ディーエルはこの法案が党に致命的ダメージをもたらすと考え、反対の立場を示す。だが、そこにスコットランド国民党のドナルド・スチュアートもやって来て、法案を進めてくれるなら党に協力してもいいと申し出る。

法案に反対するディーエルに、マイケルは将来を棒に振ってまで党に逆らうのかと尋ねるが、彼はスコットランドとウェールズに議会ができたら、自分たちロンドンのスコットランド(&ウェールズ)議員は意味のない存在になってしまうじゃないかと言う。

<野党whipのオフィス>
この消耗戦略はやりすぎではないかとジャックが話していると、フレッドが飛び込んでくる。議場で労働党のブライアン・オマリー議員(ロザラム)が倒れたのだ。

<与党whipのオフィス>
保守党のケネス・クラーク議員(ラシュクリフ)が駆けつけ、ああいうやり方をしていた自分たちに責任があると謝罪する。オマリー議員が搬送された後、ショックを受けているマイケルの元にウォルターから電話が入る。ペアリングが復活したのだ。

◇1976年4月、労働党のブライアン・オマリー議員(ロザラム)が脳手術の合併症により46歳で急死する。

夜、ウォルターとアンが話しているとドクの妻がやって来る。ペアリング復活まで滞在させてくれたことを感謝し、引退についてもよろしくと話す。

マイケルはレジ・プレンティス議員(ニューハム・ノースウエスト)の話を聞く。プレンティスは労働党が左派の過激派に乗っ取られつつあると考えており、警告して去っていく。

アッシュフィールドとバーミンガム・ステッチフォードで行われた補欠選挙の結果が出る。どちらの選挙区でも労働党は敗北。これで過半数との差はマイナス7になってしまった。

◇1976年9月、労働党のロイ・ジェンキンズがEC議長となるために議員を辞職。1977年3月に、彼の選挙区であったバーミンガム・ステッチフォードで補欠選挙が行われ、保守党のアンドリュー・マカーイが当選する。
◇1977年4月、労働党のデイヴィッド・マーカンドの辞職により補欠選挙が行われる。結果、下馬評をくつがえして保守党のティム・スミスが勝利する。

オードリー・ワイズ議員が呼び出されてやって来る。マイケルは彼女の反抗的な態度に対して警告するが、彼女は自分の考えを曲げようとはしない。労働者階級の利益のために議員に選ばれたのに、なぜキャラハン首相は支出を大幅に削減するのか。疑問を持っているのは私だけじゃない、と言って去っていく。これからスコットランドとウェールズの権限委譲に関する審議があるが、望みは薄いだろうとウォルターは言う。

◇「Can't tell stork from butter(まるでバターかと思うほどの美味しさ)」は50年代に使われた「ストーク」というマーガリンの広告コピー。つまり、上等な酒を飲んでも違いなんてわからないので……ということ。

<議場>
スコットランド及びウェールズ法案の審議日程を決める第二読会。ウォルターの予測通り、敗北する。

<野党whipのオフィス>
保守党チームが勝利を祝っているとマイケルが訪ねてくる。ハンフリーは内閣不信任案を提出することを告げる。投票は1977年3月23日。

<ロビー>
権限委譲がボツになった今、スコットランド国民党の支持を失い、内閣不信任案は確実に通ることになる。不信任案の場合はペアリングにも応じないだろう。だが、アンは今こそ他の党との連携を探るべきだと提案する。

アンは自由党党首のデヴィッド・スティール(ロクスバラ、セルカーク、ピーブルズ)に協定の話を持ちかける。

<野党whipのオフィス>
内閣不信任案採決の日。夕方、大佐がやってきて自由党が何か会合を開いていると教える。まさか……とハンフリーは青くなる。

<与党whipのオフィス>
チームは自由党からの連絡を待っている。偵察に来たハンフリーの前で、マイケルは労働党と自由党の協定が成立したことを宣言する。これで13票分を獲得したのだ。

◇この結果、3月23日の内閣不信任案は否決になった。

<ビッグ・ベン>
修理が終わり、時計が再稼働する。

◇実際には、正式な再稼働は1977年の5月。
◇ここで流れる曲はホルストの「木星」のメロディを使ったイギリスの愛国歌「我は汝に誓う、我が祖国よ」。

<下院内の理容室>
労働党のジェフ・ルーカー(バーミンガム・ペリー・バー)が顔剃りをしているところに、ジャックが訪ねてくる。ルーカーもワイズと同じように、地元選挙区への予算を削る党の方針に不満を持っていた。そこでジャックは、君たちがこちら側につくなら、野党は予算の修正案を提出することもできると提案する。

<野党whipのオフィス>
ルーカー議員とワイズ議員が保守党チームと予算の修正案について話し、書類にサインする。ハンフリーは修正案が与党議員から出されるなんて見ものだと喜び、ジャックの仕事を評価する。

◇1977年6月。この予算修正案は彼らの名前にちなんでルーカー・ワイズ修正案と呼ばれる。当時はインフレが進んでいるにも関わらず所得税の税率が固定されていたため、労働者の賃金に占める税金の高さが問題となっていた。この法案はインフレ率に応じて控除をすることで、非課税所得の減少を防ごうとするもの。

<与党whipのオフィス>
時間が経過している。ワイズ議員はその後、ストライキに参加して暴力沙汰を起こし、逮捕されたらしい。ウォルターは怒っている。マイケルは電話を代わりワイズに20ポンドの罰金を払うか、謝罪文を書くように言う。やって来たワイズにマイケルは謝罪文を書かせようとするが、彼女は書類をはらいのけ、堂々と20ポンドを置いて出ていく。

◇1977年6月、オードリー・ワイズ議員は長時間の低賃金労働を訴えるストライキに参加。そこでアジア人女性に掴みかかった警官を殴打し、逮捕され有罪となった。

<委員会室の廊下>
深夜。マイケルと鉢合わせたハンフリーは、妥協しながら複数の党に協力を仰いでばかりのやり方を揶揄するが、マイケルは、こうやって協力し合ったほうが議会はうまく行くのではないかと話す。だが、ハンフリーはサッチャーの言う通り、皆を満足させる政治はもう終わりだと反論する。与党と野党、2党が対立するのがイギリスの政治であり、協力し合うものではないと。

そこに、労働党のレジ・プレンティス議員がジャックと共に入ってくる。彼はマイケルに離党を告げに来たのだ。

◇1977年10月、レジ・プレンティスが離党。2年後に保守党から立候補し、選出される。

呆然としているマイケルのもとにジョーが来て、アンドリュー・ベネット(ストックポート・ノース)に放送法案を支持するように取り付けたことを報告する。ベネットが鉄道オタクだと知り、彼を鉄道委員会に入れたり、新しいカーペットを用意してやったりして懐柔したのだと言う。だが、その直後、ジョーは心臓発作を起こしてオフィスで息を引き取る。

<テラス>
労働党政権になってから17人が死んだ。すべて労働党の議員。自由党との協定は解消され、再び「宙吊り」になってしまった。

◇1978年9月、労働党と自由党との協定が解消される。

<ロビー>
保守党は再び内閣不信任案を提出する。採決は1979年3月28日。

◇1979年3月1日、スコットランドとウェールズの権限委譲について住民投票が行われた。しかし充分な票を集めることができず、失望したスコットランド国民党は内閣不信任案支持派に回る。

<与党whipのオフィス>
ウォルターのもとにドクの妻から電話がかかってくる。内閣不信任案が厳しい戦いになるのはわかっているが、病気の夫を出席させるのはやめてほしいという頼みだった。

あとは何とか少数政党の支持を集めるしかない。

<下院内のバー>
ウォルターは北アイルランドの議員と話している。棄権するという議員に「とにかく来て、『ノー』に入れてくれればいいんだ」とウォルター。「『イエス』じゃなくて?」「何言ってんだ、不信任案に対する『ノー』は信任するってことだぞ」。議員たちは見返りとして天然ガスのパイプライン建設を要求する。

アンは自由党の党首と話している。協力できたとしてもせいぜい2〜3人という答え。

ジャックがスコットランドの議員と話している。保守党の要求に対し、我々の議席を確保できるなら……と応じる。

<野党whipのオフィス>
採決の日。スコットランドは味方につき、ウェールズは交渉中、アイルランドは出方がわからず、ドクが出席するかはまだ情報がない。ハンフリーはフレッドに、ドクが電車に乗るかどうか地元の関係者に見張らせるように指示する。

<どこか>
ウォルターはドクから電話をもらう。状況はどうだ? 彼は妻に内緒で、採決に出席する準備を整えている。

<ガイ・フォークスの地下室>
ウォルターは北アイルランド(アーマー、ベルファスト・ウエスト)の議員と話し、協力の約束をとりつける。

◇1605年、ガイ・フォークスとカトリック教徒の一味は議事堂の爆破とチャールズ一世の殺害を計画し、地下室に爆薬を貯蔵していた。

<どこか>
ウォルターはヘレン・ヘイマン議員に会い、出席の確認をとる。

一方、野党側ではハンフリーが夕食に出かけようとするスティーヴァスを捕まえ、今夜はどこにも行かないように念押しする。

<清掃用具室>
ウォルターは北アイルランド、ファーマナーの議員にウィスキーを渡し、出てこられないように戸棚に閉じ込める。

<ビッグ・ベン>
マイケルは社会民主労働党のジェリー・フィット議員(ベルファスト・ウエスト)と会っている。調子のいい嘘をついて騙したくはない。ただ頼む、今夜一緒に投票ロビーに来てくれないか?

<ガイ・フォークスの地下室>
ウォルターが戻り、アーマーの議員に書類にサインさせる。

<ビッグ・ベン>
フィットは「ここは、所詮"大英帝国"の議会でしかない」と言い、マイケルの頼みを受け入れない。

◇フィット議員は統一アイルランドを望む穏健派ナショナリスト。ユニオニストとの交渉に失敗した政府の北アイルランド問題への対処に失望していた。

<清掃用具室>
ウォルターは議員を閉じ込めている戸棚を開け、ウイスキーを取り替えてまた閉める。

<与党whipのオフィス>
ドクが欠席する前提で現状の数字をまとめると、賛成・反対は同数になる。アンはドクの出席を望み、それで死んだとしても本望だろうと言う。だが、ウォルターは同意できない。whipの仕事はどこで線を引けばいいのかと悩んできたが、この一線は越えてはならないはずだ。ウォルターは考えがあると言って部屋を出る。

<野党whipのオフィス>
ウォルターはジャックを訪ね、病気のドクのためにペアリングを依頼する。だが、ジャックは保守党の議員が欠席すればサッチャーから処分を受けるとわかっている。受けられるわけがない。それでもウォルターは、良心を持った人間として、ペアリングという紳士協定を重んじて、どうか頼むと言い続ける。

しばし考えた後、ジャックは自分がペアの相手として棄権すると申し出る。唖然とするウォルター。

他のやつらは内閣のポストや党首の座を望んでいるが、自分はwhipという立場で「機関室」にいることを心から楽しんでいた。実のところ、「人」に依存しないほうがこの国の民主主義はうまくやっていけるんじゃないかとさえ思うんだ。人は病気にもなるし、心変わりするし、誰かに入れ込んだり失望したりするし、自分の立場も望みも忘れてしまう、そういうものだから……。

ウォルターはこの話はなかったことにしてくれ、2人だけの秘密だと撤回する。ジャックはそれを受け入れ、「君(労働党政権)より長生きするよ」と言って50ポンドを賭ける。

<議場>
内閣不信任案は、わずか1票差で可決する。

<与党whipのオフィス>
落ち込んでいるマイケル。ウォルターはマイケルとテイラーと肩を組み、慰める。

<ドクの家>
ウォルターがドクを訪ねる。勝てたのか? と訊くドクに結果を告げる。1票差。ウォルターはドクに責任はないと言ってなだめるが、彼は泣き出してしまう。

<与党whipのオフィス>
1979年の総選挙で保守党が勝利し、このオフィスは再び保守党のものになる。
ジャックがドクの死去にお悔やみを言うと、ウォルターは50ポンドを差し出す。ジャックは遠慮するが、「結果が逆なら俺はもらってた」と言われ、しかたなく受け取ることにした。ジャックはウォルターを飲みに誘う。「マイケルは?」「いや、いいんだ。彼には彼で、行くところがあるから……」

◇1979年4月2日、内閣不信任の可決から数日後に「ドク」ことアルフレッド・ブロートン議員が死去。
◇1979年5月3日に総選挙が実施され、保守党が339議席を獲得して勝利(労働党は269議席)。マーガレット・サッチャーが首相に就任し、ジョン・メージャー政権を経て1997年まで保守党政権が続く。

<ビッグ・ベン>
マイケルは時計を見つめている。重なるマーガレット・サッチャーのスピーチ。

分裂のあるところに調和を。
誤りのあるところに真実を。
疑いのあるところに信頼を。
絶望のあるところに希望をもたらせますように。

◇1979年5月4日、当選後、初めて首相官邸を訪れたサッチャーが記者たちの前で語った言葉。「フランシスコの平和の祈り」からの引用である。

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