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2019年配信Netflixオンリー映画ベスト10

Netflixだけで観られる映画のベストを出すようになって3年目になりました。余り観られてないと思っていた今年も120本弱観ていて(習慣化の恐ろしさ)、なんだかんだこの3年で観た作品は350本くらいになりました。もちろん配信された作品を全て観ているわけでないのですが、ここでしか観られない映画が最低でも350本はあるって凄くないですか(実際には配信停止の作品も含まれていますが)。ですが、日々追加される中で作品はどんどん埋もれていってしまいます。このベストが皆様のNetflix鑑賞の一助になれば幸いです。
 
「今」の映画とつながっていくには劇場鑑賞も大事だけど、いつでも観られるNetflixがかなり大きな役割を果たすはず。だからこそ、公式がただ配信を始めるだけでなくもう少しきちんとしたガイド的なものを作って欲しいなという気持ちも強まっています。自分で探すがな。大変なのよ。マイリストも多すぎて。

ちなみにこのベストは「観るべき作品」を挙げたものではなく、「ひとりの人間が今年好きだった作品」を挙げたものです。これが入ってないあれが入ってないというのも、観たけど好みじゃなかったから……ということになりますので申し訳ありません。あれもこれもそれなりに観てはいるんですよ。それではベスト10と各順位の作品と何か関連するもしくは同率順位な10作、後次点10作の30作紹介の構成でお届けします。今年も長くなりますがお付き合いください。

10.リベンジャー 無敵の復讐心

【10】リベンジャー

悪いやつらが隔離されてる島があるぞ!そこにひとりの男がやってきた!男は後ろ手で拘束されてる!そこに悪そうなやつがきたぞ!さあ!どうする!という状況で足しか使えない主人公が見せるアクションを観た瞬間に、これは本気でやってる作品だということが一発で分かる冒頭。そしてその予感通りに一対多数の場面でもとにかくアクションがキレにキレてる。話は現代にそんな島ありえる?という底抜け設定通りなとこもあるのだけど、主人公を演じるブルース・カーンの韓国発香港経由ハリウッド仕込のアクションだけで元が取れる。こちらは韓国人監督の作品。

今年のNetflixは色々な地域を舞台にしたアクション映画がありました。『LEAL』(アルゼンチン)、『PASKAL』(マレーシア)、『テロとの戦い』(エジプト)などなど。全ての出来がいいかどうかは別にして、これだけ多様な地域で当然ながらアクション映画は作られているということは嬉しくもあります。世界がアクションを映画を作れば作るほどとんでもない何か(『ザ・レイド』のような)が出てくるはずだから。

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誘拐された娘を救出しようと必死になる母は元暗殺者だった。という設定で想像できることから大体外れない。だけども、とにかく主演のゴ・タイン・バンのアクションが凄まじい。一方的に殴るのではなく傷を負いながらそれでも殴り勝っていく様が本当に強い。ジョン・ウィックワールドにこの人出して欲しいレベルで動きに動く。ベトナムから参戦を。

9.マリッジ・ストーリー

【09】マリッジストーリー

不満は勿論あるが相手を決定的に嫌える訳ではなくまだ愛おしさも残っているけど、ふたりが完璧にひとつだった「あの頃」には戻れないし、一緒にいないことこそふたりが幸せで穏やかに暮らしていけるであろうことを分かっている夫婦の在り様。子供の親権争いを分かりやすい対立が生じる泥沼として描かない真摯さに宿る、「離婚」ではなく「結婚」の物語の結末。

監督のノア・バームバックは苦手寄りな監督だったのだけど、『ヤング・アダルト・ニューヨーク』を観た時に「もう若くはない」という事実に対して何か明確な答えを出すのではなく、これからも続いていく現実として描いてる点に優しさを感じた。そして、この作品も「今は離婚した方がいい」を描きながら、3年後5年後10年後いつか復縁するかもしれないし、一生別れたままかもしれないし、それは観てる観客だけでなく本人たちですら分からないように描いているようで。その象徴としての結ぶことも解くこともできる靴紐。

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幼馴染の有名シェフと売れないミュージシャンが再会したらいい感じになって……。ふたりがひとつになって暮らせば当然起きるライフスタイルの変化を描きつつ、素直になるの大事だよねを描きつつ。結婚というゴールに至る前にうやむやに出来ないことの確認作業も。そして、え?これに出るの?しかもこんな使い方で?なキアヌ。

8.ダンプリン

【08】ダンプリン

大好きだった叔母が体型のせいで出場を諦めたミスコンに私も出てやる。太ってる私のことを恥に思ってるミスコンで10連覇した母はどんな顔するだろう。という思春期と反抗期の意地で出場したミスコンの過程で、友情のかけがえのなさと何が自分らしいのかという気づきを得る物語。そしてその描き方のもう今はこの水準でないとねという現代性。『パティ・ケイク$』でも主演で輝いたダニエル・マクドナルドは本当に応援したくなるし、友達になりたい感じを出すのが上手い。

ミスコンという場に「そぐわない」とされる体型の主人公(と友人のひとり)が出場に向けて奮闘するのだけど、そういう子がミスコンに出るということの描き方が過剰すぎない自己肯定をベースにしていて地に足ついてたと思う。後、主人公に好意を寄せる男の子とどうなっていくかも「そうそう。葛藤のためのシーンなくていいよ」というスマートさ。監督は『キューティ・コップ』なので流石に素敵。

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少年院で出会ったセラピードッグに会いたくて脱走した少年。仕方なく彼を助ける羽目になる兄と始まる愛おしい犬探しと余命幾ばくもない祖母を地元で死なせてやろうという二本立てなロードムービー。上手くいってないように見える兄弟の交流を経てのラストシーンは沁みる。そして、少年が自分の殻から外に目を向ける物語としても爽やかな後味。

7.FYER 夢に終わった最高のパーティ

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ネットでも話題になったフェスが失敗するまでのドキュメンタリー。もうどうやったってこれはダメに決まってるというラインをとうに超えてるのを自覚しながら動き出したイベントを止められず、実態とかけ離れた虚像で盛り上がる外部を知りながら、己が持ち場だけは守ろうとする死んだ目の人間を見るのは辛い。時に酷すぎて笑いもするけど。過程が大事というか過程しかないので、このイベントが動き出した時から目をつけてたプロデューサーの慧眼。

企画会社社長のお前の脳味噌どうなってんだ?という、何ひとつまともに出来てない悲惨な現状に対する認識の低さには引くわけですが、ハッタリかまして夢見させて金巻き上げる入口はよくできてる。特に金が余ってる層がSNSで自己顕示欲満たせるイベントを提示するという目の付け所だけはは上手い。でも、スタッフの絶対にまともに運営できないイベントになると分かってても止まれない姿は地獄だし、サラリーマンの端くれとして他人事ではなかったよね……。

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15歳で初出場のアマ大会で優勝し翌日のプロ大会でも優勝、反政府軍に捕まるも生還、登攀の命である人差し指を切断するもその後次々記録更新、天才パートナーを得て人類未登攀の900m最難関コースへ。という編集が盛りすぎ却下する人生を歩む男のドキュメンタリー。彼でさえ命綱をつけているコースを命綱無しで登る男がヤバいという点で、これを観てからアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞作『フリーソロ』を観るといかに頭のおかしいことやってるかも分かるという補助線にも。

まだまだ他にも(次点枠1)

フラクチャード:怪我をした娘を病院に連れていくと彼女は姿を消してしまう。そして、付き添っていた妻も姿を消す。一体この病院で何が起きているのか。伏線を張りつつアンフェアにならないように観客の興味をリードしながら、実はこうでしたの釣瓶撃ちになる終盤はとてもスリリング。何気なくこういう作品を観られるのは嬉しい。

無人島つれていくなら誰にする?:それぞれが人生の転機を迎えている二組のカップルが家飲みをしながらタイトル通りの質問で盛り上がる。他愛のない会話のはずが次第にそれぞれの抱える秘密が明らかになっていく。ミニマムな人間関係の中でさえ、人に言えないあれこれってあるよねの描き出しがよい。屋上のシーンがよかったなあ。

ブラック・ゴッドファーザー:長きにわたってショービズ界に君臨するある黒人を扱ったドキュメンタリー。有名な黒人俳優やアーティストがこぞって「ビジネスを始めるなら、ビジネスに困ったら、彼に頼る」という存在の大きさには驚くが、彼の言うべきことを言いやるべきことやるだけというスタンスが余計に説得力がある。

クロース:ダメ男と心を閉ざした男の友情から始まる「善く生きること」の物語。説教臭くならないよう描きながらみんなお馴染みのサンタさんがどう誕生したかを描く。他者に対する向き合いや善意の描き方、そして心の傷の克服に含まれる大人向け目線。サンタが来ると鳴る鈴の音響くラストシーンの切ない後味にはしんみりしてしまう。

本当の僕を教えて:事故で記憶喪失になった男の為に双子の兄弟が語った家族の歴史が偽りであることが明らかになり……。本当は何が起きたのかというミステリー的な興味を持続させながら、記憶があることが果たして本当に幸せなのか、そして優しさとは何なのかも考えさせられる。そして、よくぞここまで対象から信頼を得て踏み込み撮ったなという終盤。凄かった。

6.ロシアン・ドール 謎のタイムループ

【06】ロシアンドール

何度死んでも誕生日の夜に戻ってきてしまう女の答え探し。映画ではなくドラマだけど、8話3時間半一気見推奨なので1本の作品として。死を繰り返す過程で見えてくる景色を少しずつ変えてくるのが上手いし、途中で自分と同じ状況らしいキャラが登場することでより先が見えなくなる。どうしたらループから抜け出せるのかの答えがをロジックではなく倫理で抜けていくのも新鮮だし、興味を持続させる展開も上手い。何を言われても折れず頭を使いまくるヒロインのキャラも最高。

今の自分のままではいられないということがきちんとループの解決策に直結してることはフレッシュだし、それを象徴するラストシーンが本当にお見事。呆気なく死ぬこともあるけど、世界は多様な可能性に満ち満ちていてその中でどの選択肢を選ぶかは自分次第なのだということを、丁寧に優しく明るく描いたことで生じる前向きな後味。

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友達と自作でタイムマシーンを作ってしまった少女が、警官に射殺された兄を救うために何度も過去へ。だけど、何かをすればするほど戻ってきた現在が変容してしまう。この変容が何をしても無駄という泥沼感があって結構絶望的。それでも前に進む彼女が文字通り走り出すラストシーンが熱い。

5.コカインを探せ!

【05】コカインを探せ

大量のコカインが埋まってるいるらしい場所を知ったおじさんが始める余りにも無邪気な宝探しの顛末を現在から振り返ったドキュメンタリー。違法薬物を手に入れようとする話にも関わらずおじさんが余りにも善良かつ普通であることに起因するゆるゆるな話の成り行きに加え、本人出演なのにキメキメな映画的な演出だから最初はモキュメンタリーだと疑ってた。それくらい「バカなの?」「普通か!」とツッコミ何度も笑った。気軽に観てるだけで優しい気持ちになる。おじさんは結構な事態に巻き込まれてるのだけど。

埋まってるコカインを手に入れて儲けたいって話なんだけど、売る伝手がないから頼った売人(ちなみにこいつも本人出演)に手に入る予定の半分を要求されて了承してしまう時の理屈が「だって寝てるだけで売れるんですよ」という欲のなさには笑うしかない。今まで観た大量の麻薬を巡る作品の中でも、本作の主人公が現実なのに一番無欲という非現実感。だけど、最後に残る司法を巡る後味にはちょっとゾクっとした。

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映画ではないけど3話3時間で完結するので一本のドキュメンタリーとして。子猫を殺す動画をアップしたクズの正体をSNSで繋がった善意の人々が追う。だが、彼らを嘲笑うようにヒントを残しながら犯行をエスカレートさせる犯人。事態の推移の怖さ、素人探偵達の特定スキルの高さ、犯人の得体の知れなさが相まり3話3時間一気見必至のドキュメンタリー。犯人の仕掛ける映画にちなんだあれこれによって、かえってフィクション感が増してしまっていたのが印象的。

4.6アンダーグラウンド

【04】6アンダーグラウンド

この画像頭悪いよね。主にカーチェイスで続く狂気の冒頭20分を経て、高層階というシチュエーションと無駄に豪華で華麗な美術の中で進む美しい銃撃戦に、豪華客船で炸裂する全部入りなアクションシーンの異常な長さと発想。ランタイムの半分はアクションかもしれない。イカれてる。熱を出してる時に観ていたので幻だったんじゃないかと思ったくらい。今年はNetflixの劇場公開案件何本かあったけど、これを劇場で公開しないのは本当に損失。

『バッドボーイズ』路線に戻ってきた感じがするけど、同時に『ペイン・アンド・ゲイン』の素人考えで無理をしてしまうところ、『13時間』のとにかくやるしかない状況に生じる無常観もあり、トランスフォーマー以外のベイ作品の集大成かもしれないとも。だからこそ劇場でやるべきだったし、集大成で話がこれか……感もあるのだけど。マイケル・ベイのこういうド派手なアクション映画でさえ配信製作ということに対して、色々考えてしまう。

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本当は同率4位に入れたかった枠。元特殊部隊員が麻薬王の金を強奪するが、奪ってからのサバイバルこそ見どころでもある。ベン・アフレック、オスカー・アイザック、チャーリー・ハナム、ペドロ・パスカル、ギャレット・ヘドランドの五人を揃えただけで絵面は完璧なのだけど、強奪シーンでの作戦を遂行するプロ感には痺れたし重い荷物を持ちながらのサバイバルの大変さも魅せる。金を手に入れてハッピーになるために始めたはずが、悪化する事態のせいで生じる虚しさは流石『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』の監督。

まだまだ他にも(次点枠2)

アウシュビッツの会計係:現状すでに年老いた元ナチをどう裁くかを描くドキュメンタリーの中心にいるのは91歳の老人(それでも生存してるギリギリのライン)。彼の裁判が開かれるまで如何に元ナチ達が裁かれなかったか、裁判で彼らが何を言いどう振る舞ったのかを積み重ねが効いてくる。同じ問題に対し赦そうとする人間もいれば赦せない人間もいる、その難しさ。ただし、パレスチナを出さないということは構成的に結構問題だとも。

シャフト:20年近く経過しあのシャフトが帰ってきた。だけど色々な点で当時のノリはもう「時代遅れ」になってる中、90年代アクションヒーロー的マッチョな行動を取る父に対して現代的なPC的ツッコミを入れる息子という、「もうただ作り直せないからこういう方向で」になってるのは正しい選択だった。直前に観た前作も「ちょっとかっこつけすぎだよね」の自覚はあったと思うのだけど、今観るとコメディに近いかもと思ったので、この方向性でよかった。でもラストはしっかりかっこいい。

パーフェクション:個人的にはそれほど好きではないのだけど、それでもこうなるんかという驚きがあったので。中国で知り合ったふたりのチェリストの旅がこんな結末になるのかという。でも、やっぱり展開のための展開というか、結末に持っていくためにかなり強引なことしてるのが気になる。でもやっぱり今年Netflixで観た中で上位で驚かされたし、観て損はないと思います。好きになるか嫌いになるか分かれると思うけど。

ユニコーン・ストア:思い通りにならない日々を過ごす女性の元に届いた欲しいものがなんでも手に入る店からの手紙。ずっと欲しかったユニコーンを手に入れるべく彼女の日常が動いていく。「大人だけど大人になる」ではなく「既に大人であることに気づく」物語だったのがひとつ前に進んだ感じで新鮮だし、こういう作品を初監督作に選ぶブリー・ラーソンの優しさが感じられるようで。

ザ・ランドロマッド:事故で夫を喪った未亡人が保険金の支払いに疑問を抱き調査を進めると……。お金の話は観ているみんなに関係があって逃げられなくて、あの流出したパナマ文書にだって繋がってるよをソダーバーグの異常な手際でスルスルと。どんどん登場人物が変わっていく中、通しで登場するゲイリー・オールドマン&アントニオ・バンデラスのコンビのシステムに穴があるからやったけど大きくなりすぎたのは知ーらないな軽みが妙によく。

3.ロマンティックじゃない?

【03】ロマンティックじゃない?

頭を打って意識が戻ったら大嫌いな(だけど詳しい)ロマコメワールドの主人公に。お馴染みの曲と共にジャンルあるあるな展開を繰り返しながらヒロインが「こんなロマコメみたいな展開はダメ」って正気に戻ろうとしたりして笑わせてくるのだけど、その中でヒロインが出す結論がとても今だった。そして、ラストシーンは正にロマンティックな展開でキラキラだった。これから仕事が待っている日曜の夜に気軽に楽しく観るのにオススメ。

レベル・ウィルソンのキュートさとアダム・ディヴァインのキュートさの相乗効果に加えて、美男美女枠のふたりも目に優しい。キャスティングの絶妙さもよかった。レベル・ウィルソンのその気じゃないけどその気になってしまう演技もよかったのだけど、2018年のベストでも挙げた『理想の男になる方法』といいほんとこういう過度にふざけず真摯なアダム・ディヴァインは光る。

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187cmの長身に悩み服装も地味で本来の自分を隠す少女。自分より高い身長の美男子留学生と子供の頃からずっと想いを伝えてきた自分より背の低い幼馴染の間で揺れる乙女心。誰もが分かってる結末に向かうのだけど、「キャー!」って声を上げたくなるくらいキラッキラのラストシーンには癒やされる。

2.アイリッシュマン

【02】アイリッシュマン

ジミー・ホッファ失踪事件の真相を軸にして、殺し屋フランク・シーランの人生を描き出す。監督も俳優もこれが遺作になってもいいくらいの素晴らしく枯れた空気感に貫かれてた。作品としての良し悪しを超えて、今のスコセッシの、デ・ニーロの、アル・パチーノの、ジョー・ペシの老境を迎えて人生の総決算を見せつけられてるような感じだった。娘/時計/親友を見るデ・ニーロの全てを飲み下してしまった男の顔、優しさと傲岸さの同居したアル・パチーノの顔、優しく義理堅くだけど現実に対しては冷徹なジョー・ペシの顔と本当老境を迎えた俳優たちが輝いていた。『ヒート』を経て(『ボーダー』はさて措き)ふたりの名優が演じるシーランとホッファの友情は本当に切なく侘び寂びの境地だった。

スコセッシのフィルモグラフィ的に『グッドフェローズ』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のようにイケイケでのし上がる様を描くと思っていたのだけど、拳銃を捨て続けるシーンに象徴されるように物語に山も谷も設けず一定のトーンで進むのが逆にシーランという男の人生の侘しさを描き出していた。実はこの作品をNetflix限定ベストに入れることを最後まで悩んでいた。初見が劇場だったし、その劇場という空間だからこそ豊かな物を観て受け取れたという実感があったので。だけど、スコセッシの新作、それも裏社会物の新作が普通の劇場公開では観られずNetflixが無ければ製作されることもなかったかもしれないと考えるとやはり外すことはできなかった。

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貴方と私は考えが異なる。だけど、私は貴方と対話したい。ピアノを弾きながら。ピザを食べながら。互いが抱える過去への悔恨を「懺悔」しながら、神に仕えるという目的のため純化された何かが光る。というおじいちゃん達の微笑ましさ全開の至極のラストシーン。もちろん両教皇共に色々と問題は指摘されているしどこまで実話か分からないのだけど、ふたりの男が教皇/キリスト教徒/老人という立場を行き来する物語をメイレレスが創りたかったんだろうなと思うと。コンクラーベのシーンで流れる音楽のポップさにそれが出ている気がする。

1.パドルトン

【01】パドルトン

下の階に住む君は僕の親友だ。一緒にふたりだけのゲームして、一緒にピザ作って食べて、一緒に映画観て、おやすみで終わる週末を過ごす。だけど、病魔に蝕まれた大事な君は自分の命の期限を決めてしまった。僕はそれを尊重するよ。でも……君が死んでいなくなるのは耐え難いよ。なお話。Netflixでしか観られない映画350本は観た人間が選ぶ現状ベスト作品だし、何度も観返すことになるはずの本当に愛おしい一本。

彼らがアラフォーくらいなのが絶妙だった。若くはないけど死ぬには早すぎるし、この年で一緒につるめる友達って中々できない。そういうふたりが子供のように無邪気な姿が余計に切なかったり。大事な友達と過ごす残り少ない時間は何気ない日常ですら思い出になってしまうのを観てる側にそっと伝える冒頭10分だけでも素晴らしかった。君と親友になれて幸せだったよを言葉にしない分、伝わってくるのが余計に泣けもして。

そして、ふたりの友情には「愛」がある。それは恋愛感情でなくても大事な人間を想う時に生じる感情とも言える。彼らの関係は親友同士だけど、同性の友人でも異性の友人でも恋人同士でも夫婦でも大事な存在が「生きることより死を選ぶ」状況に直面した時に何ができるか、そしてどれだけ考え抜いても相手がこの世から消えてしまうことに納得なんてできないし寂しいし辛いという想いをとても丁寧で自然な形で描いていた。誰もが誰かとずっと一緒にいられないことは分かっているけど、それでも大事な存在がずっと生き続けていて欲しいという願いの切実さと共に、相手を喪ってしまっても続いていく人生に対する目線の優しさまで描ききっていた。

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引退した芸能マネージャーと50年前に大舞台に立つことを放棄した男が老人ホームで再会して始まる人生の打ち上げ花火に向けたロードツアームービー。老いという現実を無視もせず、だけど生きることに対する前向きさで突っ走るとても素敵なおじいちゃん映画。チェビー・チェイスとリチャード・ドレイファスの軽やかな掛け合いと真摯さの光る対話のどちらもよかった。老人のトリップ描写という中々にサイケなシーンも光ってた。

おわりに

皆さんいかがだったでしょうか。最後まで読んでくださってありがとうございました。個人的に今年のランキングに不満な点があるとすればそれはNetflixオリジナルではない作品が少なかったこと、そしてアメリカ映画が多かったことです。確かに観てる数も少ない(インドと地味にアラブ勢の作品も増えている)のもあるのですが、今年はほぼオリジナルだけでランキングを組むことになったし、何よりそれだけ今のNetflixがオリジナル作品の製作に力を入れまくっていることの証左だったのかなと思います。それにアメリカの映画やっぱり好きなんだなと確認した一年にもなりました。後、日本オリジナルの映画も来年は色々な監督をフックアップして欲しいなーと思います。ライブ除くと日本配信始まって多分1本しかないですからね。

来年はかなり生活環境が変わるので劇場鑑賞も今年の半分くらいになると思うと、劇場に観に行けなくてもNetflixで2020年の映画と繋がることができる(だろう)というのは「取り残されてない」気持ちでいられる安全弁になる気がします。今年は例年以上に凄い作品を繰り出してきたNetflix飛躍の一年だったと思うので、来年に希望が繋がるし安心もできました。

最後に2017年のランキング2018年のランキングのリンク挙げますので、この中から観る作品を探す参考になれば幸いです。皆様の正月が豊かなNetflixライフになりますように。

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