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たまごのたび

リッチーが初めて嘔吐したのは、生後8ヶ月のときだった
朝ごはんにスクランブルエッグをひとくちふたくちあげた直後のこと

よく例に出てくるけれど、まさにマーライオンのように何度も何度も吐くので
これはただごとじゃないと、ほんとうに焦った
床にひろがる嘔吐の池、本人もぐしゃぐしゃ
そもそも嘔吐自体まだ経験がなかったし、何から手をつけたらいいかわからなかった
これがもし感染性の胃腸炎とかだったらまずいので、床や拭けるところを拭きつつ本人を抱っこ紐に入れ、小児科に電話、したんだったろうか
とにかく家を出て、思いつく最善の動きで動きながら、小走りでかかりつけに向かった
小雨が降っていたような気がする、
床を掃除しているときにうっすら、あ、もしや卵?と考えていた
小児科へ向かう道中も抱っこ紐の中でたびたび嘔吐するリッチー
たぶん、卵のような気がする、、だってスクランブルエッグ食べた直後すぎるもの、、
スクランブルエッグの火入れが良くなかった?
離乳食が始まってしばらくして、固茹で卵の卵黄耳かきひと匙から始め、しばらくしたら固茹で白身を少しずつ始めていたところだった
固茹での白身って冷凍できないから(卵黄はできる)、毎回新しくゆで卵を茹でるのって正直大変で、そろそろスクランブルエッグとかどうかしら、それ食べてくれたら助かるなぁ〜、なんて気楽な感じで食べさせてみたのだった
火入れがあまいのはよくないので、しっかりしっかり焼いたつもりだったんだけれど、足りなかった?

30分近くかけてようやく小児科にたどり着いた
そのころには嘔吐もおさまっていたリッチー
歩きながら電話で経緯を伝えておいたので、すぐにアレルギーの対応をしてくれた
嘔吐は治まっていたが、全身を見てみると一部に発疹が出ていて、
「うん、これはやはりアレルギーだね」
と言われた
採血をして検査してみましょう、お母さまは一度診察室の外へ出てください
(なぜ外へ?と思ったかた。これは後日また別の機会に知ることになるのだけど、子供が採血などの嫌な処置をされて泣いているようなときに親が近くで見ていると、見ているだけで助けてくれない、と恨まれる恐れがあるからなんだとか。それよりは処置を頑張って外へ出たときに親が頑張ったね〜!と褒めてくれるほうが子供の心理にとって良いそう)

その日は2時間ほど院内で様子を見てから帰宅
24時間は自宅でもよく様子を見ておいてくださいとのこと
卵を食べさせるのは検査結果が出るまでお預けとなった

1週間後、結果を聞きに行く
卵白クラス3
それなりに高い数値だそう
卵黄は大丈夫でした
卵白は火入れがしっかりできればできるほど、アレルギー反応を抑えられる
スクランブルエッグはどうしても中心部が半熟になりやすい調理法とのこと
すごく念入りに加熱したとしても均一に火が入りづらい
卵白アレルギーの子にとって生卵や半熟は、しっかり加熱した卵の何百倍もアレルギーを起こさせる食物である
当分は固茹で白身でいきましょう

この日から、リッチーの長い長い卵の旅が始まった

20分以上茹でた固茹で白身を、これまで食べられた量までは食べられるから、まずはその量で半年くらい続けていきましょう
量は増やさず、でも食べ続けることが大切です
食べるのをやめてしまうと、身体が慣れることができず、大きくなっても改善しない恐れがある
卵白のアレルギーはアレルギー食物の中でも、身体が慣れれば慣れるほど食べられるようになっていける食材です
大変だけど、毎日続けていきましょう
半年後、今度は卵白の1/32を食べられるかどうかの食物負荷試験をやりましょう

これまで食べられた卵白の量など、実際のところ耳かき3匙くらい?だったのだけど、それを刻んでご飯やおかずやバナナヨーグルトに混ぜて食べさせ続けた
そもそも全然ちゃんと食事してくれなくて食べさせられない日もあった
それでも諦めずに続けていった

タンパク源として卵をあげられない日々は大変なことも多かった
おやつも、ボーロとかあげられないし、パンなどにも気を使った
家で使うマヨネーズも要注意、マヨネーズは生の卵白だから危ない
卵を使わず調理すると、味気なかったり柔らかく仕上がらないことも多かった、パンケーキとかね
ハンバーグとかも外食で食べさせることはできない
外食の時は、親の食事からわけて食べさせることはほとんどできず、いつも中身が記載されている市販の離乳食ボックスを食べさせた
リッチーがあたらしい食材や料理に慎重な部分があるのは、もしかしたらこういう時期の私の神経質な姿勢が影響しているのかもしれない

こうして、いまも、リッチーの卵の旅は続いている
小学生になったとき、みんなと同じ卵の量を同じ調理法で食べられるように
その日を目指して、いまも、こつこつとやっています
1/32食べられるようになった負荷試験のお話はまた今度書こうと思います

ちなみに、シナぷしゅという民放初の赤ちゃん番組があるのですが(幼児たちに大人気)、リッチーはその番組内の"たまごのたび"というコーナーが大好き
卵に可愛い顔が描いてあって、ニッコリ笑ったり、困り顔したり、チョコチョコ動いてころがったり並んだり、そしてフライパンの上で割られて生卵が出てきたり、茹で卵になったり、オムライスになったりする実写アニメーション
そんなに笑える?というほどゲラゲラ笑います

シンプルなお顔がかわい

今は万がいち生卵が割れると怖いので(触ると激しいアレルギー反応が出る恐れがある)、加熱前の卵を直に触らせたり見せたりも全然できないけれど、リッチーは"たまごのたび"を見て卵の様々な変身を楽しんでいます
いつかリッチーと一緒に、卵を使った料理ができたらいいなぁ


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