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4曲目: Charlie Christian「Seven Come Eleven」とジャズれない腕前について、など

曲名: Seven Come Eleven
アーティスト: Charlie Christian (Benny Goodman Sextetとして)
作曲: Benny Goodman、Charlie Christian
初出盤の発売年: 1940年
収録CD:『ザ・ジーニアス・オブ・ザ・エレクトリック・ギター』(SICP 241~4)のディスク1
同盤での邦題: セヴン・カム・イレヴン
曲のキー: Ab(変イ長調)

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1980年代前半、おそらくNHK-FMだったはずだが、ジャズ・ギター特集の番組を聞いた。
番組名は...失念してしまった。DJが誰だったかも覚えていない。いソノてルヲだったかもしれない。あるいは、青木啓だったか。

それより遡ること数年前、中学の頃には既にチェット・アトキンスやジャズ(あるいは、当時でいう「フュージョン」)を聞いているマセた?同級生が若干名いた。彼らにはアル・ディ・メオラやアール・クルーのLPを借りたこともある。そこに収録されていた曲(「スペイン高速悪魔との死闘」や「キャサリン」など)についても、機会があれば書いてみたい。

そんなわけで、当時またもやジャズに興味が湧いてきた&ギター練習中の身だったこともあり、この番組をエアチェックしようと考えたわけである。

番組で最初に紹介されたのがチャーリー・クリスチャンで(妥当なチョイスだと思うが、当時の筆者には当然分からない)、自分の記憶にちょっと自信がないのだが、おそらくベニー・グッドマンのコンボで「Seven Come Eleven」、「Air Mail Special」、「Flying Home」、「I Surrender, Dear」などがかかったように思う。

放送終了後、早速録音したカセットテープを再生し、「Seven Come Eleven」のテーマ部分を耳コピしてみた。要は何度も聞いてメロディを覚え、該当するギターの音を探していくのである。
時間はかかったが、なんとか音がとれたので、今度はテープに合わせて弾いてみた。しかし、何度トライしてもまったく弾けてる気がしない。
テープを止め、ゆっくり弾いて徐々にテンポを上げ、「これで準備OK」と感じたら再度テープをかけて弾くのだが、やはりまるでリズムが合わない。
そんな調子で数日頑張ったが、あえなくギブアップした。しかも、ソロではなく、テーマのところで。
ちなみに、ベンチャーズの「Caravan」とかアール・クルーの「Dr. Macumba」なども同じように感じた記憶がある。

これに懲りて、ジャズは自分には向いてないとアッサリ見切りをつけることにした。
いや、それはウソで、これまで真剣に練習した時期が何回もある。そして、そのたび心を折られた。(笑)

この番組、翌週以降は聞かなかったのだが、今考えると早計だったなぁと思う。
おかげで、バーニー・ケッセル、ジョー・パス、ジム・ホール、グラント・グリーンといった人たちの演奏を聞き始めたのは、随分後になってからだ。

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「Seven Come Eleven」というタイトルは、おそらくサイコロ・ゲーム(というか博打)から来ている。「7か11、出ろ!」という意味だと思うが、合ってるかな?

曲は、ニック・ファトゥールのドラムスから始まり、次にアーティ・バーンスタインによるベースのリフが続く。そして、チャーリー・クリスチャンが作ったと言われるテーマを本人、ベニー・グッドマン(クラリネット)、ライオネル・ハンプトン(ヴィブラフォン)の3人で弾く。

テーマの第2メロディーはクラリネットがソロで奏で、チャーリーはバッキングにまわる。コード・カッティングはまだ機械的で、同じコードを1小節につき4回、ベースに合わせて「ジャッジャッジャッジャッ」と均等に刻むスタイル。
このリズム・ギターのパートだけは、筆者にもある程度なら弾ける。それくらいシンプルだが、なんせ1939年の演奏なのだ。今の人達がやるようなギター・コンピングはさすがにまだやってない(はず)。

ソロはまずチャーリーがとる。ソロの終わり近くでリズムを崩して弾くところ(1分10秒すぎあたり)など、余裕綽々である。アル・ディ・メオラやスティーヴ・ヴァイなどを聞いても、驚いたり感心することはあれど妬んだことは一度もないが、なぜかチャーリー・クリスチャンのギターには口惜しさを感じる。我ながら不思議なのだけれども。(笑)
それほど超絶技巧には聞こえないので、「これなら自分にも弾けそう」などと、愚かにも一瞬考えてしまうからかもしれない。

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今回の記事では脇役の扱いになってしまうが、ライオネル・ハンプトンとベニー・グッドマンのソロもよい。特に前者のヴィブラフォンは、チャーリー&ベニーの二人が短いリフを繰り返すあたりから妙にソワソワした感じがする。そこが大好きだ。

そうそう、ベニー・グッドマン・セクステットなのだから、6番目のメンバーがいるはずである。
CDのクレジットには、ピアノ:フレッチャー・ヘンダーソンとあるが、「#001 Tangled Up In Blue」のところで書いたオルガンと同様で、筆者にはピアノの音が聞こえない。
前述のベースリフの時に別楽器によるユニゾンのフレーズが聞こえるような気もするので、これがピアノの音かもしれないが、どっちにせよこの曲では聞かせどころが全然ない。

エンディングのテーマ演奏は、今の耳で聞くと少し怪しい箇所がある気がしなくもないが、大雑把な打ち合わせだけで録音に臨んだと思われるので仕方がないのかもしれない。細かいところまで決めてしまうと、逆につまらなくなるタイプの音楽であり、あくまでノリ重視なのだろう。

最後に、曲が終わった直後に鼻歌を歌っている人がいるが、これはベニー・グッドマンの声だそうである。この曲、当初は発売する予定がなかったのだろうか?(ちなみに、「Seven Come Eleven」はこの日のセッションで1度だけしか録音しなかったようだ。したがって、別テイクもない。)
昔の人は、いろいろと謎なことをする。

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綾小路きみまろではないが、あれから40年。
チャーリー・クリスチャンのLPには縁がなかったが、CDはあれこれ購入したし、楽譜も何冊か買った。
しかしながら、ジャズ・ギターの学科の方はともかく、技能はサッパリのままである。仮免に進むことすら絶望的な状況である。(笑)

この曲を聞いた回数は間違いなく4桁に達しているはずだが、いまだに筆者にとっては、「ジャズ・ギターかくあるべし」の基準であり、ジャズ・ギターに挫折した者の恨みの対象であり、ただただ驚きの演奏であり、決して飽きることのないお気に入りの1曲であり続けている。


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