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15曲目: ダウン・タウン・ブギウギ・バンド「カッコマン・ブギ」とロックンロールに心を奪われた瞬間について、など

曲名: カッコマン・ブギ
アーティスト: ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
作詞: 奥山侊伸
(原案: ダウン・タウン・ブギウギ・バンド)
作曲: 宇崎竜童
編曲: ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
初出盤の発売年: 1975年
収録CD:『きわめつけ傑作大全集』Disc 1 [TYCN-80004]
曲のキー: A(イ長調)

※注
Wikipediaの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」のページには「カッコマン・ブギ」の作詞者名の「侊」が「りっしんべん」に「ひかり」の漢字になっていますが(2022年11月現在)、上記CDなどでは「にんべん」になっているので、ここでもそのように記しました。ただし、PCやスマホの環境によっては、この文字が表示できない可能性があります。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

筆者がまだ子供の頃、父親が1枚のシングル盤を買ってきた。
ジャケットのオモテ側は白地にペン文字のみ。
それが強烈に印象に残った。

ところで、当初はB面だった「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の方が話題になってきたのでA面と入れ替えたという話がWikipediaにも書かれているが、筆者の記憶では少し違う。

父親はダウン・タウン・ブギウギ・バンドのファンではなかったし(そもそもロック好きではない)、マーケティング用語でいうレイトマジョリティの典型なので、おそらく買ったのは「港のヨーコ~」が話題になって随分経ってからのはずだ。
しかし、そのシングル盤のレーベルでも「カッコマン・ブギ」の方がA面だったのを覚えている。
大阪でも郊外では流通するまで時間がかかった可能性があるので、父親は売れ残り品をつかんだのかもしれないが、少なくとも「港のヨーコ~」をプッシュし始めてからも、ジャケットに書かれたタイトルは「カッコマン・ブギ」が上で「港のヨーコ~」が下のままだったのではないだろうか。

いずれにせよ、筆者は圧倒的に「カッコマン・ブギ」の方が好きだった。それは今も変わらない。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

イントロなしでいきなり、

♪ 銀座、原宿、六本木
♪ バギートップにヒップボーン

とくる。

コードの半音ずり上がり(この曲だとG#からA)は、エルヴィス・プレスリーの「Jailhouse Rock」があったし、おそらく「カッコマン・ブギ」の出だしも「Jailhouse Rock」を下敷きにしていると思うが、あちらにはイントロがあった。
イントロなしは、これもやはりエルヴィスの「Hound Dog」がヒントになったのだろうか。
レコードを聞いて思わず身を乗り出したかどうか覚えているはずもないが、今聞いても素晴らしい出だしだと思う。

ファッション用語に疎い筆者には「バギートップ」も「ヒップボーン」もいまだにチンプンカンプンであるが、「シマシマパンツ」なら分かる。
これは間違いないと思うが、阿久悠が歌詞を書いた「ピンポンパン体操」がインスピレーションになっているはずだ。(「ピンポンパン体操」の歌詞自体が当時の流行に言及した作りになっているので、パロディ返し?だと言えなくもない。)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

♪ カッカッカ カッコマン

で始まるコーラス部分は、典型的なロックンロールのコード進行(12小節のブルース・パターン)になっている。
キャロルはさすがにリアルタイムでは筆者の耳に入ってこなかったのだが、意識していたかどうかはともかく、欧米のロックンロールを聞き始めるずっと前からこのコード進行が耳に馴染んでいたことは確かだ。

たとえば、テレビ「秘密のアッコちゃん」のエンディング曲「すきすきソング」(「ピンポンパン体操」と同じく小林亜星が書いた曲)。とはいえ、ジャズ・オルガンがフィーチャーされたサウンドで、この曲からはあまりロックっぽさを感じない。
山本直純がチェイス「Get It On」を意識して書いた?「新オバケのQ太郎」のオープニング曲も、少し小節数を変形させているが、大好きな曲だった。
歌謡曲では、フィンガー5の「恋のテレフォンナンバー6700」のような曲もあった。

面白いのは、上記の曲も「カッコマン・ブギ」もギターメインの曲ではないことである。
ギターは1本しか聞こえない。リードとオブリガードを弾いているので、普通のリズム・ギターは入っていないのではないか。
その代わり、ピアノは左右に2台入っている。スタジオ・ミュージシャンを呼んだのか、しばらくして正規メンバーとなる千野秀一が弾いているのかは分からない。
ピアノ・ソロの途中で、ジェリー・リー・ルイスばりのド派手なグリッサンド(筆者の好み)が入る。
ちょっとチューニングをずらしてホンキートンクっぽくしてあるように聞こえるあたりも、60年代ではなく50年代のロックンロールを感じさせる。

エレキ・ベースは4ビート調だが音使いはシンプル、ドラムスも小難しいフィルなどは入れず、スネアメインで3連をぶっ叩くのがカッコイイ。
筆者にとって、この「太鼓連打」に匹敵するのは、沢田研二の「ストリッパー」だけである。

「港のヨーコ~」が大ヒットしたせいか、「カッコマン・ブギ」がテレビで披露される機会はあまりなかったようだ。
1975年までのダウン・タウン・ブギウギ・バンドはデビュー時のビートルズと同じ楽器編成なので、ライヴではピアノレスで演奏していたはずである。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

あと、コーラス部分の最後で、謎のスキャットが出てくる。
今のCDの歌詞カードでは省略されているが、当時のシングル盤では■だったか●だったか、とにかく伏せ字になっていて、これが好奇心を誘った。

筆者は、

♪ サバダバ、サバッコベイビー
♪ ババン、ババレベーボ

と言ってると思っていたのだが、数年前ついに真相が解明された。
しかも『探偵ナイトスクープ』で。(笑)
ちゃんと暗号のような法則があったらしい。
当時の関西、少なくとも筆者のまわりでは、そのような言葉遣いは聞いたこともなく、当然意味があるとも考えなかった。
これをラップしていたのはリード・ギターの和田静男だったということも、この時初めて知った。

エンディングで、筆者が「エルヴィス終わり」と呼んでいる、少し遅めの3連に変化する。(「I Got A Woman」や「Rock-A-Hula Baby」などを参照)
宇崎竜童の声に突然リバーブがたっぷりかかり、大袈裟な歌いまわしになって大団円となる。

エルヴィスのオマージュに始まり、エルヴィスのオマージュに終わる。
必殺の2分26秒。


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