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太客

堅物のお客様には馬鹿なフリ

インテリのお客様には自分の考えを

年配のお客様には地元の話しを



ブスはブスなりに

自分の接客スタイルを築き始めました




よくいらっしゃるお客様で

某テレビ局の偉い方が居ました

その方は指名が無く

空いてる女の子全員つけてと

とても羽振りのいいお客様だった

みんなに優しくて

お話も面白くて女の子にも

とっても人気がありました


そのお客様はいつもVIPルームで

リラックスモード

御履物を脱いで家のように過ごす方でした


そのお客様がお手洗いに立とうとした時に

私はプレゼントを渡しました

これ、よかったら…

お客様は驚いた顔をして

プレゼントの包みをあけました

「ひゃー!!

プレゼントなんてもらった事ないよ」

「わぁーありがとうねぇ」

「こりゃあいい!」

「俺、此処何年も飲みに来てるけど

こんなに嬉しいの初めてだー」

私がプレゼントしたのはスリッパでした

お客様がお手洗いに行くたびに

よっこらせと

はぁ〜めんどくせぇなぁ〜

と御履物をもう一度履くのが

とてもつらそうに見えたのです


お手洗いから戻られたお客様は

とても嬉しそうにスリッパを見せびらかして

店長を呼び出した

「今日からゆうこ指名にするわ」

女の子全員の顔が引きつった




私は今日出勤前に

たまたま無印良品に寄って

今日、来るかもしれないなぁと思って

790円のスリッパを買ったんだ

別に高級品ではない

でも、店1の太客の売り上げを

私だけがもらう権利を手に入れたんだ

780円が何百万にも化けた


こうなるなんて思ってもなかった

ただ、お客様に

もっとゆっくりしてほしくて購入しただけ


お客様は子供みたいにはしゃいで

嬉しそうにしてた


私まで嬉しかった


接客とはなんであるか


お金もあって

周りにはいつも女の子が群がってて

何も欲しい物なんてなさそうに見える人

そういう方の

心の隙間に入り込む


喪黒福造じゃないけど



心を満たすという接客が

わかったような気がした日だった










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