じゃんけんぽいぽい必勝法

はじめに

じゃんけんぽいぽいは、決して運ゲーなどではなく、立派な実力ゲーである。何気なく手を選んでいる人に対しては、ほぼ必勝に近い勝率で勝つことすら可能である。以下では、じゃんけんぽいぽいの「負けない戦略」と「勝つための戦略」について考察する。

一般的なゲームのルール

ゲームは二人で行われる。

  • (1)プレイヤーは同時に、左右のそれぞれの手で、グーかチョキかパーを選択し構える。

  • (2)プレイヤーは同時に、自分が構えた手のうちどちらかを選択し、相手と勝負する。

  • (3)勝敗はじゃんけんに準じて判定される。もし(2)においてあいこの場合、(1)〜(2)を繰り返す。

ゲームの流れの例

  • (1)A(自分)は、左手にグー、右手にパーをかまえた。B(相手)は、左手にチョキ、右手にパーをかまえた。本記事では、この状況を以下のように記述する。

    • 状況

      • A: グー、パー

      • B: チョキ、パー

  • (2)Aは左手のグー、Bは右手のパーを選択した。

  • (3)Bがゲームに勝利した。

負けない戦略(均衡解)

前提

まずは、B(相手)が最強じゃんけんぽいぽいAIであっても負けないための戦略について考察する。ここで「最強じゃんけんぽいぽいAI」とは、「こちらの戦略を必ず正確に見抜き正確に対応してくる相手」を指すこととする。例えばじゃんけんでいえば、こちらが「グーを50%、チョキとパーを25%ずつ出す」という戦略をとった場合に、「パーを100%出す」という戦略をとってくる相手である。これにより、こちらの勝率は33%まで低下してしまう。

つまり負けない戦略とは、「相手にこちらの戦略が完全に見抜かれてもなお、勝率50%が保証される戦略」である。これはじゃんけんでいえば、「グーとチョキとパーを33%ずつ出す」という戦略のこと。この戦略が相手にばれてしまっても、相手は50%を超える勝率を出すことはできない。

具体的な戦略

左右の手に同じ手を構えることは、選択肢が少ないのみで利点がないため行わない。左右に異なる手を構える場合、どの2種類の手を構えても勝率はかわらない。そのため、(1)のフェーズでは、グーとチョキ、チョキとパー、パーとグーのそれぞれを1/3ずつ選択することが最適な戦略となる。

以下では、対称性からAの出す手を固定として考える。具体的には、Aがグーとチョキを選択した場合を考える。この際3つの状況が存在しうる。以下を順に考察する。

①Bがグーチョキを選択した場合(互角)
②Bがチョキパーを選択した場合(有利)
③Bがパーグーを選択した場合(不利)

①Bがグーとチョキを選択した場合(互角)

  • 状況

    • A: グー、チョキ

    • B: グー、チョキ

Aのとるべき策は、グーを出すこととなる。Bも当然グーを選択し、必ずあいこになる。

②Bがチョキとパーを選択した場合(有利)

  • 状況

    • A: グー、チョキ

    • B: チョキ、パー

前提

この対面は、Aにとって有利となる。Bはチョキを出してもAのグーに負けるし、Bはパーを出してもAのチョキに負ける。一方Aは、チョキを出しておけば負けることはない。

とるべき戦略

Aがグーを確率p、チョキを確率1-pで選択することを考える。

Bがチョキを選択した場合、Aがグーなら負け、チョキならあいこになる。ゆえにこの状況のBの勝率Xは以下のよう。なお、互いが最善を尽くすことを考えるため、あいこになった場合の勝率は1/2と計算する。

$$
\begin{align*}
X=\frac{1-p}{2}
\end{align*}
$$

Bがパーを選択した場合、Aがグーなら勝ち、チョキなら負ける。ゆえにこの状況のBの勝率Yは以下のよう。

$$
\begin{align*}
Y=p
\end{align*}
$$

Aは、XとYのどちらかが高い状況をBに与えると、Bがその戦略をとることで勝率の最大化ができてしまうため、X=Yとなるような戦略をとるのが良い。これを解くと以下のよう。

$$
\begin{align*}
X = Y 
\iff \frac{1-p}{2}=p 
\iff p=\frac{1}{3}
\end{align*}
$$

したがって、Aはグーを1/3、チョキを2/3で選択するべきである。

③Bがパーとグーを選択した場合(不利)

前提

  • 状況

    • A: グー、チョキ

    • B: パー、グー

この対面は、Aにとって不利となる。Aはチョキを出してもBのグーに負けるし、Aはグーを出してもBのパーに負ける。一方Bは、グーを出しておけば負けることはない。

とるべき戦略

Aがグーを確率p、チョキを確率1-pで選択することを考える。

Bがパーを選択した場合、Aがグーなら勝ち、チョキなら負ける。ゆえにこの状況のBの勝率Xは以下のよう。

$$
\begin{align*}
X=p
\end{align*}
$$

Bがグーを選択した場合、Aがグーならあいこ、チョキなら勝つ。ゆえにこの状況のBの勝率Yは以下のよう。

$$
\begin{align*}
Y = \frac{p}{2} + (1-p)
\end{align*}
$$

Aは、XとYのどちらかが高い状況をBに与えると、Bがその戦略をとることで勝率の最大化ができてしまうため、X=Yとなるような戦略をとるのが良い。これを解くと以下のよう。

$$
\begin{align*}
X = Y 
\iff p = \frac{p}{2} + (1-p)
\iff p = \frac{2}{3}
\end{align*}
$$

したがって、Aはグーを2/3、チョキを1/3で選択するべきである。

結論(負けない戦略)

以下の方法が相手が最強じゃんけんぽいぽいAIである時の最適な戦略となる。

  • 互角の対面では負けない方の手を出す。

  • 有利対面や不利対面では、あいこになりうる方の手を2/3の確率で出し、そうでない方の手を1/3の確率で出す。

勝つための戦略

上記の戦略は相手が最強AIであっても「負けない戦略」(勝率50%が保証される戦略)であるが、勝つことがない戦略でもある。これは、Bがどのような択をとっても、Bの期待値が一定になるように戦略を構築したためである。

実際のじゃんけんぽいぽいでは、人間は「負けない戦略」に対して偏った戦略をとっている。ゆえに、相手の戦略を見抜くことで50%よりも高い勝率を出すことができる。じゃんけんでいえば、「グーを50%、チョキとパーを25%ずつ出す」というような偏った相手の戦略を見抜くことができれば、「パーを100%出す」という戦略を取ることで、勝率を66%まで高めることができる。ここで大事なのは、相手の戦略を咎めにいく際に最適な戦略は、「パーを50%、グーとチョキを25%出す」といった生ぬるい戦略ではないこと。こちらの戦略が偏っていることがばれない限り、徹底的にメタるべきである。

相手(B)がある程度合理的である場合、Bにとって有利である対面において、Bは負けない方の手を出しすぎることが多いと感じる(③においてグーを選択しすぎる)。わざわざ1/3以上の確率で負けうる方の手を選択する人は少ない。

また、 Bにとって不利である対面において、Bは1/2に近い確率で手を選ぶことが多いと感じる(②においてパーを出しすぎる)。どちらの手も負けうるため、短い時間でどちらの手を出すべきか判断するのは難しい。

従って、Aは有利対面や不利対面ではあいこになりうる方の手(②ならチョキ、③ならグー)を2/3よりも高い確率相手にバレないのであれば、100%)で出すことによって、勝率を最大化することができると考えられる。

もしBが、②で必ずグーを出し、③でランダムに手を選択する場合、上記の戦略でAは必勝である。

最後に

何かをじゃんけんで決めることになりそうな時、代わりにじゃんけんぽいぽいを提案してみてはいかがだろうか。相手の知らないうちに、運ゲーを実力ゲーにすりかえることができる。

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