見出し画像

私を創るコーンスープ

毎朝、コーンスープを飲む。

コーンスープと言えばもったりとろとろの液体を思い浮かべるけれど、あれは上等なコーンスープだ。残念ながら、そんな濃厚なコーンスープを日常的に楽しめる身分ではない。粉末を湯で溶かすタイプのコーンスープ。それが私の日常である。

部分的にきつね色に焼けたトーストを手でちぎりながら、インスタントのコーンスープに浸して食べるのが好きだ。焼いたパンのカリっとした食感と甘くて軽いスープの融合。最高に決まっている。

◇◇◇

私は昔、うつ病だった。

固形食を摂ることができない日も少なくない。でも、食事ができないときでもコーンスープだけは飲めた。コーンスープが飲めるから大丈夫、と思えたことが私の心にほんの少しの余裕をもたらしてくれた。

うつ病の頃によく飲食していたものを、今はあまり見たくない。味や香りであの頃の暗い闇を思い出すからだ。

だけど、コーンスープだけは別。とても幸せな感覚に満たされる。

あの頃、コーンスープを飲んでいたときの私は、きっと、その瞬間、幸せだった。

◇◇◇

ある美しい女性が言った。「私はワインでできている」

とても官能的な響きで美しい。

あるイケたメンズが言った。「俺はコーヒーでできている」

しびれるぜ、カッコいい。


私は、コーンスープでできている。

ちょっと間抜けな響き。でも、私に似合っていると思う。うん、嫌いじゃない。

シュポシュポシュポという音を立ててお湯が沸いた。一日がスタートする合図だ。スープカップの中に粉末のコーンスープの素を入れ、熱湯をかける。鼻歌交じりに15秒ほどスプーンで混ぜたら、あったかいコーンスープの出来上がり。

目を閉じて、クリームの香りを堪能する。

きっと今日も、いい日になるだろう。