シネマレビュー_おおかみ

映画レビュー『おおかみこどもの雨と雪』

映画レビューまとめ。


(2013年02月24日に作成したレビューに若干手を加えました)

第38回星雲賞を含め、世界中で多大なる評価を得た『時をかける少女』。
第41回星雲賞を含め、前作をはるかに超える評価を得た『サマーウォーズ』。

細田守監督のアニメーションには、これまでも沢山の評価が為され、実際にその評価が正当なものであると、観るものを納得させるだけの映画を作ってきた。

そして、『おおかみこどもの雨と雪』。
本日ようやく、試聴することの出来た、彼の最新作である。

あらすじはシンプルである。 

ヒロインがある日出会った狼男と恋に落ち、子供を二人授かる。
事故で狼男が亡くなり、一人で子供達を育てていくことを決意したヒロインだったが、
その子供もまた狼に変身することから都会に住むことを諦め、田舎に引っ越すことになる。
その地でヒロインや子供達は、様々な出会いや苦難を通して、すこしずつ成長していき――。 


まず、はっきり言えることがある。
良い映画だった、ということだ。

声優として参加している俳優や女優さんの演技も素晴らしく、
アニメーションも丁寧に作られていて、演出や音楽も程よく心地よい。
何より物語が直球勝負であるから、心にすうっと入ってくる。

そしてこれはこれまでの2作品にも言えることだが、細田守監督の映画には……そう、『人と人とのつながり』が当たり前に存在しているところがある。

例えば、新海誠監督だったら――まあ彼はいわゆる『セカイ系』の監督であるから当然だが、同じ『愛』をテーマにし、同じハッピーエンドの物語だったとしても、それはあくまで個と個の愛であり、家族や親族、ご近所付き合いと言った『つながり』を中心に据えることはないだろう。それは新海監督の新作であり名作である『言の葉の庭』からも伝わってくる。

細田監督は逆に、さもそこに在ることが当然のように『人と人とのつながり』を中心に据えることで、作品に深みをもたせているように思う。


『時をかける少女』での三人。
『サマーウォーズ』での大家族。
そして、
『おおかみこどもの雨と雪』での花と雨と雪、そして村の人々。 


彼の紡ぐ物語は、だからこそ常に暖かい。
次回作の発表はまだされてないが、きっと次も暖かい映画であろうと思う。

余談だが、久しぶりに、これから先彼女たち親子が幸せに暮らせるといいな、などと、アニメのエンディングを観ながら、ふと思った。
これもまた、私が細田作品を観た時必ず感じる感想だったので、ついスタッフロールを観ながら苦笑いしてしまった。

うん。
観てない人は、ぜひ観ておくと良いと思う。
オススメである。


追記。
この作品のテーマである『母親の無償の愛』と『子供の母からの巣立ち』は、そのジャンルも視点も違うが、私が好きな原田眞人監督の『わが母の記』と通じているように思う。
だから素直に良かった、と思えたんだろうな、と。

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