2年前の忘れ物を取りに行く。


私には、未完の長編が2つ、ある。

ひとつは、高校時代から大学時代にかけて書き続けたクトゥルフベースのファンタジー『五龍島物語』。こちらはあまりの中二っぷりに今ではもう書けない――というか、書きたくないので、そのまま墓に持って行こうと思っている。

なので、ここではもうひとつの方――2年前に忘れてきた長編について少し語ろうと思う。


その長編の案を思いついたのは、およそ二年前の2012年12月26日のことだった。

その案とは、いわゆる『オリジナルの仮面ライダーもの』。
これまでに題材になっていない仮面ライダーを作ってみたい、と思ったのが、その始まりだった。

仮面ライダーシリーズを――失礼、平成ライダー以降のシリーズをご存知のかたは承知のことと思うが、現在の仮面ライダーはいわゆる『悪の組織に改造された改造人間』ではない。
何らかのモチーフを元に作り上げられた世界観が構築され、そのもとで毎回独自のストーリーが展開されていく……これが現在の仮面ライダーのスタイルとなっている。

その中でまず『これまでまだモチーフになっていない題材はないか』と仮面ライダークウガ以降の平成ライダーシリーズを思い返しつつ考えた結果、ふと思いついたのは『妖精』だった。

妖精
妖精(ようせい、fairy)とは、西洋の伝説・物語などで見られる、自然物の精霊。主としてフェアリーの訳語である。中国では、もともと妖怪や魔物を指して使われていた。
(Wikipediaより抜粋)

これまで仮面ライダーシリーズでは、龍や鬼、アンデッドや魔術師、ヴァンパイアなどは題材にされてきたが、妖精を題材にした作品は見かけたことがない。
ならば、『仮面ライダー×妖精』であれば、二次創作の枠を超えた『オリジナル』になり得るのではないだろうか……と思ったのだ。

そして次に考えたのは、戦う相手だった。

その前に、仮面ライダーの定義について。 
Wikipediaにもアップされているが、だいたい以下のとおりとなる。 

①同族同士の争い:シリーズ第1作『仮面ライダー』では、主人公もその敵である怪人も、ともに悪の組織「ショッカー」によって生み出された存在である。 
②親殺し:仮面ライダーがショッカーを倒そうとするのは、すなわち自分の生みの親を滅ぼそうとすることである。 
③自己否定:仮面ライダーが勝利できたとしても、彼自身の出自がショッカーにあるので、最後には自分を消さなくてはならない。 
④『個』である。 
⑤人間という集合体の中の一番はじっこにいる。 
⑥境界線ギリギリのところにいるか、あるいは踏み越えている。 
⑦敵となる異生物と人間との境界線上をさまよい、いずれの側にも安住できない存在である。 

これは多分に『昭和ライダー』成分が含まれており、『平成ライダー』においてはこれとは別に『乱立する小さな正義とその調停』や近年のアニメにも見られる『ヒーローの意義』といった要素が加味されているため、この時はそれを踏まえてこんな設定を考えた。


敵はフェアリーズ。妖精の国の住人である。 
死の世界の先にある黄昏の国『妖精国』に住む妖精たちが、自国の危機に直面し、妖精女王タイターニアの指揮によってさらなる安住の地を求めて、禁忌であった現世への移住を開始した。 
妖精たちは人間の内部に入り込み、人間の精神体と融合することで現世で活動できる身体を手に入れる。 
もともと人間は精神体であり、物理的な『人体』と言う器に入る事で現世での活動が可能になるのだが、『人体』は精神体によってその容貌が変化するため、妖精と精神体が融合すれば、妖精の持つ固有情報によって外見及び身体能力が大きく変異する事になる。 すなわち、『現世への移住』とは、『現世への侵略行為』にほかならないのだ。

ちなみに、融合によって変異した妖精人間は、その融合の成功の度合いにより『野獣』『騎士』『将軍』(呼称に再検討の必要あり)と区別される。 
人間の思考と記憶が無くなるのはどれも同じだが、後者になればなるほど融合した妖精の力が強く、自らの意志で思考し、変異前の姿をとる事が可能になる。 

ちなみにここで検討している『妖精の国』は、その名前から推察できる通り、直球ストレートに『夏の夜の夢』から――というよりもむしろ私の好きなロード・ダンセイニの『エルフランドの女王』のほうが引用としては正しいのかもしれない。どちらにせよ、これなら対立する存在としては十分だろう、と考えた。

そして悪の組織が決まれば、次はそこから生み出される子供、主人公の設定を考えることになる。


先ほどの定義からすると、『悪の組織と同族、もしくは悪の組織と人間との狭間に居る』ことが大切、ということは……。 

対する主人公は、『特異体』の妖精人間である。 
彼は今回の侵略開始前に、ふとした事故で一度だけ現世に紛れ込んだ事があり、そこで知り合った『妖精が見える少女』との交流を通して人間の優しさに触れ、現世不可侵の意志を固めていた。 
しかし、フェアリーズのボスである『タイターニア』の強い意志を覆す事が出来ず、逆に『実験体一号』として誰よりも先に現世へと送りこまれる事となった。 
彼――ユニコーンの『カイン』は、その力ゆえに『怪物』に変異するかと思われたが、一度現世に来ていた事と、たまたま融合した自分と同じ名の青年『橘霞音(たちばなかいん)』の意志力が強かった事から、『将軍』クラスの実力と二人の『かいん』の記憶を持った、『特異体』へと変異したのだ。 
『特異体』である『かいん』は普段は人間である『霞音』の姿で行動する。『霞音』の時の能力は『野獣』以上『騎士』以下であるが、印をふむことで発現する『カイン』の姿になることで『将軍』以上の力を得る事ができる。 
『カイン』に変異した姿は基本人間と同じ形であるが、本来がユニコーンであるため、全身が真っ白で、かつ額に角のようなものを生やしている。 

『かいん』は変異後、現世に次々と発現した他の妖精人間の駆逐を開始。 
その闘う姿を見た人間が口々に呼ぶ名を逆に利用し、『仮面ライダー』と自称する事になる。 


上記の主人公『カイン』の設定を行った後、私は衝動に任せて連載を開始した。
テレビ2クール分、つまり24話完結を目標にそこまでの大雑把なアウトラインだけを決めて、本当に衝動的に連載を進めていったのだ。


今となってはしみじみと思う。
やはり長編は、衝動に任せて連載をするのではないんだと。

この作品『仮面ライダーユニコーン』は、現在10話までを書き上げたところで止まっている。

止めた理由は大したことはない。
基本設定について、予想以上の酷評を受けてしまったからだ。

――といっても、今はそこまで酷評だとは思ってないのだが、少なくとも当時は『もうダメだ』とあっさり心が折れてしまい、そのまま現在に至っていたというだけのことだったのだが――

――2年が経過し、作品公開のプラットフォームがnoteに移った今。
今ならあの作品を公開しても良いのかな、と考えたのだ。


と、いうわけで。

年明けから、長編連載を一つ、始めます。
タイトルは『仮面ライダー ユニコーン』です。

残念なことに私は絵心がないので、主人公の仮面ライダーとしてのデザインを絵にすることができておらず、なので表紙絵などは無いところからのスタートになりますが、よろしければご一読くださいませ。


妖精たちの国、フェアリーズランド。 
太古の昔から『黄昏の向こうの国』として知られるその異界の地より、一頭のユニコーンが人間界へとやって来た。 
彼の名はカイン。 
彼は自らと同じ名を持つ人間、霞音とともに、日夜フェアリーズランドからやって来る刺客『フュージョニア』と戦い続ける。 
全てを救うために。 
そして、運命に抗うために。『仮面ライダー ユニコーン』2015.1.1公開開始予定。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?