私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション85『弦(げん)』
作者駐:
『私的国語辞典』は、基本的には全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション84『弦(げん)』(340文字)
「いいか、一言で『弦を張る』言うてもな、加減、ちうもんが必要や。解るか?」
師匠が胡座をかきながら、正座する私に問い掛ける。
「緩すぎるのが問題外なのは当たり前や。全然飛ばんからな」
だがな、と手に持った弓の弦をピン、と弾く。
「キツすぎるのもあかん。やっぱり全然飛ばへんし、」
なにより、と師匠は弾いた指をひらひらと振る。
「指、怪我しやすうなんねん」
解るな?と問う師匠に、正座したままの私はこくり、とうなずいた。
「何事も加減が大事や。人間とおんなじ」
「人間と、ですか?」
私の問いに、師匠はニンマリと笑って、
「人間かて、緊張するやろ?人間てな、緊張しなさ過ぎたらダメになるし、緊張し過ぎたら壊れよるんや」
ほら、おんなじや、と師匠は言うと、自分の例え話に満足したのか、カラカラと笑い声を上げた。
(340文字)
『弦(げーん)』
1 弓づる。
2 (「絃」とも書く)楽器に張り、はじいたりこすったりして音を出す糸。また、それを張った楽器。琴・三味線・バイオリンなどの弦楽器。
3 弓を張った形の月。半円形の月。弓張り月。弦月。
4 枡(ます)の上縁につけた四角形の鉄のさん。
5 数学で、円周または曲線上の二点を結ぶ線分。また、直角三角形の斜辺。
(大辞林より引用)
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