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丁寧に創る、ということ。

ども、ならざきです。
いや、実はちょっと紹介したい動画がありまして。その前にいちおう前知識として。

ニコニコ動画、という配信サイトがあります。
そこではユーザーによって日々たくさんの動画が配信され、視聴されていますが、その中に『MMD』というジャンルの作品群が存在しているのをごぞんじでしょうか。

MMD。
『MikuMikuDance』という3DCGアニメーションを制作するフリーソフトを使って制作されたその作品群のなかには、もちろん目も当てられないレベルの作品も数多く存在しますが、誰もが唸り声を挙げるほどのクオリティの作品が埋もれているのもまた事実で。

その中でも、『映像表現』として秀逸だと私が考える、とある作者さんの作品を幾つか紹介したいと思います。


Vocahikoさん。
私、実は彼の作品をつい先日知りまして。そこからこれまでの作品を遡っていったのですが、どれも素晴らしかったんですね。

例えばこれ。

これはVOCALOIDというソフトの歴史を『ファミリー』に例えて表現した作品なのですが、セリフのないサイレント形式の作品でありながら、――いや、だからこそでしょうか、それぞれの自然な動作が雄弁に言葉を語っているという、良作に仕上がっています。
この作品が制作2作目ということもあり、まだカメラワークなどで惜しいところはありましたが、次の作品では逆にカメラワークのセンスの高さを見せつけられる結果となりました。

これは『ぷちミク』(サムネで車窓から外を眺めているちっちゃいミクちゃん)というMMDモデル(MMDで使うモデルデータ)が誕生した日を記念して行われた『ぷちミク誕生祭』に彼が投稿した動画作品なのですが、……まずはご覧になってください。

お分かりになられたでしょうか。
絶妙な位置(ぷちミクの目線)に固定されたカメラワーク。
ぷちミクを挟んで座るミクとちびミクのあまりにも自然な動き。
(ちなみにこのMMDでは、人形遊びをするように製作者が動きをつけてあげなければいけません。――もちろん今では無料配布されている『モーションデータ』を読み込んで流用することも、Kinectを利用してのモーションキャプチャーも出来はしますが、やはり最後はマウスを多用しての微調整が必要となります)
映像の中に漂う空気感。
ぷちミクの少し疲れたような、でもどこか寂しげな表情。
そして最後のエンドロールのセンス。


次の作品は、いわゆる『東方もの』と呼ばれるジャンルの作品です。
私もいわゆる『東方』系のゲームはしたことがないので、世界観もざっくりしか理解していないのですが、そんな些細な事はこの作品においてはまったく関係が無いのです。
アニメ『蟲師』を彷彿とさせる絶妙な世界観。
セリフを使わない代わりに魅せるその複雑な表情。
丁寧に作りこまれた自然な動き。
元ネタを知っていようといまいと関係なく見惚れる世界が、そこには展開されていました。

そして最新作。
先日閉会式のあった『第13回MMD杯』の参加作品『Daydream』です。

この作品は『MMD杯』で提示されたテーマの一つ『海』をモチーフに制作されたもので、海沿いの公園でひと休みをするVOCALOIDたちのひと時を描いた作品になっています。

私はこの作品に強く魅せられました。
その固定されたカメラの視点。
登場するキャラクターの、まるで実際に生きてその場で撮影してきたかのような自然な動き。
そして、カメラ越しでは感じることのない、海風の爽やかな香りと強い日差しの暑さ。


ここまで紹介してきたそれぞれの作品をまとめてみると、この作者の映像制作に関する共通の『想い』がハッキリとしてきます。

・視点は常に低く、子供の視点で。
・人間が当たり前にする細やかな動作こそ丁寧に描写する。
・ガチャガチャカメラを動かすのではなく、固定することで『空気感』を活写する。
・キャラクターの特徴を理解し、キャラクター『らしさ』を徹底して表現する。

これらから考えると、彼は映像制作において、『派手さ』よりも『丁寧さ』を追求しているように思えるのです。


昨今、どんなジャンルの『創作』でも、『派手さ』や『個性的なキャラクター』を重視した作品が好まれ、丁寧に作られていても地味であれば観てもらいにくくなっています。

そんな中でも、こうやって自らの作りたいものを丁寧に作りこんでいく人々が居る。
MMD関連の作品に時折挟み込まれるこう言った作品を見るたびに、私はつくづく、「ああ、創作っていいなあ」と思うのです。

売れるか売れないかとか、評価されるかされないかってのも当然大事です。
ですが、とにかく自分の作りたいものを、自分が納得できるところまで丁寧に作りこんでいく――そんなクリエイターがこのnoteにもっと増えてくれるといいな、という思いから、このnoteをアップすることにしました。

きっと、この作品たちを観て、私が感じた気持ちを理解してくれる方がいらっしゃるだろう、と願いつつ。


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