『影のある人を主題にした作品を作れ!』という指令を受けたのです。

ゆずちゃさん#ムチャぶりみくじ によって今回与えられた指令は、

『影のある人を主題にした作品を作れ!』

でした。

よって、いろいろ悩んだ結果、悩んでも仕方ないので即興で書いてみることにしました。さあ、行ってみますよ~ヽ(=´▽`=)ノ



「いたぞ!あいつだ!」

十字路に飛び込んだ瞬間に聴こえてきた怒声に、僕は慌てて声とは逆の道に走りだす。

「無傷じゃなくともかまわん!とにかく確保するんだ!」

続けて聴こえてきた怒声に振り向くと、さっきなんかよりもずっと増えた黒服の男たちが見えて、めっちゃ焦る。

「なんだよなんだよなんだよもう!」

僕は転ばないように注意をはらいながら、とにかく逃げ切らないとと必死に走り抜ける。
いつもなら人混みに紛れてしまえばなんとかやり過ごせるんだけど、こんなに陽が高い日中で、しかも人通りの少ない商店街の中という悪条件が重なっていて、黒服の連中をごまかして逃げ切るのは至難の業だ。

「くそ、僕だって好きでこう生まれたワケじゃないのに!」

いらだちを吐き出しつつ、途中の路地に飛び込んだ僕の視界が、まばゆい白熱灯の明かりに塞がれ、挟み込まれたかと一瞬真っ青になる。

「やばいやばいやばいやばい!」

僕は焦ってUターンしようとして、思わずつんのめってそのまま路地にあった木箱や段ボール箱やベンチやオッサンたちに突っ込んでいく。

「おいおいなんだ?!」
「あんちゃん大丈夫か?」

必死になって起き上がろうとする僕の耳に下卑た酔っぱらいの声が聴こえてきて、僕はすぐにこの路地の――さっきの白熱灯の意味に気づく。
ここは違法営業の屋台が並ぶ路地で、さっきの灯りは屋台の照明だったんだ、と。

「――んだよもう!紛らわしい!」

僕は悪態をつきながら両手を道路に押し付けるようにして起き上がり、クラウチングスタートの要領で路地の奥へと駆け出していく。
視界の片隅に見えた壁に、屋台の照明に照らされた僕の影が写っているのが見えて、僕は軽く舌打ちする。

「……お?」
「おいおい、『影』だぜ『影』」
「このあんちゃん、もしかして」

うろたえたというよりもむしろ興味本位な口ぶりのオッサンたちの声を無視して走り抜ける僕。
いつもの僕ならこういう時はなにかごまかすのだけど、振り向かなくてもわかる背後の黒服のプレッシャーが、それを許してくれない。

「『影のある人』だぜ、あいつ!」
「初めて見たぞ!」
「捕まえりゃ賞金もらえるぞ!」

次々と聴こえてくるオッサンたちの声に、僕は更に速度を上げる。


――『影のある人』。
『影』など本来存在すべきものではないこの世界において、イレギュラーとも言える存在が、僕たちのような『影がある』人間で、だから僕たちは事あるごとにこうやって政府の人間や民間らしい研究所の研究員や人身売買を専門にしているヤクザやマフィアなんかに狙われ、追いかけられているんだ。

――しっかし、賞金までついてるとは思わなかったけど。

ま、しょせん酔っぱらいの集団だ、たとえ本気で僕を捕まえようとしたとしても、その手すら届かないくらい速く走る自信はある。

それに、もしかするとこれこそチャンスかも――。

「お前ら、邪魔だ!」
「うるせえなんだあんたら!」

少し離れたところから聴こえてきた怒声に、僕は心のなかでガッツポーズをすると、チラリと背後へ目を向ける。

案の定というかなんというか。
僕を捕まえようとして立ち上がった酔っぱらいのオッサンたちと黒服たちが見事に衝突したのだ。

「お前ら、逮捕するぞ!」
「うるせえ!この政府のイヌが!」
「賞金は俺のもんだ!」

黒服――公安2課の捜査員相手に飛びかかっていくオッサンたちに心から感謝しつつ、僕は更に街の奥へと逃げこんでいった。

(了)



……って、こんな感じでいかがでしょうか、ゆずちゃさん(;´∀`)

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