懐かしネタ発掘:カントリーマアムのアイスバー、ですって?!


(初出:2013年2月)

カントリーマアムがしっとり食感のアイスバーに変身! http://news.walkerplus.com/article/36554/



カントリーマアムの、アイスバーですって?
それはアレですか、直訳すると、

『田舎のお母ちゃんの、氷酒場』 ですか?

ってことは――




アメリカ西部、モニュメント・バレーの近くにある、とある田舎の町。
そこに、一軒の酒場がある。
昔ながらの氷室を地下に持っていて、ロッキー山脈から運んできた氷を保管していたことから、
『氷酒場』と呼ばれ、町の人間の避暑も兼ねた憩いの場として昔から親しまれていた。

そして今日。
町の人たちでみっしりと埋まったこの酒場で、とある会が開かれていた。
先週亡くなったこの店のマスター、ジェイクの代わりに、ジェイクの妻である『ビックママ』、シェリーがこの店を継ぐことになり、ジェイクの意志により、町の主だった者達の前で彼女が挨拶をすることになったのだ。

『おおい!まだかよ!』
『早くしねえと、俺らぐでんぐでんになっちまうぜ!』
店のあちこちから、せっつくような冷やかしの声が上がる。
面と向かって言えば恐らくはその太い腕で外までぶっ飛ばされかねないというのに、
酒の力も手伝ってか、彼らに恐れは無くなっているようだった。
『氷も溶けっちまうしよ!』
『そうだそうだ、氷がなきゃ、ここに来る意味ねえぞお!』
『シェリーの魅力じゃ、皆逃げちまうもんなあ!』
『はっは、ちげえねえ!俺ら三人分のガタイしてるもんなあ!』
そう言って何人かが馬鹿笑いしていると、突然奥のドアが勢い良く開いて、巨大な女性がのそり、と姿をあらわした。
『ええい!うるさいねえ!心配しなくても、氷も私も十分セクシーだわよ!』
『ああそうだそうだ!シェリーはセクシーだ!』
『うっせ!思ってもないことを――』
群衆の中から聴こえてきた野次に今にも噛みつかんばかりに乗り上げるシェリーを、傍にいた美しい娘、マリアが引き止める。
『ほらほら、酔っぱらいに構わないでさ。始めちゃいなよ、ママ』
自分の娘に窘められては、さすがのハリケーン・シェリーも従うほかない。
シェリーは解ったよもう、とぼやきがちに頷くと、無理やりカウンターの中に入り込む。
壁の棚がバキバキッと破壊されたが、シェリーは気にする様子もなく、やはり無理やり身体を捻って、カウンターの外にいる全員に身体を向けた。

『――ああ、ええと、本日はお集まりいただき、誠にありがとう――』
『良いからさっさとやれー!』
『湿っぽいのは止めろってジェイクも言ってたぞ!』
『だから野次を飛ばすなバカタレがッ!私が話してんだ、邪魔すんな!』
再びの野次にキレたシェリーが、怒声とともにカウンターに両手を置き身を乗り出す。途端に分厚い一枚板のカウンターテーブルがぐにゃり、と歪み始める。
『ほ、ほらママ!良いから落ち着いて!パパのテーブルが割れちゃう!』
マリアが思わず叫ぶと、シェリーも我に返って身体を起こし、ごほん、と咳払いを一つして、再び背筋を伸ばした。

『ええと、ジェイクの遺言により、本日からこの店の名前を新しく変えることになりました』
彼女の厳かな口調に群衆から喝采が上がる。
シェリーはまるで演説中の大統領のように大仰な動作で場を鎮めると、マリアが手に持っていた遺言書を受け取り、まるでアカデミー賞の発表をする女優のように厳かにぴらり、と紙を拡げ、

――そして、ニヤリと笑ってから、ゆっくりと口を開いた。

『新しい店の名前は、『カントリーマアムのアイスバー』よ!』


……って、こんな感じですか?(どきどき)
なんかこう、毎晩一人二人は入り口からオッサンが叩きだされてそうな、そんな感じのバーだなあ。
楽しそうだけど。

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