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34歳会社員がラジオパーソナリティーに転職した話⑤

会社員だった私が34歳でラジオパーソナリティに転職するようになった経緯を書き連ねている。

今のところラジオの「ラ」の字も出ていなく、まるで闘病記になってしまっているが、気長にお付き合いを…

これらは私の人生を大きく変えた出来事だった。


前回の内容は、こちらから読むことができます。
34歳会社員がラジオパーソナリティーに転職した話④


手術を前に

突然の事態に、病院から泣きながら帰った翌日。
あっという間に手術前夜を迎えていた。

初の手術に緊張している?
悪性だったらどうしようと泣いている?

驚くことに私は、病室のベッドの上にあぐらをかき、お笑い番組を観て笑っていた。

気持ちが吹っ切れていた。
基本的に、クヨクヨと悩みがちの性格だが、このときばかりは違った。

もうどうでもいいや
いや、捨て鉢というよりは俎上の鯉。泣いてもあがいても何も変わらないと思ったら、不思議と気持ちが軽くなった。

看護師さんが手術を翌日に控えた私を心配し、優しく声をかけてくれる。
眠れないかもしれないから睡眠薬を飲むかと聞かれたが、明るく断った。

すでに眠いので必要ないです~

その言葉に嘘はなく、すぐに眠りにつき、その数時間後。
なんとも爽やかに朝を迎えることになるのだ。


手術の術式

婦人科系疾患の手術の場合、開腹手術か腹腔鏡手術がある。
開腹はお腹を切り開く術式、腹腔鏡はお腹に1センチほどの穴を数カ所あけて、そこに器具を入れ、画面を観ながら行う術式。
前者は後者と比べ、術後の回復に時間を要する。後者は前者と比べ医師の技術がより必要となる…らしい。
産婦人科の手術 (ジョンソン・エンド・ジョンソンHPより)


私は前回書いたように、悪性の可能性があるため、手術は開腹手術、片方の卵巣まるごと、周りのリンパ節と一緒に摘出するということになっていた。


手術室の前の廊下には心配そうに私を見ている両親がいた。
仕事大好き頑固な昭和親父も珍しく仕事を休んだらしい。いやホント申し訳ない。(軽い)

なんとも言えない表情を浮かべるふたりに私は、まるで近所へ買い物でも行くかのように笑顔で手を振り、手術室に入った。きっと彼らは私の明るい表情に拍子抜けしただろう。強がりもあったかもしれないが、本当に気持ちは落ち着いていた。

そんなわけで、手術前のことはよく覚えている。


手術直前、まさかのトラブルが

さて、私は手術室の隣にある前室のような、処置をする部屋のベッドに横になった。麻酔科の女性医師が3人、寝転がる私を取り囲んでいる。

手術は全身麻酔と硬膜外麻酔のふたつを使って行われる。
全身麻酔は脳と身体の麻酔、意識を消失させるもの。
対して硬膜外麻酔は手術部位への麻酔、術中だけでなく術後もしばらくは続ける。

まずは硬膜外麻酔の処置から行った。
ベッドの上で横向き寝の姿勢になり、エビのように丸まるように言われる。
上手にエビさんのポーズをとる32歳の私。
まず、丸まった背中に注射で麻酔をし、その後に脊髄の近くにある硬膜外腔というところにカテーテルを通し麻酔薬を入れるんだそう。

先に注射で麻酔をしているのでカテーテルを入れる痛みはない。
が、カテーテルが背骨の近くまで刺さってきたという感覚はあって、やや違和感。少しすると下半身が温かくなっていく。じんわりとホットカーペットの上にいるような気持ちよさ。次第に下半身の感覚がなくなる。
(このカテーテルは術後3日間くらいは抜かずに、麻酔薬を入れたボトルをぶら下げておき、痛みを感じたらボタンをプッシュして麻酔薬を追加投入する仕組み)

そしていよいよ全身麻酔。
生まれてはじめての全身麻酔!眠るといえど実際は意識を消失させるもの。
呼吸は麻酔薬によって抑制されるため、人工呼吸が必要となる。
もし途中で目が覚めたら??いや一生目が覚めなかったら??

緊張することなく手術に臨んだ私も、さすがに全身麻酔を前に多少はビビっていた。

麻酔科の女性医師たちが慣れた手付きで点滴の準備を進める。
その様子を無言で見つめる私。
私の頭上には麻酔薬が入った袋が掲げられ、点滴スタンドのフックにかけられ…

その瞬間、バンっという音とともに目の前が暗くなり、顔に衝撃が。
こともあろうに、麻酔薬が入った袋が、顔の大きさくらいあろう袋が、私の顔の上にあった。

医師が手を滑らし、私の顔に袋が落下したのだ。
一瞬部屋が静まり返った。

やばい…

医師はそんな気持ちだったのかもしれない。
次の瞬間、私は大笑いをした。
笑い声が響くなか、医師たちは焦りながらすぐに袋をどかし、こちらを心配そうに窺っていた。私は笑いながら感謝を告げた。

ありがとうございます~おかげで緊張が解けました~笑

それを聞いた医師たちもホッとした表情を浮かべ、一緒に笑った。
全身麻酔の直前に患者と医師が大笑いする現場なんてなかなかないだろう。
なんて和やかなムード。このまま4人でお茶したい気分。
なんて、これも緊張をほぐすための処置の一環だったりして。

さ、いよいよ今度こそ。

「じゃ薬を入れますよ・・・・・・・・・」

という声を最後に、私は安らかに眠りについた。(生きています)




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