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211107 走れ走れ走れ~~!!!

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『儚い羊たちの祝宴』米澤穂信


めっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ



     ちゃ

        面
              白


めっちゃ、おもしろいです。信じられないぐらい。


5つの短編、5つの殺人。

ミステリーであって、殺人とトリックはセット。

そのトリックがねえ、すんごいのよ。必ずしも『殺し』のトリックではなくて、いろいろな角度から読者を驚かせて楽しませてくれるんだけど、そのどれもが美しく鮮やか。ひとつの短編を読んでいくなかで何度も何度もすこーんとひっくり返される。

ひっかけや裏切りというよりは、読者の想像の外・死角から襲ってくる感じがある。読んでいてすこぶる気持ちがいい。

トリックのタネに気づけないのがきちんと『読者の責任』になっている。ミステリーって、これはミステリー小説だけでなく例えばなぞなぞとか脱出ゲームとかでも同じことが言えますけど、謎が解けないのが『読者(回答者)の責任』でなく『推理材料の不足』になってしまうと答えを聞いても腑に落ちないですよね。そういうのは一切感じなかった。トリックの種明かしに至るまでの道筋にしっかりと材料は明示されていて、ミステリーとしておそろしいぐらいにフェア。それでいていつも読者の予想を圧倒的に上回ってくる。この本を読んでいて「そんなのルール違反じゃん」と思ったことは一度たりともない。とにかくミステリーとしての所作が完璧すぎる。

答えを知る前は「わけわからんな」って思う。

答えを知った後は「なんでこんなことに気がつかなかったんだ!」って思う。

それってもう、ミステリーとして最上じゃんね。


トリック自体のクオリティだけで俺がいままで読んできたミステリーのなかで最も圧倒的なものだと感じたけど、トリックがすごいだけじゃなくて物語としてのおもしろさがきちんとある。特にどのキャラクターもとても生き生き動いているのがめちゃめちゃすごい。彼らには目標とする自身の『幸福な状態』があって、みなみながそれを求める過程で殺したり殺されたりするんだな。つまりそれが動機になる。

登場人物の求むる『幸福な状態』が一見一般的なそれとかけ離れていたとしても、そういう精神状態に至るまでの理由が一般的な感覚の積み重ねであれば読者は納得できるし理解できるし同調できる。

その殺人者の異常な『幸福な状態』を、健常な読者に向けて理屈で説明するのがめちゃめちゃめちゃうまい。

だから、ゾッとするんだな。理解の及ばない凶刃は事故や天災だが、心を理解できる殺人はずっとおそろしい。


前述した通り5つの短編で構成されているんですが、そのどれもが欠けることなく最高。俺がいままで読んできたミステリーのTOP5がすべてこの5編で埋まる。

特に第4編『玉野五十鈴の誉れ』。これは、もう、とんでもない。本を読んでいて「うわっ!」と叫んでしまうなんて生まれて初めての経験ですよ。座って読んでいたんですけどバッと立ち上がってしまった。こういう表現って誇張じゃなかったんですね。こういうこと言う人ってみんなウソついてると思ってました。出先じゃなくてよかった~


なんかタイトルと表紙がおどろおどろしくてちょっととっつきづらそうですが、ミステリー初心者の私でも最高に楽しめたのでディープというよりはポップな作品だと思います。米澤穂信、アニメを京アニが制作した『氷菓』の作者なんですね。たぶんそういう青春ミステリーとはちょっと毛色は違いますが、『儚い羊たちの祝宴』はとにかくおもしろいので是非是非是非!




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走れ。

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