ヤンジャン最終面接に落ちた話①

『慎重に選考を重ねたところ、今回はご期待に添えかねる結果にーー』

そこまで読みかけて止めた。
そっ閉じである。


分かっていた。


配信審査では上位と圧倒的なポイント差があったにも関わらず、数名しか進出できない最終審査に進んだ彼女が選ばれること。


その彼女と最終審査の集団面接でたまたま同じグループになり、質問内容が明らかに違ったこと。
彼女には『水着でも出れますか?』
私には『好きな漫画は?』



察するなという方が無理である。



それでも、結果が来るまでは私はファイナリストだから。可能性はゼロじゃないから。希望を持っていても許されるから。




そんな私の期待を一瞬で砕いてきた。


分かっていた。

それでも、ショックだった。

1ヶ月の審査期間、身を削って取り組んできた。配信も、それ以外の時間も。

だけどそんなことはどうだって良かった。

リスナーの皆様にいただいたポイントや応援が、ただただ気掛かりだった。


どうしよう、私、とんでもないことをしてしまった。



そう思った瞬間、私は(普段なら1分でも時間を稼ぎたくてノロノロシャットダウンする)仕事用のPCの電源を落とし、(普段なら超丁重に扱うお気に入りの)アウターを引っ付かみ、(普段なら出せない大きな声で)お疲れ様でした!!!!と叫んだ。

習慣的にイヤフォンを付け、曲をランダム再生する。最初に流れてきたのは乃木坂46の『チャンスは平等』。なんて日だ。いつもは力になるその曲が、今日は遠く感じた。
(蛇足ですが、最推し山下美月様の卒業シングルです。顔がいいので100枚買ってください。)

ひたすらに家に向かって足を動かし、玄関の扉を閉めて、詰めていた息を吐いた。



分かっていた。
でも、『分かった』と受け入れることは出来なかった。
玄関に座り込むこと1時間。未だに分からなかったが、リスナーさんに結果は報告しなければ。そうだ、文章を書けば受け入れられるかも。…………………………………………!無理!分かんね!!!!!!!


ランダム再生しぱなっしだったApple Musicから流れていたのは、日向坂46の『青春の馬』。疲れた体が何かを覚えていくはず。秋元康がそう言っている。そうだ、一旦疲れよう。

そこからは早かった。ランニングウェアに着替えるやいなや家を飛び出して、とりあえず全速力で走った。息が切れて、口の中から血の味がして、水溜まりに足を突っ込んで、謎の遊具が置いてある公園をぐるぐる回って、相手もなくシーソーにまたがった。………………………………うん、無理!!分かんね!!!!!!!!


そこで結果を報告した皆様のリアクションが気になりだした。足が落ち着かないからと、シーソーから移動したブランコを強めに漕いで、Xを開いた。


『美少女期間終了のお知らせww』『案の定すぎて草』『FF外から失礼します。参考までに、どんなお気持ちが教えていただけますか?』うんうん、アンチくんたちは今日も元気。…ん?最後の奴、テメーは初見だな?いらっしゃいませ。さようなら。


そんなアンチ達より気になったのが、応援してくださった方の声である。『お疲れ様、頑張ったね』『魅力あるから大丈夫』『次頑張ろう』…中には、審査員の方にバチバチにキレている方もいた。ちょっとふふっと笑ってしまった。

しかし、私がいただいたポイントは1,683,970ptである。簡単に『じゃあ次』と言えるポイントではなかった。私以上に、おそらくリスナーさんの方が。

またいたたまれなくなって、公園を飛び出し、何かやたら草が生えている道を抜け、爆笑しているインド人とすれ違い、やたら香辛料の香りがする道を走りきったところで、我に返った。



…ここ、どこ?



時計を見れば走り始めて3時間半。駅伝でもそんなに走らん。運動不足のOLが急に走っていい距離じゃない。もう足もパンパンだった。


でも、まだ足りない。感情が収まらない。どこか広いところで、自分の矮小さをひしひしと感じて打ちのめされたい。誰か私を責めてくれ。


広くて、叫び回っても許されるところ。私のダメさが際立つような、綺麗なところ。






…OKINAWA、、?




沖縄!!!!!!!


いこう、いましかない、すぐいこう、仕事?私がヤンジャンに懸けた思いを考えればそんなもの無。



かのジ○リで、『40秒で支度しな』と言われた少年は30秒で支度をして少女を救う旅に出た。私はきっちりみっちり40秒で支度して私を救う旅に出たのであった。(おーむさん引用)






ちなみに、3時間半かけて走った道は、タクシーで帰ると25分くらいで家に着いた。近。世の中とはそういうものである。


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