迷曲7 「一発屋ブルース」【嘉門達夫】

ーー自身の運命を謳ったかのような迷曲。口は禍の元? ーー

【一発屋ブルース:嘉門達夫】

 嘉門達夫はコミカルソングの大王的存在だ。いまでも替え歌番組でよく見る、老若男女問わず知名度が高い。

 その嘉門達夫は過去に面白い曲を発表している。それが今回取り上げた「一発屋ブルース」である。その内容は過去の一発屋を皮肉ってブルース調に仕立て上げたもの。ざっと聴いてもすぐにどの歌手のことかはすぐわかる。

 久保田早紀の「異邦人」、狩人の「あずさ2号」、クリスタルキングの「大都会」、松村和子の「帰ってこいよ」、アラジンの「完全無欠のロックンローラー」、雅夢(がむ)の「愛はかげろう」、円広志の「夢想花」、堀江淳の「メモリーグラス」。そしてなぜかB&Bとザ・ぼんちも巻き込まれている。当時は歌手のほうが一発屋扱い強めだったようだ。

 その皮肉っぷりはまあ笑えるは笑えるが、当事者としては気分がよくないはず。敵を作ること覚悟であっただけに勝負師の感もある。現代では炎上騒ぎになること必至だろう。嘉門達夫は勝手にシンドバッドを替え歌にして桑田佳祐に一喝されるなどトラブルメーカーでもあった。

 この曲が収録された『お調子者で行こう』(これもサザンの人気者で行こうのパクリ)はこの曲と「業界人間ベム」が問題となって発売禁止になった。よって上記の動画はかなり貴重。消される前に聴いとかないとソンソン。

 さて、この曲に対する評価だが、意外にもサウンドがかっこよくまとまっている。ドロドロしたブルースではなく少々ロックの味付け。歌詞も短いフレーズでビシッと皮肉を飛ばす。曲そのものは悪くないどころか好曲の部類だと感じた。

 だが、やはり歌詞の内容がアウトに思う。発売禁止なのは少々厳しく思えるが、おそらく自主規制であったのではないか。訴えられたらアウトなのは見え見えだからだ。

 そして最大の皮肉は、嘉門達夫自身がこの類の仲間入りを果たしてしまったことである。昭和の文化やサブカルなどをかじっている私でさえ、嘉門達夫のヒット曲はというと「チャラリーン鼻から牛乳~」くらいしか思い浮かばないのだ。20代以下で嘉門達夫といったら恐らくもう「替え歌おじさん」のイメージしかないのである。

 しかし唯一無二の存在であることには変わりなく、コミカルやパクリで歌謡界、芸能界を生き抜いてきた人はいない。歴史に名を残せる人物であると評してこのnoteにも取り上げることにした。ただ、やはり迷曲ですな。本人も納得しているかもしれない。

          【今日の迷歌詞】

前の曲を覚えられない あの人はいま どこへやら

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