名曲305 「月光仮面」【ボニージャックス/ひばり児童合唱団】[月光仮面]

ーー原曲をよりスタイリッシュにアレンジさせた神曲ーー

【月光仮面 OP 歌詞付】

 月光仮面は日本のカルチャー史に残る作品である。これは古いからという理由で知らないとはいわせないほど、偉大な作品だ。日本テレビアニメの最古の作品が鉄腕アトムだと知っている人は多いはず。では最古のテレビシリーズ特撮作品は何か。それがこの月光仮面なのだ。

 こちらが1958年に放送されていた特撮版の月光仮面主題歌である。近藤よし子、キング小鳩会が歌う、非常にゆったりとしたザ・昭和。うーむ、戦前くらいの感覚に陥りそうなほど、化石と化したメロディーだ。しかし味はしっかりしており、これはこれでなかなかによい。正直、元々はこちらの曲を紹介する予定であった。

 それがつい最近、今年になって発掘したのが今回のアニメ版である。実は特撮のほうの月光仮面は知っていたのだが、後にアニメ化されていたとは知らなかったのだ。存在感が薄かったのも無理はなく、あまりヒットしなかったようだ。

 特撮作品をアニメ化するのにはかなりの英断が迫られる。というのも特撮だからこそよかった臨場感(リアル)、迫力がアニメだとどうしても架空で薄っぺらく感じられてしまうからだ。特撮は身の周りにありそうな現実を、突如現れるヒーローと敵役によってワクワクを引き起こす。アニメだと「どうせお話の世界」だからとスケールまで小さくまとまってしまうのだ。この現象はウルトラマンや仮面ライダーでもそうで、それぞれヒットはしなかった。

 特撮の月光仮面はアクションシーンこそ当時のクオリティではあるが、だからこそ現実的であったのではないかと感じる。いまは爆薬を使って派手なアクション、スタントが繰り広げられる。それはそれでかっこいいのだが、どうも架空寄りの世界観だ。月光仮面は普通に戦って、普通に悪を懲らしめて去っていく。我々が想像できるアクションだし、見た目もチープだから子どもが真似しやすい。スカーフ1枚でヒーローに早変わりだ。だから身近に感じられて、当時の子どもたちのヒーローになれたのだと思う。ある意味、理想形ではないだろうか。なんでも当時の視聴率は平均40%だったとか。

 しかし悲しいかな、当時あまりにも流行してしまったために飛び降りでケガをする子が続出したらしく、悪影響の批判を浴びて打ち切りになってしまったようである。社会現象になると決まって負の側面がクローズアップされてしまうのはいまも昔も変わらない。恐らくいまならヘルメットなしでバイクに乗るなとクレームが殺到していることだろう。憎むな、殺すな、赦しましょう。

 粋なのは月光仮面のオープニングのテロップ。配役で、月光仮面:?とされているのだ。だから特撮版のオープニングは「月光仮面は誰でしょう」というタイトルになっている。うーん、そっちのほうがタイトルは好み。歌詞もかっこいいワードが散りばめられている。

{どこの誰かは 知らないけれど 誰もがみんな 知っている 月光仮面の おじさんは 正義の味方よ よい人よ 疾風(はやて)のように 現れて 疾風のように 去ってゆく 月光仮面は 誰でしょう 月光仮面は 誰でしょう}

 しかし、アニメはこれをよりポップに現代的に(化石からという意味で)まとめ上げた。曲のクオリティは遥かにこちらが上回るといっていい。アレンジを施したのは三沢郷。当時の大人は誰もが知る曲だっただけに勇気も必要だっただろう。いい仕事をされましたな。

       【今日の名歌詞】

月光仮面は 誰でしょう 月光仮面は 誰でしょう





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