見出し画像

舞台好き女子大生がロンドンの小劇場で働いてみた Day1


私は今、ロンドンの大学に1年間留学をしています。
数ある候補からロンドンを選んだ理由はただ1つ、「ミュージカルが観れないと生きていけない」から。

でも、日本の大学の専攻は国際政治。
観劇はあくまで趣味であり、お仕事にすることは考えていませんでした。

ただ、ロンドンで毎週のように劇場に通って改めて感じたこと。舞台の上で繰り広げられる世界が、尊くて愛しくてたまらない。
たっくさんのアーティストさんの傑作の集合体であり、2度と再現不可な生の芸術。キャスト、スタッフ、観客、全員の熱量が造る劇場という空間。
「目の前の舞台に人が立って、お芝居/ミュージカルが上演されている」という事実だけで泣けてしまうほどに、舞台に改めて心を奪われました。

自分も舞台製作の一手を担いたい。
気づいたら、舞台業界でのお仕事に魅力を感じるようになっていました。

行動力にだけは自信のある私、ロンドンにいる間にできることはないかと、舞台業界を目指す学生向けのプログラムを探しまくりました。

その中で、有難いことに、1つの劇場とご縁が。
ロンドン中心に位置する、キャパ100席以下の、オフウエストエンド劇場です。プレミア作品が多く上演されています。

履歴書(CV)と志望理由書の1次審査、オンライン面接の2次審査を通過して合格を頂いたのは、volunteer placement というポジションです。
日本語訳すると、無給職業体験的な。インターンに近いです。
始めの1ヶ月は案内係のお仕事を兼務して劇場運営に関わり、その後は stage manager なりディレクターなり照明なり何なり、各々の興味に合わせて、アシスタントとして、またはシャドーイングをして、お勉強をします。

前置きが長くなりました。以下、お仕事初日の記録です。




カルチャーショックの連続でした。

まず、新人さんの扱い方が日本と全く違う。
出勤してすぐに、事務所にいた照明さんと、インターン生(私のポジションとはちょっと違います)にご挨拶。
その後、劇場の責任者である general manager さんに劇場内を案内してもらい、避難経路や消化器の場所等を確認しながら、ステージまでの経路やドレスルーム、stage manager さんや照明・音響さんのお部屋等を見ました。
事務所に戻り「一応送るけど読まなくてもいいよ」とマニュアル的なものをメールで送ってもらいました。
これにて新人研修終了。

「新人さんだからお世話してあげなきゃ!説明しなきゃ!」感は皆無。
けど決して厳しい訳ではなく、聞いたら優しく教えてくれます。
「何したら良いですか?」と言えばお仕事をもらえるけど、指示待ちの受身姿勢は空気同然。親切心で次やるべきことを教えてくれる人もいないけど、他方で、何もせず突っ立ってたところで「何やねんあいつ」「仕事できないやん」って思う人もいないんです。わかりますか、この感覚。
良くも悪くも、ほんっとうに他者のことを気にしない。

劇場各所を軽くお掃除した後、事務所でお茶を飲みながら雑談。
開場が近くなったらゆるゆると準備開始。
初日の私のお仕事、ボックスオフィス。1人。ん…???
小劇場なので、そもそもインターンと volunteer placement の2,3人でボックスオフィスとお出迎えを分担するのですが、え、初日にして1人でやるんですか…??
そんな心の声を口に出すことはなく、お仕事をざっくり教わり、「何かあったら呼んでね!」と言われ、気づいたら1人でボックスオフィスに立っていました。

お仕事内容としては、お客様からお名前を聞いて、予約リストにチェックを入れ、チケットをお渡しします。プログラムも売ります。
お客様全員ここで引き換えるので、ノンストップでお客様対応してます。

問題①、英語の名前に馴染みがなさすぎる。
言われた名前の綴りが全くわからない。全然聞き取れない。そもそもそれが名字なのか名前なのか、フルネームなのかもわかんないし。
リストから探すのも一苦労。ほんっとうに、頭抱えました。

問題②、英語での接客方法が全くわからない。
こういうシチュエーションで使うフレーズ、何にも知らない。
「かしこまりました〜」に当たるフレーズだけでもなんか無駄にいっぱいあるんですよ。英語って相槌・リアクション系の語彙がすごい豊富。
日本と違ってお客様との距離感がすごく近く、もはや友達みたいなテンションだけど、ネイティブの年上の人相手にそんなフランクに話すの慣れてないし。

General manager さんや他の placement の人も気にかけてはくれるけど、それもお客様の目の前で「どう?大丈夫?」って大声で言われます。
サービス業精神的な、お客様を嫌な気分にさせないように!みたいな気遣いが、一切ない。全部オープン。だからこそお客様と雑談とかもしちゃう。
敬語がない、上下関係がない英語だからこその文化ですね。
「礼儀」「失礼」みたいな概念がそもそもないような。
カルチャーショック。これに尽きます。

無事に開演し、事務所に戻り、少し事務作業をしながら雑談。
勤務中にこんなに雑談してていいの?!というのもきっと日本人の感覚。
ここでまた驚いたのが、上司に当たる general manager さんとの上下関係が一切ない。あるのは知識と経験の差であり、堅い上下関係ではない。
雑談の流れで普通に general manager さんに行ってた大学とか聞いちゃうし、general manager さんも作業しながら「これってどうしたらいいのかなあ?」みたいなのを私たちに聞いてくるし。
言語化し切れないですが、なんかもう、違いますよね、日本と。

終演後はプログラム販売をしながらお見送り。
これにてお仕事初日終了です。

感想①、人が優しい。
英語が堪能ではないことを心配する私へのフォローが温かい。
話も積極的に振ってくれる。
本日満席だったのですが、ボックスオフィス大変だったね〜よく頑張ったよ〜って褒めてくれる。
今までネイティブの人と話すことに抵抗があったのですが (お客様や劇場関係者を含めてネイティブしかいません、何で私は受かったのでしょうか) 、みんな私の英語を理解して聞いてくれる、普通に会話が成立する、そんな小さなことが嬉しかったです。

感想②、今後が不安。
専門知識や経験がない上に、英語に壁あり。
本当にこれからやっていけるのか…?不安です。
他の子みたいにお客様と仲良く雑談できるようになるのか…?
General manager さんと劇場運営を議論できる日は来るのか…?
1ヶ月後、アシスタント or シャドーイングできるのか…?
本当にここにいるに値する人間なのか、気弱になってしまう。

けど、ロンドンの劇場で関係者としてお仕事ができていること、こんなに近くでオフ・ウエストエンドの劇場や舞台をお勉強する機会をいただけたこと、望んでやまなかった、夢のようなことです。
英語の勉強にもなるし、英語を勉強するモチベーションにもなる。
ロンドンの舞台業界に繋がりもできる。
必ずや今後の自分の財産となる経験なので、踏ん張ります。

現場からは以上です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?