塗りつぶしの旅「沼津」

沼津市は静岡県の人口19万人ほどの町。おそらく合併前の清水市と同じくらいで、有名な漁港もあり知名度も高い。
ではなぜこれまで足を踏み入れた事もないのか?理由らしい理由もないが、まず新幹線が止まらず、素通りしてしまっていたからくらいしか思い当たらない。
「塗りつぶしの旅」は、今まで行ったことのない町や県をただ走破することのみを目的とした旅である。
本来は朝昼夜の顔を見るために一泊はするべきだが、ここは日帰り圏につきさくっと行ってきた。

さて駅に着いた時はすでに夕方に差し掛かろうとしている。というのは暑さを避けて遅めに出発し、小田原の駅ブラもしてから各駅で熱海を経由してきたらそうなってしまった。それでも日差しは容赦無く照らしてくる。

駅前は普通の小地方都市の雰囲気で、新しめの垢抜けた駅ビルや商業施設などはあまりない。ある意味昭和感を残している。
駅前からおなじみのアーケード街と、それと並行する街路が整備されている。
思ったより規模感がある。何だか、駅からすぐに潮の香りがして海が望める、というイメージを持っていたがすぐに打ち崩された。
実は沼津駅から港まで2.5kmくらいあって、予備知識がなかったので行けども行けども海に近づく気配がない。暑いのでヘコタレそうになったが、30分ほどで賑わいのある漁港にようやく着いた。

その途中で感じたこととしては、沼津の街は骨格としてはなかなかうまく出来ていて、海と街と河がほどよいバランスで配置されていて雰囲気は悪くないのだが、いかんせん街の活気というのが感じられない。長大なアーケード街も、7割くらいがシャッターを降ろしている。その周辺の商店街もおなじようなものだ。
清水に行った時も「寂れてるなあ」と感じたのだが、やはり共通したものがあった。
人通りも、まばらというほどではないけど、賑わっているという感覚はない。
賑わいがようやく感じられるのが、観光スポットである沼津港周辺に着く頃だ。

沼津港は良い感じに観光化されていて、海鮮丼などを提供する店が軒を連ねているのだが、他の著名な観光漁港と同じく、昼過ぎには多くの店が閉まってしまう。これは沼津港のみならず残念な傾向だ。
それでも沼津港は清水港などと比べると店の数が多く、人気を博しているように見えた。

面白いのは、漁港の入り口に巨大水門があり、上が展望台になっている。登るためにはチケットが必要だが何と100円という安さ。大変良心的だし、ここからは絶景を眺めることが出来るので、自信をもってお勧めできるスポットだ。
ここぞとばかりに財布からお金を出すのに躊躇する料金を設定する観光地が少なくないのだが、この商売っけの無さに微笑ましく感じた。

ちなみに水門上部は展望台のみで、特に販売や飲食などが提供されているわけではない。このシンプルさも良い。

帰り道は当然バスを使った。本数は20分に1本程度だが終バスが早く、20時になるともう便はなかったと思う。
かつては、(と言っても100年くらいだろうか)小さな蒸気機関車が駅と港をつないでいたそうだ。
何と、今よりも利便性が高かったのだ。
今でも、駅と港を自然に導く交通手段(MRT等がベスト)があれば観光業は盛り上がるし、市民にとっての利便性が高まるのにと思う。

沼津は知名度の割には三島、富士の中間で新幹線が止まらず、戦後の発展に不利が生じた。その結果なのかどうか分からないが、見たところ目覚ましい発展や活気があまり感じられない。
比較対象としては、同じ人口規模の小田原市、東京都立川市、甲府市あたりになるだろうか。
しかし、風光明媚であり自然と街の絶妙なバランスを保った新・生活都市としてのポテンシャルは十分に持っている。
海沿いの湿気の高い気候を問題としなければ、リモートワーク拠点としても有望かも知れない。
ただ、いかんせん自分にとっては商業施設がないと・・・というのがあり(別に買い物が好きなわけではないのだが、欲しいのは賑わい感と安心感なのかも知れない「いつものアレがあるー」みたいな)本格移住は躊躇われるかも知れない。

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