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フィジカルで聴く 90年代の邦楽 ②(ソロシンガー・男性編)

90年代が青春だった自分にとって、この時代のアーティストというのは今も特別だ。青春時代を伴走してくれた音楽たちは自分の心に色濃く染みつき、記憶の奥深くその様々な想い出とともに定着している。そして、音楽の聴き方も受け取り方もまだまだ未熟だったその頃に聴いていたそれらは、年月を重ねてから聴くことで、青春のほろ苦さと人生を多少なりとも重ねた経験とが同居した不思議なものとなる。これは今現在オンタイムでシーンを走っている音楽でのリスニング体験では味わえないものだ。

今回は、そんな自分にとって特別である90年代音楽をフィジカルで振り返る企画、「フィジカルで聴く 90年代の邦楽」(ソロシンガー・男性編)です。あれこれと抜けている重要アーティストがいるかと思いますが、個人的趣向ですのでどうかお許しください。


佐野元春
「The Circle」(93)

ジャケも好きだ。
海外アーティストのアルバムのような解説が嬉しい。

佐野元春が90年代に出したアルバムは、「Time Out!」(90年)「Sweet16」(92年)「The Circle」(93年)「FRUITS」(96年)「THE BARN」(97年)「 Stones and Eggs」(98年)の計6枚。これだけのアルバムをリリースできる人気と作曲能力がそもそも凄い。どれも素晴らしいアルバムで、この中から1曲を選択するのは正直無理。なので、自分にとって思い出深い曲としてこの曲をチョイス。アメリカの大学をドロップ・アウトして失意を胸に帰国した直後、とりあえず時間をやり過ごすために始めた夜のコンビニバイトに行く車の中でいつも聴いていたのが、「トゥモロウ」から「レインガール」。なんでだろう、この2曲を繰り返し聴いていた。あの頃の想いがよみがえる。
「レインガール」



小沢健二
犬は吠えるがキャラバンは進む(93)

印象強いジャケ
このアルバムに対する本人からのメッセージが。
フィジカルならでは。

フリッパーズ・ギターについてはアルバム3枚どれも無茶苦茶好きだった。けれども正直に言うと、彼等のアティテュードがどうしてもスノッブに思えて、自分の存在を、彼等の音楽を好きでいる自分さえもその存在を馬鹿にされているように思える事があり、心酔することが出来なかった。そんな中、解散後にリリースされたこの小沢健二のアルバムは心に響いた。非常に文学的に感じた。一番好きなのは「天使たちのシーン」だったが、音楽的に好きになったのはこの曲。まぁ、ラヴィン・スプーンフル 「Darling Be Home Soon」のパクリ?いや、オマージュはフリッパーズ時代からの得意技として捉えよう。
サブスク未解禁(2024,2,24現在)
「カウボーイ疾走」



コーネリアス
the first Question award(94)

このジャケデザインやロゴ、当時めちゃくちゃオシャレだと思ったなぁ…。
インナーもトータルデザインされていてオシャレ。

結局なんだかんだ言ったってこの桁外れの器用さは天才的であり、パクリでもオマージュでもいい、この人たち(フリッパーズという意味)のお陰で自分の音楽知識の幅はとても広がった。結局これを聴いて、ジャミロクワイを知り、え⁉こんな事やっていいの?と思いつつも、アシッド・ジャズにのめり込んでいったり、遡ればフリッパーズからネオアコを聴き始めたりとやはり自分にとってはとても重要なミュージシャンであることは変わりない。
「Raise your hand together」



沖野俊太郎
hold still-keep going (95)

このジャケ好きだったなぁ。
当時はこの広げるタイプ、結構主流だったな。

ビーナス・ペータが好きだったので、沖野俊太郎のソロは当時即入手した。すでに声が洋楽(笑)。
センスの塊だな、と思いながらもUKロックテイストやアシッド・ジャズテイストのノリまで、と少々幅が広すぎる気もした。どれも曲はとても良いので今でも飽きずに大好き。
「The Spiritual Rising」



岡村靖幸
禁じられた生きがい(95) 

この独特の色使い!
歌詞カードの文字列見ていても面白い。

強烈なグルーヴ。どんなにプリンス好きでも邦楽でこのノリはなかなか出せないと思う。歌詞カード見ないと歌詞なんて何言ってるのかわからないところもあるし、見ても意味わからない(笑)。でもとにかくとんでもないグルーヴ感と無条件に格好いいのはわかる。
「青年14歳」



斉藤和義
Fire Dog (96)

初回ボックスケース
初回限定ボックスケース。中にはミニポスターまで。

名曲が多いアルバム(この人のアルバムは他にもそんなのだらけ)。「空に星が綺麗」「大丈夫」「桜」など、メロディーメーカー斉藤和義の柔らかいプラスのオーラを纏った数々の曲たちに元気をもらった。
そして、このアルバムはギタリスト・斉藤和義、ドラマー斉藤和義の素晴らしさも際立つ(ベースやピアノもやっているので、そのマルチっぷりが凄い!)。個人的には斉藤和義のドラム、かなり好きだ!レニー・クラヴィッツのようだよ。
「空に星が綺麗~悲しい吉祥寺」



谷口崇「秘密の海」
becoming (98)

良いアルバムだと思うのだが…
フィジカルはやっぱりクレジット見れるのが大きい

めちゃくちゃ好きだったのだけれど、あまりにクセが強いヴォーカルが故に売れなかったのだろうか。8cmのシングルCDでも持っているが、この曲は本当に谷口崇の世界観を表している素晴らしい曲だと思う。
「秘密の海」



スガシカオ
FAMILY(98)

このジャケも好き
クレジットみて、スガシカオの凄さを改めて思い知らされる。

デビューアルバムの「Clover」も凄いと思ったけれども、2ndの「Family」は決定的だった。まず1枚のアルバムに全部収めてしまうのはもったいないくらい凄まじく全曲良い。そして声も反則級なうえに歌も上手く、恐ろしく歌そのもののリズム感がある(ように感じる)。アルバムのギター・ベースはほぼ本人が弾いていてしかも格好いい。そして歌詞もよく、言葉のリズムとチョイスも凄い。もうファンクが染み付いている感じ。そりゃ今でも一線で活躍するだけあるよなぁ。
この2曲をチョイスしたのは、曲が素晴らしい上にドラムが非常に良いから。「ストーリー」は山木秀夫。「愛について」のサンプリング・ソースはあらきゆうこ。いやぁ、今聴いてもマジで格好いいわ。
「ストーリー」「愛について」



高橋徹也
ベッドタウン (98)

インパクト強いジャケ。
アルバム全般、生楽器による演奏と知り嬉しくなる。

とてもいいアルバムなのだけど、売れなかったのだろうか。メジャーラストのアルバムだったようだ。ただ自分もこのアルバムは全曲好きで猛烈に聴いたのだが、実は他のアルバムは聴いていない。それでも日本のSSWアルバムでトップクラスに好きなアルバム。
「シーラカンス」



小林建樹
曖昧な引力 (99)

ソロアーティストらしい良いジャケ。
参加アーティスト知れるのがやっぱりいい。

ブランキーが好きだったので、最初は歌声がベンジーみたいだなと気にかかった。アルバム聴いてみたら格好良くて、1stと2ndにハマって聴いていた。特にこの1stはこの曲以外にも「満月」「Nervous Colors」など好みの曲が多い。一番好きなのは、この「Sweet Rendez-Vous」。クレジットみたらドラムは川村智康。何が格好いいのかわからないけれど、この人のドラム好きだな。
「Sweet Rendez-Vous」

90年代のSSWが産み落とした数々の名アルバムは、今でも自分の中で存在感が大きい。青春時代を伴奏してくれた音楽たちに、30年の時を経て改めて感謝を。


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