蛮族700字文体シャッフル企画について

「蛮族700字文体シャッフル企画」

……知らない人からしてみればチンケな文字列にしか見えないだろう。

ルールなどは下記のリンクから確認してくれればいい。
大雑把に説明すると、SCP財団のメンバーの中で、あるdiscordサーバー、通称蛮族鯖に加入している人たちが700字以内で文章を書き、それが匿名で公開されるというもの。予想期間内にその文章を書いたのは誰か、当て物をするのだ。

今まで、コミュニティ「蛮族」だけでなく全てのSCP財団メンバーに向けたシャッフル企画も幾度あったが、毎回寄稿者は20人、多い時は40人にも及ぶ、そこそこ大きな催し物だ。

ちなみに、作者を当てることがメインであるため寄稿者が増えれば増えるほどクソゲーになる。なんだこのエンドコンテンツ

このnoteはそんなシャッフル企画に参加した私が如何にして酷い作品を書いてしまったかを弁明するものであり、言い訳以上の一切の意味を持たないことを念頭に置いていただきたい。



まずは、実際に私が書いた文章を以下にコピペする。(参加番号は18)

あるところに、一羽のスズメがいた。このスズメはふだん、他のスズメたちと同じように稲を突っついたり、電線の上で鳴いたりして過ごしていた。
ところがある日、いつも通り田んぼに稲を啄みに行くと、見慣れない顔がいた。それは農家が立てた案山子だったのだが、スズメは咄嗟に 「人間だ」 と思った。まだ雛の頃、親スズメは口を酸っぱくして 「人間には近づいちゃダメだよ。捕まえられて丸焼きにされて甘〜いタレを塗りたくられちまうからね」 と言っていた。スズメはそのことを忘れていたわけではないのだが、どうにもこの人間のことが気になって、遂に麦わら帽子の上にちょこんと乗っかった。すると、そよそよ〜っと風が流れて、金色の稲が波打つのがよく分かった。電線よりも低くて、地面より高いこの場所がひどく気に入って、同時に毎日この高さから稲を眺めることができる人間のことを羨ましいとも思った。
それから毎日、仲間のスズメが引き止めようとするのもかまわずに案山子の麦わら帽子に乗って景色を楽しむようになった。徐々に、人間は怖い生き物ではないと思い始めた。
ある日、スズメが田んぼへ飛んで行くと、案山子が倉庫へと担がれているのが目に入った。スズメはぎょっとして、その勢いのまま倉庫に飛び込んだ。ところが、農家はスズメが迷い込んだなんてつゆ知らず、そのままシャッターを閉めてしまった。真っ暗な中、スズメは静かに案山子の上にとまっていた。スズメは、これが人間ではないということを理解しつつあった。案山子の頬を啄むと、綿が飛び出る。スズメはそれを飲み込んだ。案山子とひとつになったような穏やかな心で、黄金色の景色の中、スズメは意識を失った。
蛮族700字文体シャッフル・ハッピーニューイヤー!


うーむ。これは。

Twitterで見かけた感想を総合すると、まあ良くはないが絶望的というほどではなかった。

しかし私に言わせてみればこんな文章を書いた作者は、少なくとも10往復以上ビンタをビシビシと食らわせてチョークスリーパーで締め上げた挙句ベランダに畳んで干す……くらいの仕打ちは受けてしかるべきだと思うのだ。


前半は昔話っぽさ、郷愁を稚拙ではあるものの最低限表現できていると言って問題ないだろう。

問題なのは後半──「ある日、スズメが田んぼへ飛んで行くと、」以降の部分だ。
もしこの部分を岡本太郎が読んだものならば、塗りつぶしたキャンバスを真っ二つにしてかぶりついてしまうだろう。

後半部分のよくないポイントをザーッと流していこう。

1, 流れが雑
まず、なんと言ってもこれだろう。読者に不親切。残り字数が100字しかないのに序破急の急を始めるのは至難の業だし、その上どう考えても100字じゃ説明不足になる展開を持ってきた。
これじゃあ読者は唐突だと思うし、作品の雰囲気からも浮いて読後感が微妙になってしまうだろう。いったいぜんたい何をしているんだ作者は。

2, 表現が浮いてる
 「黄金色の景色の中」この部分だ。前半までは昔話を意識していたこともあって比喩は使っていないし、リアルな描写を徹底していた。ところがこのタイミングで突然「スズメの脳内の情景」がなんの説明もなしに飛び出てきたのだ。
当然、読者は「えっ、閉じ込められてるのに黄金色の景色?」と困惑しかねない。これも文字数制限が厳しい中でやるべきことではなかったと言えるだろう。

3, スズメの行動が弱い
 致命的。スズメの行動に読者が確実に納得がいく動機が設定されていないので、読者を突き放しかねないということ。割と三人称でありながらスズメの主観的な視点で進んできていたのでここで突然信用を失う。阿呆です。



さて、どこが良くなかったかだんだん分かってきたことだろう。ではなぜ、ここまで自己分析ができていながらこのような作品を提出してしまったのか。

理由は至って単純。

推敲の時間がなかった!!

つまりそういうこと。

愛執というテーマ。これは私の苦手なジャンルである恋愛がメインになるし、私が前回の文体シャッフル(SuamaXからの挑戦状!)で書いた文章とやったことがもろ被りしていた。チクショー!

だから恋愛から逸らすために動物の話を書こう、そう決めた時点で締切まで残り15分!何故!元日にお題を発表して1/3を提出締切にした主催も主催

そこからはもう尻どころか首根っこに火がついたような勢いで書き進める。そして序破急の序破まで書けたところで残り5分。しかもオチは決めていない。
もうなりふり構っている場合ではなかった。勢いのまま書いて残り1分で提出──

した後に初めて全体を読み返す。

まさに「なんだこれは!」だった。未知との遭遇。悪い方のETか?

……そして私は何も見なかったことにした。

これがあの文章が生まれた全てであり、私の言い訳だ。



おわりに

なんだかんだ言ってメインは予想だし、楽しかったのは事実だ。主催者や文章を書いてくださった方々には感謝してもしきれない。

これからは何事も、時間に余裕を持って進めなければならない。そう強く思った。


……しかしそう思ったのは今までで一度や二度じゃかったので多分永遠にこの失敗はやり続ける。


しくじり文体先生
〜オレみたいになるな!!〜
[完]

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