天使のたまご 感想

駄文です。ネタバレ注意。


アマゾンプライムで見られるというので、作中少女の独特な顔にも惹かれ視聴。
のっけから表面に無数の像を纏わせた巨大な瞳と思しき機械が現れ、度肝を抜かれる。しかも蒸気を噴出し、不気味な音色まで奏でている。
息もつかせぬまま、今度は暗い寝床から真っ白な顔をした少女がむくりと起きて、ダチョウのものくらいに大きな卵を抱えて飛び出すところでスタッフ紹介。(これの正式な名前がわからない、昔の作品によくあるよね)
そこから先、開始から20分以上何もしゃべらないまま、少女の放浪が映し出される。ときどき透明なガラス瓶を持ち上げて覗き込む描写があり、ただでさえ少し不気味な顔がガラス越しだと余計に恐ろしい。

少女はあてもなく歩き回り、いったい何の目的があるのか皆目見当もつかない。街には人気もなく、陰鬱な雰囲気が漂う。セル画なこともあいまって、さらにそれを引き立てている。私はこういう退廃的なものが好きなのでかなり気に入ってしまった。

少女は戦車に乗った謎の男と出会い、行動を共にする。空中を泳いでいる影しか見えないクジラと、それを追いかけるたくさんの男達が現れる。ほかにも人間がいたんだなと思ってしまったくらいには生気のない世界なのだ。

二人は謎の塔を昇るが、道端には例のガラス瓶が延々と並べられている。やたらと登場した瓶はそういうことだったのか。男も疑問に思うが少女はまともに取り合わない。そうして連れてきた場所には、木のようなものが描かれている壁画?がある。なにか生命の樹のような宗教的な意味さえ感じる。さらに少女は鳥の死骸を見せる。ただの鳥ではなく、人間の頭蓋骨のついた巨大な天使だ。ここで男はやはりそうかとある程度予想していたような反応を返す。この男も男で不思議な存在なのだ。どこから来たのかもさっぱりわからない。いったいこの鳥は何なのだろう。

そのあと何やら男が語り出すが、いまいち内容がつかめない。唯一分かったのはノアの箱舟に関係していることだけだ。それに呼応するかのように、雨が強まりだして街は水没してしまう。

二人は焚火のわきで寝ることにしたが、先に少女が寝入ってしまう。すると男はなんとこれまで少女が大事に抱えていた卵を剣で……!
なぜこのような行動に出たのだろう。災いをもたらすような何かが卵の正体だったのだろうか。

当然、起床した少女はその惨状を見て泣き喚く。慌てて男を追いかけるが地割れに落ちて水面に触れた瞬間、大人の女性にかわり、空気を吐き出しながら沈んで行ってしまった。泡は水面にたどり着くとあの卵のようになり、大量に浮かんできた。さながらまるで産卵だ。彼女が大人になった証拠なのだろうか。成長が感じ取れなくもない。

ラストは海岸へ佇む男と、序盤と同じように浮かび上がる瞳の機械。蒸気音も従えているが、唯一違うのは表面の像にあの少女が卵を抱えて仲間入りしている。

それから映像が海岸、街、森とフェードアウトしていき最後にはそれらすべてを乗せた方舟が映し出されて終了。


あまりにも理解の範疇を超えたストーリーと、緻密に描かれた絵に脳をガツンとやられた気分である。宗教的に深い意味があるのかもしれないが、私にはわからなかった。
ただ少女のあてどない放浪は、特に見どころがあるような画でもないのになぜか目が離せなかった。空は暗澹とし、草木が風になびく、その視覚と聴覚に訴えかけてくる美しさと、少女の病的なまでの白さに卵を抱えた妊婦のような見た目のアンマッチさが不思議な相互作用を齎してやたらと心に残っている。

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