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研究成果展「閉経後乳がんに対するビスホスホネート製剤の有効性と安全性」 益戸智香子先生

こんにちは。武蔵野大学武蔵野CLS学生スタッフです。
武蔵野CLSにて研究成果を展示されている先生方をご紹介します。
3人目は臨床薬学センターの益戸智香子先生です。

益戸智香子
武蔵野大学薬学部 臨床薬学センター 講師 博士(薬科学)
修士課程修了後、病院薬剤師として10年以上勤務。2016年に本学薬学部に着任し、講師として勤務をしながら、博士後期課程を修了し学位取得。病院薬剤師という視点から、薬物治療の選択肢を拡げることを目的に研究を行っている。

研究テーマ「Meta-analysisによる閉経後乳がんに対するビスホスホネート製剤の有効性と安全性の検討」
ビスホスホネート製剤は骨粗鬆症の治療薬であるが、日本では早期乳がんの再発予防への使用が広く推奨されている。閉経後はエストロゲン(女性ホルモン)の欠乏によって骨吸収が活発になり、骨粗鬆症のリスクが高まる。それに対し、ビスホスホネート製剤の骨吸収の抑制という効果がこの閉経後の状態に対応しているため、より効果を示すのでは?と閉経後乳がんへの使用に着目した研究である。

武蔵野大学CLS学生スタッフ(薬学部5年)作成掲示物

武蔵野クリエイティブ・ラーニングスクエア   通称 : 武蔵野CLS
武蔵野大学 武蔵野キャンパス5号館にあり、学生の授業における到達目標のサポート、自学自習・グループ学習支援を主な目的として設置されています。
武蔵野キャンパス7学科所属の学生スタッフが運営。現在18名。
今年度 展示スペースを拡大して「学習成果をカタチにするとりくみ」を推進中。1階は86席 2階に54席。全館Wi-Fi・電源完備です。                                               広々としたスペースを、ぜひご利用ください。

武蔵野大学 武蔵野クリエイティブ・ラーニングスクエア【公式】
@Musashino_MCLS

海外の治療法から新たな薬の使い道発見

CLS:今回のように、閉経後乳がん後の再発予防に骨粗鬆症治療薬であるビスホスホネート製剤を使用するなど、本来の薬効ではない症状に薬を使用しようと考える手がかりは、どのように見つけるのでしょうか?

益戸:『診療ガイドライン(根拠に基づいて現時点で最適な治療などを提示している本)』を確認するようにしています。そうすると、「こんな薬がこんな病気に使用されているのだな」という処方例に気づかされます。また、アメリカ・ヨーロッパと日本で使われている薬が違う場合なども、考える手がかりにしています。

患者さんに寄り添って薬の選択を

CLS:今回の研究の中でもビスホスホネート製剤に顎骨壊死の副作用があるように、副作用は薬につきものですが、副作用と効果のバランスを考えた薬の選択はどのように行っていくべきだと思いますか?

益戸:今回の研究のように、がんの再発などは生命にかかわるため、『副作用』のリスクがあっても『効果』を優先することが多いです。一方で、今すぐ生命にかかわらない病気(例えば、高血圧など)の場合は、『効果』よりも『副作用』を重視することもあります。患者さん一人ひとりの意思や環境、身体の状況などを十分に考えて、薬の選択を行っていくべきだと思っています。

乳がんの予防薬

CLS:閉経後乳がんになる前に予防する薬など、対策はないのでしょうか?

益戸:『運動』は閉経後乳がんになるリスクを下げ、逆に『アルコール飲料』や『肥満』はリスクを高めることが分かっています。現在のところ、アメリカやイギリスでは、乳がんの発症リスクが高い女性に対しては、更年期の骨折リスクの低減を目的に使われてきた『選択的エストロゲン受容体モジュレーター』や、『アロマターゼ阻害薬』といったホルモン療法で使われる薬で、乳がんの発症を予防することが分かっています。


ご研究について教えてくださりありがとうございました。

現在ある治療薬を別の治療法に用いるという考えは盲点でした。このような研究により乳がんの予防や治療に幅広い選択薬を提示し、『副作用』と『効果』のバランスを考えて、患者に合わせた治療を行っていくことを可能にするのだと気付きました。

武蔵野CLSでは学部学科に関連したポスター展示を行っております。
ぜひご覧ください。  


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