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演技力の欠乏とその構造的な解決策

最近、秘蔵として、もしくは武蔵としての仕事をいただける機会が増えるとともに、新しくチャレンジする領域も拡大されていった。それに伴い、秘蔵、もしくは武蔵が苦手なことも前景化されてきた。

それは、演技力である。

今回は僕の演技力の現状と、解決のための施策を考察していく。

そもそも演技力は、芸人の根底に通ずる。
まだ芸人の核を理解しているなどとは到底言えないし、理解しているつもりもないが、「芸」を魅せるうえで、「演技力」は非常にvitalな一助となっている。
コントはその最たる例だが、漫才なども、「ニン」と「演技」の争いだし、その相克が笑いを生むための「共感」や「愛嬌」を生じさせる。ほかにも、平場での芸や食レポなども、ひとつ「演技」が乗っかるだけで、見やすくわかりやすく、そして面白くなる。
それほどまでに、「演じる力」は、「芸」と深い関係にある。

そもそも演技とは、「模倣」である。
「模倣」とは、「imitation」であり、人を人たらしめる能力である。
人間のことを「ホモ・イミタンス」と呼ぶ学者もいる。
人間という生物は、知能が高く、模倣する能力にたけている。この模倣する力こそが、人間を表面的な意味での地球の支配者まで上り詰めさせたといえる。

模倣という行為を分解してみよう。
「観察」→「解釈」→「再現」の3STEPである。
まずは、相手の行動を具に観察する。そして、その動きの仕組み、原理を解釈する。それをもとに、最後、その動きを自分の体で再現するのだ。

さて、武蔵の演技力はどうか。
最低である。
自分で言うのもなんだが、何を演じても武蔵にしかならない。ずっと自分がしゃべっている。大問題。

ということで、その原因を、先述した3STEPに分けて、考察したい。

①「観察」
まずもって、僕は観察能力が乏しい。というのも、あまり他人に興味がない。よく人間観察が趣味!などと宣う方がいらっしゃるが、なにも共感できない。
というと、冷たく聞こえてしまうかもしれないので、詳細に言うと、僕は、「即物的他人、唯物としての他人、実体としての他人」に興味関心が薄い。つまり、他人の物理的な側面には興味がないということだ。
僕が、相対的に興味があるのは、他人の「言葉」である。その人が何をしゃべるのか、どういった言葉を紡ぐのかに興味がある。言説空間の中で認識される他者性に惹かれる。
だから、その観察眼を演技に応用するのは難しい。むしろ、「その人がしゃべりそうなこと、思想、語彙」をまとめたり、整理したり、文章で再現するのは得意である。だから、僕は演技より脚本を書きたくなるのかもしれない。
ここで一つ伝えたいのは、興味がないだけで、面白い!とは思う。つまり、他人の物理的な側面を観察はしていないが、感じ取ってはいるのだ。

②「解釈」
さて、演技をする上での、観察ができたとしよう。次は、「解釈のフェーズ」だ。人は、千差万別、多種多様、無限を理解できるほどの脳みそはないから、仕入れた情報を一般化し、類型化して整理する。この一般化、類型化の巧みさ多様さを持つ人が、演技力にたけている人の特徴なのではないかと思う。例えば、ロバートの秋山さんが演じる「クリエイターズファイル」は、まさに、一般化と類型化の極致であり、畏れ多い。
僕は、この「解釈」のフェーズも、能力が低い。人への解像度が低すぎる。言葉に頼りすぎた人間の末路である。(余談だが、最近言葉に対するニヒリズムに陥っている。noteなんかを漢字ばかりで綴っている時点でダメダメ)
この世は、表象にも「あわれ」があり、言葉では表現できない領域など、それこそ無尽蔵にある。そこに目を向け、心震わせる必要がある。

③「再現」
「観察」と「解釈」ができていないのに、「再現」ができるわけもないが、一応、考察。
「解釈」の通りに、再現するための「表現力」が問われるフェーズだ。
物理的な制限である、筋肉や骨、関節などの身体的要因ももちろんあるが、やはり、心とそれに伴う言葉をどこまで寄せることができるのか。ここが問題だと思う。
僕なんかは論外で、「観察」「解釈」が不十分だから、「再現」が恥ずかしくなってしまうのだ。演技の時ほぼにやけている。断罪。


さて、3つのSTEPに分けて、自分の演技力、つまり、模倣の能力を考察してきた。わかってはいたが、不十分。じゃあ、どうやって解決するのか。

このような問題に直面したときこそ、一対一の解決策ではなく、パラダイムごと転換する、構造的な解決策が必要だ。(このような考え方はみなさんにもおすすめ、なときもある)。

端的に言えば、その解決策とは、「自分の今のスペックだからこそできる演技に独自性を見出し、それを必要とするマーケットを開拓すること」である。決して無理はしない。

つまり、演技力は向上させない。今の僕の演技が通用する、いな、むしろ必要とされるような領域を探す、作る方向に徹する。
なぜなら、頑張ってもどうにもならないし、僕の演技力は頭打ちであることがわかっているからだ。演技力で勝負しても勝てない人なんてしこたまいる。問題の前提条件を見直すとこのように考えることができる。


いや、でも普通に演技下手すぎる。向上するとかしないとかじゃなくて、まず、最低レベルの演技力は欲しい。ミステリーナイトでも僕の演技ひどかった。

ということで、秘蔵、コントも頑張っていくので、よろしくお願いします。


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