40才、初運転合宿日記 (1)

東京と岡山の2拠点生活を送ることとなって、生涯、運転とは無縁と思っていた私が、自動車免許の教習合宿に挑まざるを得なくなった。

そして、そこは想像をはるかに超える無慈悲な世界だったので(初日)、半ば備忘のために、日記を書こうと思います。

私が申し込んだ運転免許センターは、岡山県のとある山間にある○○市の合宿場。周りは美しい山々に囲まれて、一番近いコンビニまで20分ほどもある、東京在住の人間からするとなかなかハードボイルドな場所です。

最寄り駅までは施設の方がワゴン車でお迎えにきてくれました。生徒として集まったのはおよそ10人ほどで、皆さんもちろん若い。ほとんどが大学生くらい年齢の男女と、あとは30代の男性。おそらく私が最年長だろう。

到着した合宿場の一室で施設の説明を受け、視力検査と検温(コロナ対策)。二週間分の荷物を置いて、早速叱責を受けた。タメ口で。


「荷物そこに置かないでよ、人座るからさ。ウン。」


そういう感じか。まぁいいよ、フレンドリーなんでしょう。私だって堅苦しいのは嫌いだしな。でも初対面だぜ。


検査を終えて(両目で0.8だった。)「さぁ、まずは皆さんお腹が空いてるだろうから、昼食を食べてもらいます。」と食堂に連れて行かれる。ゾロゾロ。

食堂の給仕係は、K1のレフリーを数十年前に引退したような雰囲気の、サンドウィッチマン伊達さん似のオジサン。


「こんな時代(コロナ)だから、対面で食事させられないのよ。友達ができて仲良くしたいだろうけど、コロナ出たらオレも君達も終わりだからさ。」

「時間は厳守。あと、食べたらすぐ出る。時間は写メ取って。あと皆んなが気になってるこのタコ焼きのポスター。オジサンの息子がやってるタコ焼きなのよ。食べたい人は事前に教えてくれ。」


そういう感じか。ツッコミどころが多すぎて辛いんだが、とりあえず飯がすごく不味そうです。うわ、不味!

本当に不味い。

なにこの乾いた雑巾みたいなトンカツ。ゴムみたいなナポリタンも食欲がなくなるし、味噌汁に至っては味がねえ。

仕方なく、スパゲッティ1,2本と、トンカツを一口食べて箸を置き、iphoneを取り出すと

「この部屋では食事中、携帯を触るんじゃない。」


え?ここどこですか?オレは囚人ですか?

食堂怖い。そしてもう二度とここの飯食わない。あと、たこ焼きの営業をするな。と独り言ちて、初授業へ。ゾロゾロ。教室で注意事項を受けました。


・私語厳禁。居眠り厳禁。携帯触るな。

・トイレや体調不良で、一度でも教室の外へ出たら欠席扱い。キャンセル料徴収。

・チャイムと校内放送が鳴ったら速やかに教室へ。音楽が鳴り止んだ時に教室にいなかったら、欠席扱い。教室のドアは鍵閉める。


一つ目はわかるけど、体調不良で一度でも外出たら欠席なの?そして鍵閉めるってなんでだよ?「音楽が鳴り止んだ時に」ってノリが刑務所じゃん。


1コマ目の学科が終わり、実習。運転難しい。情報量が多い。聞いてはいたけれど、覚えることが山ほどある。皆んな頑張って取得するんだなぁ、免許。


老いた体に鞭打って、疲れた。さぁ寮へ。薄暗くて不吉な玄関。寮長室には気難しいを絵に描いたようなジイさんがいる。

「あの、今日からここに宿泊するものなんですけど」

「あぁ、じゃあ鍵を渡すから。ここ出る時は鍵を預けて。門限は22:30。その時間にいなかったら退学だからな。夜、チェックしに行くから。」

なんでだよ!


私のことを全寮制の高校生だと思ってない?宿泊費払ってるよな?・・・もういい、とりあえず鍵よこせ!

(私が多くを求めてるのか?生徒の大半が学生で、指導と教育の対象が子供だからそうなるの?でも我々は客だろ?私が間違っているのか?国家資格取得のためだからいいのか?)

などと、薄汚ない部屋の中、わなわな歯ぎしりをしていると、「ガチャ」

「朝は、8:00には寮を出てもらうからな。7:20に起きてるか確認しにくるから。」

なんでだよ!

というかなんで鍵持ってんだよ!あとノックしろ!


この昭和の化け物みたいな寮長なんなんだ。オレも昭和生まれだが。部屋に石鹸とかドライヤーとかないぞ。布団が化石のように硬い。部屋が汚い割りにテレビが無駄にでかくない?あ、wi-fi通ってる!ありがとう!

そうこうしているうちに一日の受講が全て終わり、陰鬱な心持ちで、岡山に住んでいる友達に愚痴をこぼすと、「じゃあ、どこかご飯行きます?迎えに行きますよ。」って。

「行く!」

行くよ。すぐ行く。ビール飲みたい。監獄から逃げ出したい。門限22:30?知らねえ!

初日から、山を降りて台湾料理を食べ、ビールを飲んで、この残酷な(普通なの?)環境を嘆き、スーパーマーケットで果物とナイフとエビアン3リットルを買い足して帰路につくも、寮長が22:30きっかりにマジで来やがって「早く寝ろよ」などと言う。ここは収容所です。続く。


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