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街頭検索依頼

あの日、青ざめた顔で『ほんとアホなんだから…アホなんだから…』と私は鏡にうつる自分を呪いながら、電車に乗っていた。
数分前、自宅最寄り駅のホームで、今日初めて行く美容院の詳しい道を確認しようとした瞬間、フリーズした…

『やばい!!!!
家にスマホ充電したままだーーー!!!!』

その日の朝は、なぜか5時に目が覚めて眠れなくなり、YouTubeを見ながら二度寝についてしまったという…起きたら、スマホの充電がかなり減っていて、出発までもう一回充電が必要になった。
案の定、スマホはそのままお留守番となったのである。

しかし前の日の夜、慌てないために場所など少し予習をしたのが良かった。
私の持っている手がかりは、
東口、10階、店名は英単語4つくらい合わせた名前という事(しかし肝心な単語は全然覚えていなかった)、そして担当の美容師さんの名前。
『これだけあればきっと大丈夫なはずだろ!!
担当の方は、確か予約が30分刻みのハードスケジュールだったから、遅れたらかなりご迷惑になる!』
と、スマホを家に取りに戻る事より、イチカバチカ前に進む方を決めた。

希望や激励の材料で、自分を元気付けている一方、それでもどこか内心、己を責め続けている部分もあり、せっかく前日から選びに選んできた移動中の楽しみの選抜本を読む余裕もなく、知恵やインスピレーションをかき集めて作戦を練った。

『自分の思う現地についたら、10階で且つ4文字英単語の店にとびこもう!
そして私の名前で予約はとれているのか、確認しよう!
それでもダメだったら、ネットカフェか交番?!で調べよう。コンビニもアリかもしれない。もしかしたら面倒見の良い店員さんが哀れに思って助けてくださるかも…』

『よし、これだ!!』と思っているとあっという間に到着した。
まずロータリーごしに、遠くから野鳥の会のように、そのエリアに建つビルの階数を指で数えた。1.2.3…8、1.2.3…9。
『まさかの10階建てのビルがない!!そんなバカな』と、ビルの下まで小走りに行き、案内の表示を確認し続けた。
『もしかしたら、屋上に後付けで設置された店かもしれない。』
よく考えると全くそんなわけないのだが…じりじり焦り始めていた。

結局10階のビルはなく、雑居ビルをひとつひとつ確認したが美容院はまったくなかった。
並びに家電量販店があり、『あ!ここならパソコンあるかも!』と店頭のソレはネットにつないでいる訳がないのに…もう判断力まで失われつつあった。

こうなったら次のB作戦にうつる!
ネットカフェか交番かコンビニか参りましょう!!
しかし…こんな時に限って、どれもこれも見あたらず。何のための都会…詰んだ。


しかし、最後まで諦めなかった。
ほんとの万が一の時のために、心の奥底で温めていた最終手段にでた。
つかつかつかと、待ち合わせ中らしき女性に近寄り、脳よりも体が勝手に喋り始めた。
「あの…スマホを家に忘れてきて、行きたい場所がわからなくなってしまい、すみませんが調べていただけませんか?」
女性は、当初急に知らない人から話しかけられたせいか、怯えたような表情だったが、すぐに「あ、ちょっと待ってくださいね」と手に持っていたスマホで調べてくれた。
「○○○○○さんのいる美容院です」ここへきて私の滑舌の悪さが、スムーズな検索の邪魔をし、なかなか苗字が伝わりきらなかった。
1分後、「近いです…多分ここの裏です!」とお姉さんが裏のビルを指差し、重々お礼を言って私は駆け出した。
そして、色々あったのにも関わらず、オンタイムぴったしで私は間に合ったのである。



そして毛先だけ切る予定だったが、苦労して来た甲斐があるからと、急遽思いっきりショートヘアに大盤振る舞いに髪を切った私であった。
こうして、上記のショート村田が爆誕した(隣は友人ELLY)。
そして、同じ日に斉藤瞳も美容院へ行ったと知り、運命的なものを感じた。

斉藤村田の密会まで、あと4日!!!!

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