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ミュージカル『ヴィンチェンツォ』をみて

ミュージカル『ヴィンチェンツォ』をみて

1ねんBくみ むらさぎ


 お世話になっております。富田鈴花ちゃんのオタクです。このたび、弊推しの長年の夢であった「ミュージカル出演」が叶うということで、御作品を拝見させていただく運びとなりました。

 アイドルオタクといえば、推しメンを目の前にすると視野が肉食動物級に狭くなる生き物でして、ぼくもご多分にもれず17公演3時間半富田鈴花ちゃんの一挙手一投足だけをこの網膜に焼き付けて帰るぞという強い意志を持って劇場に足を運んだわけでございます。

 そしたらちょっと待ってむりやばい、まぢ登場人物全員好きになっちゃったんだけど(笑)

 弊推し演じる激アツプリティ喜怒哀楽努力値全振り女ことチャヨンはもちろんですが、クールで冷酷な中にも暖かみとお茶目さを隠し持つ「男も惚れるぜ」ヴィンチェンツォ先生、子犬のようなあどけなジュヌから突然サイコ腕時計コレクターにメガシンカするハンソク、広辞苑で「愛すべきバカ」って調べたら1番最初に載ってるでおなじみのハンソ、殺伐としがちな復讐劇に癒しと笑いの風をそっと吹き込む事務長やアン君、仲良しのクムガプラザのみなさま、その他チャヨンパパやカサノママやヌートリア兼白衣の天使やお前が言うな社長や腹立つウサンの面々とかアンサンブルの皆様まで全部引っくるめて好きになっちゃったんだけどマジウケる(笑)。というか全員原作のキャラそのまんまなんですけどどこから連れてきた? AI?

 その結果、公演を追うごとに好きなシーンがどんどん増えていきました。というか3秒に1回は好きなシーンです。そして好きなシーンが増え続けた結果どうなったか。正解は「公演を重ねれば重ねるほど1幕ごとの体感時間が短くなっていって、大千穐楽は12秒で終わった」でした。かのアインシュタインは相対性理論を説明するときに熱いストーブの上に手を置く1分間とかわいい女の子と話す1分間は時の流れが違うでしょう、と述べたらしいですがたぶんアインシュタインが令和の時代に生きてたらってかミュージカル『ヴィンチェンツォ』の大千穐楽秒で終わったくない?w これ相対性理論wって言ってたはず。


 ところでぼくはアイドルオタクゆえ、ステージを観ながら踊り狂うのは慣れている一方で舞台芸術というものに触れる機会は少なく、同じ作品を何公演も観るというのが初めての経験だったのですが、ほんとに舞台は生ものとはよく言ったもので、公演を重ねれば重ねるほど、舞台の上での「演者」と「キャラクター」の境界線があいまいになっていき、まさに「その人」として生きているからこそ、どんどん物語や世界観に深みが出てくるんだなということを身をもって感じました。

 それはもちろん、ユチャンの死に面したチャヨンのことであったり、車椅子で息子への想いを語るギョンジャのことであったり、後悔と悲しみに明けくれるとともに親への愛情へ涙するヴィンチェンツォとそれを見つめるチャヨンのことであったり、別荘のシーンでのチャヨンやハンソの感情の爆発のことであったり、復讐シーンのヴィンチェンツォとハンソクのことであったり、チャヨンの「会いたかった」とヴィンチェンツォの「俺も」のことであったりもするわけなんですが、ぼくが言いたいのはそういうことだけではなくて、単純にキャスト全員楽しみすぎじゃね、っていう。

 そもそも最初の頃はアンくんと事務長とトトがちょっとふざけてメインキャスト2人がそれに乗ったり乗らなかったり程度だったと思うのですが、なんか公演を重ねるうちにミリはクムガの暴走機関車になるしソグドは会場の椅子に勝手に座り出すしハンソは実家の広さマウント取ったり香水会社乗っ取ろうとしたりするしレリーは謎のダウジングダンスを開発して軽スベりするしヒスは転がるしチェシンはヴィンチェンツォの靴磨くし全員どうした? 楽しいのか?

 その極めつけが大千穐楽で、ヴィンチェンツォを抱きしめたアンくんは今までの感謝を述べ、ミリの悪ふざけに事務長は「これが明日から観られなくなるのはちょっと寂しいな」とこぼし、無視され続けたハンソの「アニキ、最後くらいこっち見てくださいよ」の声に17公演目にしてやっと視線を投げかけるヴィンチェンツォ、なにこれ? もしかしておれたちが毎公演楽しみにしてたシーンを、出演者のみなさまも、おれたちとおなじように、終わるのを惜しんで、いる…………?

 しかも楽しいのは出演者のみなさまだけじゃなくて、クムガプラザ音頭(ぼくが勝手にそう呼んでるだけでたぶん正式なタイトルがあると思います)の腕振りや、ワインパーティーの手拍子&通路でのクムガファミリーの皆さまとの触れ合いなどで、ぼくたちをミュージカルの世界の一員に引きずりこんでくれるんですよ、どんなホスピタリティしてるんだこれ。根がリッツカールトンすぎるだろ。
 そして演者の楽しさはお客さんにも確実に伝播していくんだなぁと思ったのが、クムガプラザ音頭のあと初めて自然と拍手が沸き起こったあの瞬間と、大阪最終日のワインパーティーの手拍子がどの公演よりも大きかった(当社比)あの瞬間ですね。

 ミュージカル版のヴィンチェンツォって、原作と比べてもっと意図的に「家族」にフォーカスを置いていて、作品の中ではいろんな家族のかたちが描かれていましたけど、でも結局、1番サイコーの家族だったのは、この作品を愛するキャストの皆さんというデッケェ家族だったんじゃないですかね。血で血を洗う復讐劇でありながら、とにかくキャストの皆さんがこの世界を生きる生身の人間として、楽しそうにこの作品にぶつかっていくから、悲しみとか怒りとか爽快感とは違う、ある種柔らかくて暖かい感情がこの作品を観た人の心に残ったのではないかなと。
 そして、これめちゃくちゃおこがましいですけど、もしかしたら、本当にもしかしたら、その場でお客さんとしてあの世界観の一員になっていたぼくらも、デッケェ家族の一員だったのかもしれません。ヴィンチェンツォファミリー最高です。いますぐみんなでマッコリ飲みに行きましょう。


 というわけで140文字で収めようと思ったんですけど気持ちが溢れすぎて無理でした。弊推しの出演きっかけではありましたがこんな素敵な作品に出会えて最高の夏でした。
 そして、暖かいカンパニーの皆さんに囲まれながら、富田鈴花ちゃんが初ミュージカルという夢を叶え、そして駆け抜けられたこと、本当に各関係者の皆様に感謝するとともに、富田鈴花ちゃんを拝み倒したい気持ちです。富田鈴花ちゃんが悩んでもがいて苦しんで、自分の持てるすべてを舞台の上でぶつけて演じきったチャヨン、最高だったぜ。おれの一本の藁は富田鈴花ちゃんだしおれの心の中の金は富田鈴花ちゃんだし富田鈴花ちゃんと生きるこの時間がDolce Vitaです。

 そして願わくば、またあの世界にもう一度戻ってこられることを期待して。




 

 あと一生のお願いなんですけどサントラ出してください。いまミュージカルヴィンチェンツォのサントラ出して党から出馬したら政権与党取れる。そのレベルで日本国民の願いです。
 ご検討のほど、よろしくお願いします。



誇らしい推しメン、スズチャヨンーー

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