4人のアンビエントの夕べ

アンビエントってなんじゃらホイ??


特撮番組が好きでしてねぇ。
2月までやってたキングオージャー、最高だったなぁ。
先月にはファイナルライブツアーってのを観に行って来て、役者さんたちの有終の美を見届けてまいりましたよ。
彼らには今後も活躍して、一流の俳優さんになって欲しい…なんて思う一方で、オダギリジョーや菅田将暉、松坂桃李みたいに、滅茶苦茶売れてしまってその後過去の戦隊ヒーローがゲスト出演する映画や記念作品などに出て貰えなくなっちゃったりするのは、ファンの身としては寂しいなぁなんて思ったりもします。勿論、誇らしい事の方が大きいので、どんどん売れて欲しいんですけどね!

と、多くの特撮ファンは思っている筈なのですが、中には不快なファンも居るもので、特撮の現場に戻って来てくれる役者さんに対して「売れてないから呼ばれりゃすぐ戻ってくるな!」なんて意地悪く言うのを、Xなどで目にする事が有ります。
中でも「自分はヒーローだった!」を積極的に発言してらっしゃる役者さんに対しては、「食うためにヒーローに擦り寄ってる」なんて穿った目で見ている質の悪い特撮ファンが沸いてきていて、非常に不愉快です。役者さんが沢山の役を演じ、長く活動する中で、自分が好きだった作品を誇りに思っていてくれるのは良い事のはずなのに、一部の特撮ファンの濁った色眼鏡での発言は度し難いですよね。

何の話でしたっけ?


アンビエントでした。
アンビエント、は環境音楽、だそうですね。

一週間前、2日の日曜日に『4人のアンビエントの夕べ』と言うイベントを観に行きました。アンビエントの意味に関しては、その会場でググって知りましたw

アンビエントが何だか知らないのになんで観に行ったんだ?と言われれば、何度かライブを観に行かせて頂いた事もあり、また飲みに行ったり一緒にカラオケに行ったりもしたことがある、無国籍ゴスユニット、『レンダ』のメンバーのヒコさんが、その4人のうちの一人だった事。

大好きだったバンド『バチバチソニック』のベース担当で、ソロプロジェクト『SONIKOV』としても活躍する、やはり飲み会でご一緒したりもしたことがあり、お会いすると特撮の話で盛り上がったりする大好きなアーティスト、伊藤英紀さんが、4人のうちの一人だった事。

そして、残りの二人が、元P-MODELのメンバー、秋山勝彦さんと、高橋芳一さんだった事。
などが主立った理由となります。


とは言え、友達に誘われたときには一度行くのを躊躇しました。
仕事が忙しい時期だったのが一番の理由ですが、ヒコさんと伊藤さんは観たかったものの、秋山氏や高橋氏に関しては、「平沢さんに文句を言ってる人」と言うイメージがあって、さほど観たいとは思わなかったからです。


僕は平沢進と言うアーティストが大好きなんですが、およそ20年近く前になりましょうか、その存在を知ってファンになりたての頃は、彼の足跡を追いかけて、果ては彼が元々やっていたバンド『P-MODEL』のメンバーも追いかけていた時期が有りました。
その中で、中野テルヲさんや福間創さんは結構好きになって楽曲も聞いたりしましたし、音楽は既に表立ってやってませんでしたが田中靖美さんが経営されてるアジアの布専門店「ウィージャ」に足を運んでみたりしたものでした。

しかし、P-MODELの初期メンバーの一人である秋山さんに関しては、時折音楽活動をされてるのは知ってましたけど、どうも「平沢さんに悪態ついてる人」みたいな先入観がありまして、彼の音楽を聴くことはありませんでした。
高橋さんに関しては、確か中野さんの絡みで一度ライブを見させてもらった事が有ったかと思うんですけど、悪い印象は無かった筈ですが、大きなインパクトも特に無かったのか、内容は覚えておりません。
その後、数か月前かな?平沢さんのXのポストに対して不快感を表明しているようなポストを見たような気がして、高橋さんが秋山さんとユニットを組んでる事も知ってたので「この人もアンチ平沢なのかな」と思って、ならば別に見なくてもいいかな、なんて思ったものでした。

平沢さんの普段のXのポストに関しては「わけわからん」としか思って無いのでそこまで注目しておりませんから、平沢氏のポストに遺憾の意を表明していたのが高橋さんかどうかは正直ちゃんと覚えて無いんですけども。別の元Pの人だったかも。
どちらにしろ、「平沢さんに盾突くなんてケシカラン!!!!」とか常に思ってるわけじゃなくて、通りすがりで「嫌なもん見たな」程度で然程重要視しては居ないんですけども。
ただ、町で陽キャを見たら目を背けて遠ざかるし、道でギャルを見たらなるべく間をあけてすれ違うし、要は「自分と距離のあるタイプの人に敢えて近づかない」ってのと同じような理屈で、推定「平沢さんに文句言ってた高橋」さんに敢えて近づかんでもいいか、って思っただけです。

秋山さんに関しては、僕の周りで話題になると大体平沢さんに文句を言ってる記事や呟きが原因、って印象を持ってしまってるので、まぁ別に近づかないでも良いかな、で終わってました。


かと言って、ヒコさんや伊藤さんが見れるのに、「秋山高橋が居るなら行かん!!」などと切って捨てるほどに嫌いなわけじゃないのです。
平沢さんなんて身内に居たらクッソめんどくさい、近づきたくない人なのは僕でもそう思うしw

中野さんほど「観たい!」と思わないだけで、勿論秋山さんだって高橋さんだって、大好きなP-MODELの元メンバーなわけですからね。
機会が有れば勿論拝見したいのです。

仕事が大分落ち着き、友人が満席だったこのイベントで1人キャンセルが出たことを教えてくれたため、主たる動機はヒコさんと伊藤さんですが、だとすれば秋山さんや高橋さんを見る絶好の機会でもあります。喜んで参加させて頂く事にしました。

イベントの内容は、理解してませんでしたけどねw


高円寺のAMPcafeに入場し、席についてアンビエントについて調べると「環境音楽」との事。
うーん、好みじゃないかもしれんw
大好きなイエモンだろうと、筋少だろうと、ホルモンだろうとそれこそ平沢進だろうと、僕はインスト曲とかをライブでやられても嬉しくないし楽しいとも思えません。
言い過ぎました、まぁそれなりに楽しめたりもしますが、やっぱり歌の方が良いですね。

環境音楽、って事は、歌では無いんだろうな~って思いましたので、ガッカリ!とまでは言いませんが、そこまでテンション上がって楽しむイベントでも無いんだろうな~と思って挑みました。


トップバッターはヒコさん。

勿論、歌ではない音楽。スクリーンに映し出される映像とリンクしたカッコいい曲。しかし、退屈さは全く無く、一種トランス状態に持って行ってくれる中毒性がある感じ。
正直これを書いている今、その音楽は全く思い出せないんですけど、通常僕が聞いてる、それこそ歌詞がある楽曲なんかが「聞き手の心に楔を打ち込んで強く印象付ける」を目的に作られてるのに対し、棘や針、粗(そ)たる面を減らし、「音楽を聴く」と言う事に一切の力学を伴わない、心地よく、すべすべと心を流れてゆき、計算された、意識を伴わない「音を楽しむ」を流し込んでくれるような音楽だったと、その時思っておりました。


2番手は伊藤さん。

より自然に近い、澄んだ空気感、そよそよと流れる風や、優々とたなびく草花を想起させるような、優しく暖かく、音楽を聴いているのか自然の中で目をつぶっているのか、分からなくなってしまうくらいのリラックスの中で過ごす時間が流れておりました。
伊藤さん曰く、「自分の演奏の中で客を眠らせたら勝ち」と仰ってましたが、実際眠りはしなかったものの、それに近いくらいの脱力、休息感を感じる素晴らしい音楽。
まぁ僕の負けと言う事で良いかと思いますw 完敗です!
多分眠れぬ夜に、伊藤さんの今回奏でた音楽を流したら、秒で眠れると思います。


そして、3番手。高橋芳一です。
前の二人は別アプローチで最高の環境音楽を聞かせてくれましたが、この方はどんな環境音楽を聞かせて下さるのでしょうか。
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ある意味一番インパクトが有ったのが高橋さんの演奏でした。
僕の座っている席では彼の手元は良く見えず、どういう風に音を出されているのかは正確には分からないんですが、ありものの楽器を鳴らすと言うより、鉄の棒を叩いたり擦ったり、Xの投稿で目にしたのは「木枠に糸を張った」ものを弾いたりなさっていたとか。
それで聞こえてくるのは、咄嗟に頭に出てきた表現が「雑音」。
なるほど、これも「環境音」。しかも現代人工物に囲まれて生活する中で必ず聞こえてくる、金属や機械音による環境音。
伊藤さんの奏でるのとはまた別アプローチの「環境」。僕がアンビエント初心者だったから全く意表を突かれただけかもしれませんが、びっくりしました。
しかし、聞き苦しかったり不快だったり五月蠅かったり、なんて事は一切なく、そこに流れていたのは間違いなく「音楽」。
一歩間違えると「騒音」にすらなりそうな様々な音が、絶妙のバランスで寄り添い織り成し、形成された独特の「環境音」。
終演後、一緒にイベントを見たAKさんが「高橋さんらしい、一番想像が出来た」と仰ってたので、彼の活動を知る人からすれば普通だったのかもしれない演奏ですが、一度見たことが有った筈の僕は何故前回の事を覚えてないのか、自分で疑問になるくらい、高橋さんの独自性は刺さりましたね。
覚えて無かったのは無念ですが、無知であるのもたまには良い方に働く事が有るもので、知らないが故にとても新鮮でとても驚愕し、とても楽しい演奏でした。


そして4番目、秋山勝彦。
今回のイベントの中心人物なんでしょうかね、他の人の演奏前に出て来てMCをなさり、紹介などもされてて、朴訥とした感じで、流暢とまでは言いませんが、それなりに場慣れした感じで客を温めて、自虐っぽいジョークを交えて見やすい雰囲気を作ってくれてましたが、さて演奏は如何でしょう?

これって、アンビエントなの?w
キーボードなどを演奏し、録音した音を重ねてより厚い音楽を作っていくと言う、テクノ系のライブでたまに見かける手法。
演奏したのは3曲ですかね、いずれにも秋山さんの歌声も入れて、それこそ環境音楽と言うよりは、秋山勝彦ライブ、と言う趣の演奏でした。
秋山さん自身が「自分が一番アンビエントではない」と仰ってたので計算通りなんでしょうかね、僕も聞きながら「アンビエントとは???」と思いました。
しかしまぁ、考えてみるとアンビエントなんて退屈だろう、と思っていた僕が、秋山さんの歌で「環境音楽者無いんじゃ??」なんて思ってしまうのが今回のイベントの素晴らしさを物語っているのかもしれません。
当初「歌が聞きたい」とか書いたと思いますけど、実際念願の!歌を聞かせて貰ったし、それはとても楽しかったんですが、一瞬「なんか違わない?w」と思ってしまった時点で、アンビエントの良さ、その深い世界に取り込まれていたのだなぁと、終演後に思ったものでした。
僕がルールに縛られ過ぎると言う悪癖を持っているせいで「アンビエントの夕べなのにちゃんと歌を歌って!」と引っ掛かってしまいましたけど、秋山さんの演奏は全て素晴らしかったし、好きですよ。僕が定義を理解してないだけで、これもアンビエントだったのかもしれませんしね。


4組終了後は、4人でセッションを行って終了(セッションはあんまり印象に残りませんでしたw)。

久々にヒコさんを拝見できて、その能力の高さを再認識させて頂き、嬉しかった。
暫くお会いできてなかった伊藤さんの演奏に触れられて、やはり技量が高く素晴らしい音楽を奏でる方だと感動した。
その二つだけでも観に行った価値は十分だったんですが。

高橋さんと秋山さんの演奏、ちょっと食わず嫌いしていたのが勿体なかった!と思うくらい良かったですね。
普段彼らの活躍に触れていない僕としては、日常の中で彼らの名前を認識する時は大体平沢進が絡んでました。
古くはブログで、今だとXあたりで、秋山さんが平沢さんに文句を言っていたとか、途中書きましたけど(冤罪だったらすみません)高橋さんが平沢さんに不快感を示していたとか。
それをして、「秋山は平沢の事ばかり言って、嫌なら触れなきゃいいのに、結局平沢の名前を利用して客寄せしたいだけか」なんて思ってたりしたのです。高橋さんに関しても同様でしたでしょうか。
なんと思慮の浅い事だったでしょう。

今回のイベントで、高橋さんの演奏が終わった後だったかな、の秋山さんのMCで、高橋さんの使っていた楽器を見て「こういうのP-MODELでも使ってたね」みたいなことを言ってました。
とても楽しそうに。
そこには「過去のP-MODEL時代に縋ってる」なんて感じは微塵も無く、ただただ自然にその名前を出していて、なんかハッとしましたね。

僕がネット上で秋山さんや高橋さんの名前に触れる際に平沢さんの名前がついて回っていたのは、僕が平沢ファンなのでその名前と一緒になるときだけ目に触れてしまうだけ、別に普段秋山さんも高橋さんも、平沢とかP-MODELとかなどおくびにも出さず普通に自然に、愚直に真面目に音楽活動をされている、それが彼らのフォロワーでは無い僕の目にはなかなか入ってこなかっただけなんですね。
僕は一部の両氏のコメントにのみ意識が行っていて「アンチ平沢」の烙印を押していましたけど、よくよく考えると二人とも「平沢とか別に」なんでしょう。
そもそもお二人が音楽をやってこられた中で、消すことの出来ない歴史の一ページに存在する「平沢進」「P-MODEL」が、彼らがただ普通に活動していく中で「触れたくも無いアンタッチャブルな存在」で有るわけが無く、場面によっては僕らよりもよっぽど自然に名前が出るのは当たり前なわけです。
何よりも僕とは違って平沢信者でもなんでもない両氏からしてみれば、愉快じゃない平沢の何かに遭遇したら「異を唱える」のはむしろ普段彼に寄り掛ってないからこその事象なんでしょう。

それをして「秋山も高橋も、何かあると平沢の名前を出して客寄せしようとしてる」とか無意識に思ってしまっていた僕自身の心が汚れていただけでした。
そう言えば、大分昔の事ですが、秋山さんが自身のバンドのレコーディングに平沢さんが参加してくれた時に、自分が中心となって挑む初めてのレコーディングでの立ち居振る舞いに関して、平沢さんがその有り様を示してくれたことに関して感心していた記事も読んだことが有った筈でした。
なのにそれをすっ飛ばして「平沢に文句言う人」扱いしていました。
冒頭に書いた、痛い特撮ファンと同じで、僕は痛い平沢ファンだった、と言う事でした。情けない限りです。唾棄すべき不快な特撮ファンと同じことをしていたとは。自分の器の小ささが恥ずかしいな。

今回の、高橋さんの演奏も、秋山さんの演奏も、独自性が有って音楽愛が有って、楽しそうで本当に素晴らしいと思いました。
彼らは彼らなりの音楽活動を追求していて、観れて良かったと思いました。
この記事書くにあたって、秋山さんとか高橋さんの名前でネットで検索すると、とても自然にP-MODELの楽曲をカバーして演奏してるお二人の動画を見ることが出来て、それこそ僕が大好きな、応援すべきP-MODELの人たちで有ることが認識できました。食わず嫌いも、変なレッテル貼りも、恥ずべき事ですし、勿体ない事でした。

最近はあんまりライブに行かなくなってますが、機会が有れば、レンダや伊藤さんは勿論、高橋さんも、秋山さんも、ライブ観に行きたいな。

秋山さんの演奏、一番最後は彼がP-MODEL時代に制作した『CLEAR』でした。
普通に、純粋に、平沢を経由してではあってもP-MODELのファンとして、演奏してくれてテンション上がりました。
これからは、1個人秋山勝彦も、元P-MODELのメンバー秋山勝彦も、変な色眼鏡を持たずに観に行けたら良いかな、と思った、アンビエンスの夕べでした。


うーん、冒頭の特撮云々、全然要らなかったなw

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